自転車大国・オランダのインフラ政策3例を詳解するブックレット 公共事業・水管理総局がオンラインで公開
自転車利用者の割合が世界随一の高さを誇るオランダの公共事業・水管理総局(Rijkswaterstaat)が、同国が自転車利用促進のために実施してきた主なインフラ政策例をまとめたブックレットを発行し、公式ウェブサイト上で公開している。
ウェブサイトによれば、このブックレット “Cycling and Dutch national infrastructure” はオランダでなされてきたインフラのプランニングやデザインのプロセスについて、政府機関・公共部門・民間組織がうまく協働するための手法や戦略などにも触れながら紹介するもの。
単に自転車インフラ事業についてのみならず、重要な交通手段としての自転車の可能性に着目することにより交通システムを統合的・包括的に改善してゆくための方法について、知見が得られるようになっている、としている。
ブックレットは、①オランダにおける自転車利用の役割と意義についての全体像、②政策事例の概観、③政策事例の個別紹介、の3部で構成されている。
①では、さまざまなデータがインフォグラフィックも交えて紹介されている。
例えば、オランダにおける交通移動の26%を自転車が占めているほか、仮に7.5km未満の短距離移動がすべて車から自転車に転換した場合、年間のCO2排出量が1.8メガトン、NOx(窒素酸化物)排出量が1,800トン削減できるという。
また、さまざまな自転車利用の種類とニーズについて紹介する図表も掲載されている。
たとえば“通勤での自転車利用(Bicycle commuters)”については、「公共交通機関や自家用車」と併用されているケースが多く、「走行速度や乗り方は多岐にわたる」とし、利用者のニーズとして、「公共交通機関の近隣や職場に安全な駐輪施設があること」「自転車通勤に対する手当に関する情報にアクセスできること」「通勤路に質の高い走路があること」などを挙げている。
②③では、“Refurbishment”、“The New N200”、“Koning Willem-Alexander Tunnel (A2/N2)”の3つの政策事例が詳細に紹介されている。
このうち “Refurbishment” は、北ホラント州の州都ハールレムの北を流れる運河を渡るトンネル「フェルセルトンネル(Velsertunnel)」が改修工事のために長期間閉鎖したことに伴い、交通手段の分散を図ろうとしたプロジェクト。
周辺の交通混雑を避けるために、同トンネルを通行していた一日65,000台の自動車を単に迂回させるだけではなく、特に通勤ラッシュの時間帯における3,000台の自動車利用を削減することが目指された。
そのために、運河を渡るフェリーの利便性を向上したり、周辺地域の自転車走路を改良したりすることにより、結果として自転車利用者が約1,000名増加したという。