「スカイウェイ」の拡張解釈 – 真壁智治「臨場」から窺う渋谷問題への気付き(第24回)|連載『「みんなの渋谷問題」会議』
渋谷再開発は百年に一度とされる民間主導の巨大都市開発事業で、今後の都市開発への影響は計り知れない。この巨大開発の問題点を広く議論する場として〈みんなの「渋谷問題」会議〉を設置。コア委員に真壁智治・太田佳代子・北山恒の三名が各様に渋谷問題を議論する為の基調論考を提示する。そこからみんなの「渋谷問題」へ。
真壁智治(まかべ・ともはる)
1943年生れ。プロジェクトプランナー。建築・都市を社会に伝える使命のプロジェクトを展開。主な編著書『建築・都市レビュー叢書』(NTT出版)、『応答漂うモダニズム』(左右社)、『臨場渋谷再開発工事現場』(平凡社)など多数。
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「スカイウェイ」の拡張解釈
渋谷駅周辺の地勢の特性から起因するのか、とにかく渋谷再開発では実に多くの「スカイウェイ」が公共貢献として「快適な移動」の大義の基に建設されようとしている。
背景には当該地区には多くの開発事業者が官と民に渡って参画し、その上、都市再生開発特区としての超法規の連携が可能になっていたことがある。
渋谷の街への移動のまさに起点であるスリバチ状地勢の中心に位置する渋谷再開発はターミナルとなる駅を含んでの一大拠点開発となるものです。
従って、街への活発で自在な移動はなによりも渋谷再開発に「公共性」と「公平性」が担保されなければならないことを意味するはずです。
その内で最も街全体のアクセシビリティに及ぼす危ういものが「公平性」なのではないか。
開発主体以外の立場から渋谷再開発を見れば、街の活性化を誘引するかもしれない、と言う他力本願な期待と、余りにも強引で不公平過ぎるとの諦念とが入り混じる。
特に、「スカイウェイ」の全体計画が一般的に示されていないので余計不安に陥り易い。
どこまでが「スカイウェイ」の概念の対象なのかも判然とし難い。
ここで示す「公平性」とは街への活発な移動を遍く波及させ、人びとの移動を囲い込んだり、ダム化させたりと街への移動を偏向させることなく、広く公平に移動が街に開かれることを示している。本来的に「公平性」は「公共性」の内に備わるべき資質だ。それが渋谷再開発では公共性と公平性とが少し乖離してはいないか。公共性(公共貢献)を旗印に不公平感を生んではいないか。これもラジカルに問うていかなくてはならない「渋谷問題」である。
「公平性」を欠けば「公共性」の評価も低下する。既にそうした「スカイウェイ」も散見されだしているのです。
以上のことから「スカイウェイ」を巡り「渋谷問題」として議論されるべき余地が大いに在りそうだ。
「スカイウェイ」の存在には人びとの移動や往来に習慣性を与え、街との関わりに一定の限定も与えかねない誘導力が潜在していることを自覚したい。
そうした公共性と公平性についても渋谷再開発工事現場の臨場から嗅ぎ取ってゆくことになるのです。
「スカイウェイ」の暴走設置には私たちも神経をとがらせる必要がある。 特に再開発施設間とJR渋谷駅間とを掛け渡す「スカイウェイ」の設置計画とその存在については最大の神経を配りたい。それらが既存街区とどの様なアクセシビリティや連携を生んでゆくのかは入念に観察しなくてはならない。「スカイウェイ」がその先の街とどの様に開いてゆくのかを「渋谷問題」として把握しなくてはならない。
(つづく)