コロナで都市は変わるか

矢作 弘、阿部 大輔、服部 圭郎、ジアンカルロ・コッテーラ、マグダ・ボルゾーニ 著

内容紹介

コロナ後の都市計画・政策の論点を提示する

新型コロナと闘い、次の飛沫・空気感染症の爆発に備えるには、高密度巨大都市、人と人の交流空間、公共交通を捨て、車と郊外生活、在宅勤務を進めることが必要なのか。ロックダウンから半年を経た今、欧米で盛んになされた議論、先取りされた施策を振り返り、アフターコロナの時代の都市づくりのための論点を提示する。

体 裁 四六・272頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-1372-6
発行日 2020/12/10
装 丁 美馬智


目次著者紹介はじめに関連イベントレクチャー動画

1章 アフターコロナの都市の「かたち」論争

2章 「高密度」はパンデミックの温床か――コロナ禍をめぐる密度論争

3章 「地下鉄叩き」を止めよう!――公共交通主犯説を批判する

4章 コロナ禍とテレワーキングの普及・拡大――追い風になるが微風で終わる

5章 シェフは帰ってくる――小売・飲食店の再浮上先

6章 15分コミュニティ論――アフターコロナの都市戦略

7章 ツーリズムの終焉?――ポストコロナの観光の「かたち」

8章 都市デザインは変わるか?――まちなかの密度回復と3密回避、矛盾解決の挑戦

9章 パンデミックの衝撃、そしていかに戦ったか――ヨーロッパからの報告

10章 感染症と都市計画・都市政策との関係――レジリエントな都市の「かたち」はあるか

矢作 弘 Hiroshi Yahagi

龍谷大学研究フェロー・都市学。1、2、3、4、5、6章を執筆。

阿部 大輔 Daisuke Abe

龍谷大学教授・都市計画。、7、8章を執筆。

服部 圭郎 Keiro Hattori

龍谷大学教授・都市学。10章を執筆。

ジアンカルロ・コッテーラ Giancarlo Cotella

トリノ工科大学准教授・空間計画。9章を執筆。

マグダ・ボルゾーニ Magda Bolzoni

トリノ大学博士研究員・都市社会学。9章を執筆。

緊急出版することにした。
中国・武漢で新型コロナ感染症が発生して10ヶ月余。この間、海外で感染が爆発し、多くの都市がロックダウンに入るなど過酷な経験をしたことを反映し、アメリカやヨーロッパでは、興味深い研究論文や調査報告が矢継ぎ早に発表された。それは疫学や公衆衛生学分野に限らず、「都市の「かたち」」をめぐっても多様な論点の提起があった(ここで「かたち」は、建築的、可視的な意味に止まらず、人々の働き方/暮らし方を含む都市の総体を指している)。そうした研究、調査動向を、早く、かつ迅速に読み解き、紹介することは、コロナ禍をめぐる都市研究、あるいは都市政策の立案に貢献できるのではないか、と考えた。

<執筆の視点>

「コロナ禍」を中心に置き、そこを起点に都市をめぐるキーワード(高密度と過密、公共交通と車依存、コンパクトシティとスプロール型郊外、分散と集積/集中=クラスター、規制と自由裁量など)を並べ、その間の関係を考える、という思考で章立てを考えた。その結果、都市計画、都市社会学、都市経済学、都市地理学、さらに文化人類学やコミュニティ論の――広範囲のジャンルの研究者に貴重な情報を提供する編集になったと思う。日々、現場で感染防止のために奮戦している行政マンにも役に立つニュースを書き加えてある。

<調査の方法>

現地調査は叶わなかった。執筆に際しては、海外の研究ジャーナル、シンクタンクが発表する調査報告、メディア(新聞、雑誌、電子ジャーナル)、それに海外在住の知人から伝わって来る身辺情報などを収集し、そこからパンデミックで変容する「都市の「かたち」」を把握することに努めた。そして危機に対して政府が、市民がどのように対峙しているのか、研究者はそうした状況をどのように理解しようとしているのか、それを記述することにした。また、現地調査を出来なかったことを補完するために、イタリアの研究者2人に、「ヨーロッパからの報告」をお願いした。

幾つかの知見を得ることが出来た。日本で感染死亡者が相対的に少ないのは(政策が混乱した日本は、アジアの国・地域の間では成績は悪い)、「民度の高さが反映している」と発言した閣僚がいたが、感染が拡散するスピードや感染死亡率は、
① 政府がいかに早く、迅速に対応したかが決定的な違いにつながっていたこと、
また、②「密度」ではなく、「接触(抱擁や握手、マスクをする習慣など)」が重要なファクターになっていたことなどが明らかになった。
「密度」と「接触」の関係では、「平方キロメートル(都市規模)」ではなく、「平方メートル(住宅の広さ/狭さ)」と居住密度が感染率を左右すること――すなわち、経済的、社会的な格差が感染率/感染死亡率の違いになっていることなどを確認することが出来た。

人間は、辛い記憶を忘れる習性がある。社会もパンデミックが過ぎるとその時の困難を忘却してしまう癖がある。それでも建築的、可視的な「都市の「かたち」」をめぐっては、その都度、危機から学び、それを都市計画の資産として継承してきたものがある。今度のコロナ禍では、世界の都市で車線をつぶして歩道やコミュニティ活動の場に用途転換するなどの動きがあった。こうした危機からの学びが、さらに広がることを期待したい。

2020年10月 叡山を眺める賀茂川の堤で  矢作弘

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