中田勝康 著/写真

内容紹介

二十世紀の大作庭家、重森三玲の庭は、どのように生まれたのか。二部構成の本書では、第一部で非公開の個人庭園を含む113庭を撮り下ろし写真にて俯瞰。半世紀以上に及ぶ作風の進化と深化をたどる。第二部では「テーマ→抽象→造形」という作庭のプロセスを、古典庭園との比較から詳解。重森枯山水のルーツと創造の奥義に迫る。

体 裁 A5・288頁・定価 本体4000円+税
ISBN 978-4-7615-4089-0
発行日 2009/09/20
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介はじめにおわりに書評

はじめに

重森庭園分布図
重森庭園インデックス
記載方針と記述内容について

第一部 重森庭園の軌跡

001 重森生家〔天籟庵〕
002 西谷家〔旭楽庭〕
003 春日大社Ⅰ〔三方正面七五三磐境の庭〕
004 四方家〔海印山荘〕
005 正伝寺
006 春日大社Ⅱ〔稲妻形遣水の庭〕
007 東福寺本坊〔八相の庭〕
008 光明院Ⅰ〔波心庭〕
009 芬陀院Ⅰ
010 芬陀院Ⅱ
011 普門院
012 西山家〔青龍庭〕
013 斧原家〔曲水庭〕
014 井上家〔巨石壺庭〕
015 村上家〔曲泉山荘〕
016 小倉家〔曲嶌庭〕
017 西禅院Ⅰ
018 安田家〔白水庵〕
019 西南院
020 桜池院
021 正智院
022 石清水八幡宮Ⅰ
023 光臺院Ⅰ
024 西禅院Ⅱ
025 本覚院
026 岸和田城〔八陣の庭〕
027 少林寺
028 笹井家
029 河田家
030 前垣家〔寿延庭〕
031 瑞応院〔楽紫の庭〕
032 龍蔵寺
033 増井家〔雲門庵〕
034 岡本家〔仙海庭〕
035 越智家〔旭水庭〕
036 越智家〔牡丹庵〕
037 織田家〔島仙庭〕
038 旧片山家(渡辺家)〔和春居の庭〕
039 光明禅寺〔一滴海の庭・仏光の庭〕
040 医光寺
041 田茂井家Ⅰ
042 桑田家〔宗玄庵〕
043 小河家Ⅰ〔廓然庵〕
044 栄光寺〔龍門庵〕
045 臼杵家〔露結庵〕
046 都竹家
047 香里団地公園〔以楽苑〕
048 瑞峯院〔独座庭・閑眠庭〕
049 真如院
050 林昌寺〔法林の庭〕
051 山口家
052 志度寺〔曲水庭・無染庭〕
053 桑村家
054 光明院Ⅱ〔雲嶺庭〕
055 衣斐家
056 四天王寺学園
057 興禅寺〔看雲庭〕
058 光臺院Ⅱ
059 小河家Ⅱ〔古今亭〕
060 有吉家〔吉泉庭・有心庭〕
061 小林家〔林泉庵〕
062 龍吟庵〔西庭・東庭〕
063 清原家
064 安国寺
065 北野美術館
066 貴船神社〔天津磐境の庭〕
067 岡本家
068 西川家〔犀庵〕
069 石清水八幡宮Ⅱ〔鳩峯寮庭園〕
070 住吉神社〔住之江の庭〕
071 浅野家
072 光清寺〔心字庭〕
073 宗隣寺
074 常栄寺〔南溟庭〕
075 旧友琳会館〔友琳の庭〕
076 中田家
077 漢陽寺Ⅰ〔曲水の庭〕
078 漢陽寺Ⅱ〔蓬莱の庭〕
079 漢陽寺Ⅲ〔地蔵遊戯の庭〕
080 漢陽寺Ⅳ〔九山八海の庭〕
081 旧畑家(篠山観光ホテル)〔逢春庭〕
082 天籟庵
083 久保家
084 霊雲院Ⅰ〔九山八海の庭〕
085 正覚寺〔竜珠の庭〕
086 田茂井家Ⅱ〔蓬仙壽〕
087 深森家
088 竹中家
089 屋島寺〔鑑雲亭・坐忘庵〕
090 正眼寺〔観音像前庭〕
091 霊雲院Ⅱ〔臥雲の庭〕
092 旧重森家(重森三玲庭園美術館)〔無字庵庭園〕
093 芦田家
094 半べえ〔聚花園〕
095 小林家
096 信田家〔泉岩庭〕
097 石像寺〔四神相応の庭〕
098 善能寺〔仙遊苑〕
099 豊國神社〔秀石庭〕
100 志方家
101 岸本家
102 泉涌寺妙応殿〔仙山庭〕
103 漢陽寺Ⅴ〔瀟湘八景庭〕
104 漢陽寺Ⅵ〔曹源一滴の庭〕
105 福智院Ⅰ〔蓬莱遊仙庭〕
106 福智院Ⅱ〔登仙庭〕
107 東口家
108 千葉家〔千波庭〕
109 八木家
110 福智院Ⅲ〔愛染庭〕
111 松尾大社Ⅰ〔上古の庭〕
112 松尾大社Ⅱ〔曲水の庭〕
113 松尾大社Ⅲ〔蓬莱の庭〕
一休庭談 敷石を鮮やかに甦らせる

