ヨーロッパで広がる、路上に野草の名前を記す運動 一方でイギリスでは違法との懸念

Image: Elizabeth Archer

  • 都市に咲く野草の花や植物に注目すべく、それらの名前や特徴を舗装にチョークで書く、という運動がヨーロッパに広まっている。しかし一方で、イギリスではその行為が違法になる可能性があり、注意が促されている。
    この運動は、ヨーロッパの都市の道路や壁面の亀裂に生える様々な植物の、名前や重要性を強調するため、「反逆の植物学者」たちが取り組み始めた。
  • 行く先々の野草に名前を記すというアイデアはフランスで始まり、チョークを持つ人々の投稿がシェアされ、広められた。
    12万7,000以上の人がロンドン郊外を写したこの投稿にいいねを押し、トゥールーズ自然史博物館の植物学者Boris Presseq氏がフランスの都市に咲く野草にチョークで名前を記していく動画は、700万回閲覧されている。
    Presseq氏は、「道端の野草への気づき、知識、敬いをもっと持ってほしい。これまでこのように野草を観察したことがなかった人にとっては、見る目が変わったでしょう」と話す。
  • フランスでは、2017年に公園・路上・その他の公共空間で農薬の使用が禁止され、2019年からは家庭の庭でも禁止された。そうしてフランス国内では、都市部の野生の花への関心が高まっている。
  • ロンドン在住、植物学者かつ活動家のフランス人、Sophie Leguil氏は、足元に咲く忘却された花々を目立たせようと、ハックネー地域の道路を記録しチョークで跡をつける許可を得た。さらに彼女は、他の評議会にも同様の許可を求めている。
    彼女は、「フランスでの農薬禁止は、地方の権力者などの意識を変え、さらに高めるという、大きな役割を果たしました。(中略)ロンドンが取り組んできた消毒方法には失望しています。植物は、コスト削減・生物多様性・教育などのために、それぞれ異なる方法で管理されるべきです。」と話す。
  • イギリスでは、道路で許可なく、チョークを用いて石けり遊びをしたり、アートや植物の名前を記すことは違法とされている。たとえそれが自然に関する興味や知識を教育・祝福・育成する場面でもだ。
    一方で、植物の名前をチョークで記すことは、頭上の木・葉・樹皮・昆虫・空などの自然に気づきを与えてくれる。それらはすべて、精神的な健康にも良い。
  • イギリスの慈善団体Plantlife代表であるTrevor Dines氏は、法律違反を大目に見ることはできなかったと話す一方で、「植物の名前を記す運動への反響は信じられないほどあり、これはなにか重要なことだと思います。まるで、我々の世界で、植物が自分の場所を宣言しているかのようです。」
  • 最近のYouGov世論調査では、16歳から24歳のたった6%の人しか、野生のスミレの写真に正しく名前を言い当てられなかった。同じ世論調査では、回答者の70%近くがより多くの野生の花を特定できるようになることを望んでいると示されている。
  • Dines氏によると、種まきや草刈りで、壁面や道路に生える400種類の植物が見つけられるかもしれず、これは、野生の植物の10%にも相当する。
    彼いわく、シェフィールドでの路上調査では、183種の植物が確認され、ケンブリッジでは、壁面に186種もの植物が植生していた。
  • ある花粉の研究では、花が互いに提供する蜜や花粉の量は、しばしば園芸植物よりも都市の野草のほうが多いことを明らかにされている。
    調査した植物のなかでは、タンポポ、ブタナ、野芥子、サワギク、シベナガムラサキ、ゼニアオイ、プルネルラ・グランディフローラ、無香のカモミール、ニゲラ、野生のモクセイソウ、ヤナギラン、アザミ、キンポウゲ、ケシ、などがある。
  • 保全トラストBuglifeのAndrew Whitehouse氏は、「路上や壁面の植物は、マルハナバチのような昆虫にとって、花が少ない冬季の食物資源として重要です。コンクリートの下では、ワラジムシ、ミミズ、ザトウムシ、クモ、ナメクジ、カタツムリを支える小さな微生環境を根がつくり、それがゆくゆくは鳥やハリネズミの餌になります」と語る。
  • ハックニー評議会のCllr Jon Burke氏は、社会的関心に従って、野生の花を増やし昆虫の生物多様性を高めるために、一部の地域で無農薬にし、全体での使用量を半減させた。
    彼は、「このような、植物の名称をチョークで記す活動が犯罪であることは、不合理です。大人にも子供にも、重要かつ刺激的な教育ツールとして歓迎すべきでしょう。(中略)自然界に関する語彙や知識は、我々がそこに関心を持ち、愛し、保護するという願いのために、役に立ちます」と話す。
  • 刑事法の専門家である、Drystone ChambersのJames Grayは、イギリスで許可なく路上にチョークで植物の名前を記すことは違法であり、植物学者が、絵や手紙、サイン、または路上や高速道路、木やその他の構造物に書かれたマークに書いたり刻んだりすることに対して、最高2,500ポンド罰金を課される、と念を押している。
    Victor Hugoの作品(レ・ミゼラブル)に登場する架空の有名な警察官に言及しながら、Grayは言い加えた。「この世界のジャベールは、いたずらな植物学者の落書きを不都合なものとし、検察を呼ぶでしょう。他の人々にとっては全く害がなく、はたまた路上の気分転換だったとしても、です」

‘Not just weeds’: how rebel botanists are using graffiti to name forgotten flora

https://www.theguardian.com/environment/2020/may/01/not-just-weeds-how-rebel-botanists-are-using-graffiti-to-name-forgotten-flora-aoe

2020/05/01/The guardian