貧困地域に暮らす子どもの居住環境をどう改善するか アフリカ・中東でのリサーチをもとに制作した都市デザインガイドをArupらがオンラインで公開
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- 世界的なエンジニアリング・コンサルティング企業Arup社と、オランダに拠点を置く財団Bernard Van Leer Foundationがこのほど、貧困状況にある子どもの居住環境改善のための都市デザインガイド “Proximity of Care Design Guide“ を開発し、オンラインで公開している。
- このガイドは、ケニアやレバノン、ヨルダン、南アフリカなどで難民が暮らすいわゆるインフォーマル居住地でのリサーチやフィールドワークをもとに制作されたもの。都市がどのようにして建造環境(Built Environment)に修正を加え、5歳未満の幼児の健康や教育、安全を向上することができるか、という問いに対して、解決に向けた道具立てや取り組み事例をまとめた新しいオンラインガイドになっている。
- ウェブサイトによれば、このデザインガイドの核にある “ケアの近接度” アプローチ(Proximity of Care approach)とは、脆弱な都市の文脈において、さまざまな都市システムが幼少期の発達のニーズとどのように関連しているかを明らかにしようとする手法。
幼児や保護者・妊婦を取り巻くニーズを「健康(health)」「刺激(Stimulation)」「保護(Protection)」「支援(Support)」の4つの角度からそれぞれ4観点、計16の観点に分け、「家庭(Household)」「近隣(Neighborhood)」「都市(City)」の3つのレベルで環境改善の取り組みを可視化するフレームワークが用いられているという。
- オンラインガイド内では、具体的な実践手法を検討するために役立つデザインツールもいくつか紹介されている。
たとえば「YARD」はArup社が開発したアプリケーションで、パブリックスペースの使いこなしについて、拡張現実(AR)を利用してシミュレーションできるという。
- Arup社のディレクター、サラ・カンディラッチ氏は「このガイドは新型コロナの蔓延以前につくられたものですが、都市の恵まれない地域に暮らす子どもたちが直面する莫大な開発格差が、コロナ禍によって暴かれているところです。単純でも意味のある都市環境への介入により、ロンドンやニューヨークの貧困地域であれ、ケープタウンのインフォーマルな居住地であれ、同じように状況が一変する可能性はあります。子どもの成長をより良い方向に向けるための介入は、長期的な変革を都市にもたらすかもしれず、われわれはまさに今そうすることによって、すでに貧困状態にあるコミュニティに対して、後にも尾を引くような打撃をコロナ禍が与えないようにしなければならないのです」とコメントしている。
詳細
Proximity of Care DESIGN GUIDE
https://www.proximityofcare.com/