第12回「コロナ禍から回復が遅れるサンフランシスコ(3)――新たなハイテク産業の集積と再生」連載『変わりゆくアメリカからさぐる都市のかたち』
20世紀の代表的な都市学者であるL.マンフォード は、都市の輪廻転生を信じていたと思います。その著書『都市の文化』は、成長、発展した都市がやがて衰退し、荒廃し、ついには「ネクロポリス(死の都)」に至る、という史記ですが、しかし、荒廃した土地には、きっと新しい、小さな命が芽生えている、と書いています。マンフォードの都市思想の基礎には、都市は有機体である、という考えがあります。
サンフランシスコ(SF)は、コロナ禍からの回復でアメリカ都市の最後尾を彷徨っています。特に治安の悪化したダウンタウンの疲弊が深刻です。2月にも老舗百貨店だったメイシーズが閉店を発表しました。「SFは終わった(San Francisco is over!)」という悲観論があることについては、連載の前々回、前回で紹介しました。しかし、ここでは、都市は有機体説を踏まえて「明日のSF」を考えます。「いやぁ、SFは復活する。COVID-19以前に比べ、よりパワフルな先端都市に甦る」という楽観論です。
第11回「コロナ禍から回復が遅れるサンフランシスコ(2)――落ちぶれた都市イメージの再生策」連載『変わりゆくアメリカからさぐる都市のかたち』
COVID-19の打撃から回復が遅れるサンフランシスコ(SF)ですが、そのSFをめぐる悲観論には、治安の悪化も影響しています。経済活動が停滞し、街に人影が少なくなっています。
在野の都市研究家で秀でたジャーナリストでもあったJ.ジェイコブズは、都市学のベストセラー『アメリカ大都市の生と死』を書き、街の優れた観察者でした。彼女は、街が元気であるためには、人々の活動が街に高密度に詰め込まれていることが大切である、と考え、そのために必要な街づくりの条件を明らかにしました。同書では、昼夜、街路を通行人が行き交うか、あるいは近隣の知り合いが立ち話をしている街(人の眼がある)は安全である、と書いていました。しかし、COVID-19以来、SFのダウンタウンでは、それと真逆のことが起きています。
第9回「NYが米国初の混雑税導入(3)――車をめぐるNIMBYイズム」連載『変わりゆくアメリカからさぐる都市のかたち』
これまでにニューヨーク市(NY)が導入を計画している混雑税の仕組み、及びそれに対してニュージャージー(NJ)州政府とNYの1区になっているスタテン島が反対の訴訟を起こした話を紹介しました。
NJの訴えは、
NYが混雑税を導入すると州内からNYに向かう車のルートに変化が起き、思わぬところに渋滞が発生する心配があるが、それを含めて十分な環境アセスメント調査がなされていない
ハドソン川を渡る通行料を払っているのに(トンネル、大橋)、混雑税は州民にさらなる負担をかけることになる
の2点です。