イギリス政府が自転車利用と歩行を促進する新戦略 “Gear Change” を発表 自治体に向けた新設機関経由での助成や権限委譲などを明記
- イギリス政府が7月27日、自転車の利用や歩行によるアクティブな移動を促進する新たな計画 “Gear Change” を公表した。2030年までに市街地における移動の半分以上が自転車や徒歩でなされるようになることを目標として謳い、主に以下の4つのテーマに分けて具体的な計画をまとめている。
- 自転車や人々にとってより安全な道路とは
- 自転車利用と歩行を交通・プレイスメイキング・健康政策の核に
- 地域の自治体に権限と助成を
- 自転車利用をより可能に、より安心に
- このうちテーマ3の取り組みの一環として、自治体に対して今後5年間で累計20億ポンドの助成を行うと明記。助成にあたっては、新たに設立する政府機関 “Active Travel England” が予算を持つ形となり、自治体により立案された計画の認可や検証・評価、さらに知見の蓄積や提供までを担うという。
- また、移動中の交通違反(一方通行無視や自転車道への進入)に対する執行に関して警察に代わる権限を自治体当局に認めるなどとしている。この施策はロンドンの施行地域ですでに効果が出ており、警察の業務量を低減し優先度の高い取り締まりへの注力を可能にしたことで、交通の流れが向上したり、施行していない地域と比較して死傷者数が顕著に減少していたりするという。
- なお公開された計画書では、イギリス国内における死因の6分の1に関連しているとされる運動不足(physical inactivity)がもたらす社会的コストや、自転車利用や歩行を増やす施策により予測される効用について、様々な角度から数値化している(以下、一部抜粋)。
- 医療:運動不足に対してNHS(国営医療サービス)が負っているコストは年間で最大10億ポンド、間接的な負担もあわせれば82億ポンドに上る
- 健康:1日当たり20分の運動で、鬱病の発症リスクを31%低減させられるほか、仕事の生産性も向上する
- 混雑:ロンドンに新設された自転車道は、道路幅では全体の30%しか占めないのに対し、通行人数は全体の46%を占める
- 事業:十分に計画された歩行環境の改善は、客足を最大で40%伸ばす
- 自然環境・大気環境:自転車利用を倍増させ、歩行を拡大するという計画が達成できれば、大気汚染対策だけでも年間で5億6700万ポンドの節約になるほか、平均寿命未満での死亡を年間で8300件減らせる