センス、ではなくスタンス【重陽の節句】|連載「京都の現代歳時記考 -木屋町の花屋のささやかな異議申し立て-」
花店に来てくださった方が、一様に口にされる言葉がある。「センスないんで」。お家用のお花を買いに来てくださった方も、ギフト用のお花を見に来てくださった方も、皆口を揃えてそう言われる。「センスがないのでどの花にすれば良いかわかりません、自分では選べません」と。花を選ぶのに必要なことは、生まれ持ったセンスではない。私は色々な場所で、人に、そう言い続けている。これは気休めでもきれいごとでもなく、私の信条である。むしろセンスなどという、どうやって手に入れるのかわからない個人の感覚でしか測れないもので花を選ばなければならないという間違った考えが、花を難しく面白味のないものにしている、とさえ思う。では、何を拠り所に花を選べば、「花を楽しめる」のか。