恐れ、すなわち感謝【お盆】|連載「京都の現代歳時記考 -木屋町の花屋のささやかな異議申し立て-」
焼けるように熱いアスファルトの上に、進んでいるのか止まっているのかわからない自動車の列。スタジオのアナウンサーが伝えてくれる上りと下りの渋滞情報、熱中症対策強化の旨。冷房を効かせた車内から排出されているらしい生暖かい空気が、蜃気楼を歪ませる。これぞ日本の、お盆。
その目的は、実家に帰って普段一緒に暮らしていない家族や親戚と夏の休暇を過ごすためであるが、ではなぜ親族と時を過ごすのかというと、ちょっと忘れられがちなのだけれど、この時期に、死んだ人の霊がこの世に帰って来るからである。休暇だから家族と過ごすのではなく、家族全員でご先祖様の霊と過ごすために、休日になっているのである。
祈り、そして遊び【祇園祭】|連載「京都の現代歳時記考 -木屋町の花屋のささやかな異議申し立て-」
7月の京都。グーグルイメージでしか京都を知らない外国の方は、石畳の上で風に揺られる青もみじが、ひんやり涼し気で快適な古都とお思いだろう。実際の京都の気温は、そのイメージから感じる温度プラス15度、湿度はプラス50%といったところか。「こんなところでよく暮らしてるな」というのが夏の(実は冬もだけど)京都を訪れた人の正直な感想であり、同時に暮らしている人間の驚きでもある。高すぎる温度と湿度で食べ物はすぐに腐るし、いけた花は瞬く間に枯れる。熱帯並みの気候の中、冷蔵庫も冷房もなかった時代の人のことを思うと胸が痛む。日本で最も有名な祭りの一つ・祇園祭は、そのような場所で生まれた。