第二部 古典庭園と重森枯山水

第一章 古典から学ぶ

1 ―― 古典庭園の立体造形の手法
1・1 ―― 池泉庭園
1・2 ―― 枯山水庭園
2 ―― 古典庭園の技法に学ぶ
2・1 ―― テーマ
2・2 ―― 形
2・3 ―― 色彩
2・4 ―― 石組様式
2・5 ―― 素材

第二章 重森の枯山水はなぜ刺激的か

1 ―― テーマの必要性
2 ―― 抽象の難しさ
2・1 ―― 自然とは異なる人間の自然を抽象すべき
2・2 ―― 抽象による創作庭園について
2・3 ―― 枯山水の原点―土塀に囲まれた平庭の空間に小宇宙を作る
2・4 ―― 枯山水庭園の抽象度
3 ―― 立体造形と平面造形
3・1 ―― 立体造形の手法
3・2 ―― 平面造形の手法
一休庭談 杉苔の美を保つ

第三章 重森をより深く理解する

1 ―― 石組の奥義・秘伝
1・1 ―― 作庭記に基づく
1・2 ―― インスピレーション
1・3 ―― 有機的な石の繋がり
2 ―― 三要素を重森庭園にみる
2・1 ―― すぐれたテーマ
2・2 ―― 地理的条件を活かす
2・3 ―― 動きを表現する
2・4 ―― 龍安寺への挑戦
一休庭談 白川砂の輝きを取り戻す

第四章 芸術家・重森三玲

1 ―― 重森の意匠
1・1 ―― 斬新なデザインの庭
1・2 ―― 重森の池泉庭園
1・3 ―― 重森の露地と蹲踞
2 ―― 各種のデザイン
3 ―― 復元・修復の庭

おわりに
謝辞
本書掲載の古典庭園
参考文献

中田勝康(なかた・かつやす)

1941年長野県松本市に生まれる。1965年信州大学工学部卒業。会社勤務の傍ら古代史に興味を持ち、故原田大六先生に師事。その後、故重森三玲先生を知り、その愛弟子の齋藤忠一先生より日本庭園の見方について薫陶を受ける。
現在、各団体の庭園講座講師を務める他、ホームページにて日本庭園記事を執筆(URL:http://muso.to/)。写真掲載に『夢窓国師の庭』「週刊日本庭園をゆく」No28(小学館、平成18年)、『よくわかる日本庭園の見方』(JTBパブリッシング、平成19年)など。

重森三玲(明治29年~昭和50年、1896~1975)は作庭の革命児といえる。夢窓疎石、古岳宗亘、雪舟等楊、上田宗箇、小堀遠州などと比較しても全く遜色ない作庭家である。彼はほとんど全ての古典庭園の実測を行い、文献も調査した。古典庭園についての時代背景と個々の庭園の特徴を、ほぼ完全に把握していたと考えられる。重森は日本庭園について、過去のどの作庭家よりも多くの情報を持っていたのである。

彼は昭和11年からの3年間に全国の約300庭を実測し、同14年『日本庭園史図鑑』にまとめたが、そのうち243庭を同著で扱っている。重森は詳細な平面図、立面図を作成し、写真を撮影し、沿革を調べ上げてこれらを整理した。この地道な、しかも、膨大な時間と労力を費やした仕事が彼を大作庭家に育て上げたのだ。どれほどの才人であっても、いきなり東福寺本坊の庭を作ることは不可能である。しかし、現実に重森は作ってしまった。どうしてそんなことが可能だったのだろうか。

(中略)

5――本書の構成

本書は、「第一部 重森庭園の軌跡」、「第二部 古典庭園と重森枯山水」からなっている。

構成内容については目次に詳しいが、重森庭園については、その分布図と詳細インデックスを目次の次に掲載した。

第一部では、重森が生涯作庭した約200庭の中から、筆者が取材・研究した「現状で掲載可能な」113庭を、初出の個人庭園を含め作庭順に紹介している。昨今、重森の少数の有名庭園が紹介される機会は多くなったが、大多数を占める個人庭園についてはほとんど紹介されていない。個人庭園には、既に解体されてしまったもの、所在不明のものもあるが、取材が可能であった庭については、持ち主の方々に本書で紹介することの意義を認めていただき掲載が可能となった。

第二部では、重森が綿密に実測調査した古典庭園が持つ特徴を紹介し、それを重森がどう捉えたかを考察し、作庭にどのような影響を与えたかを示した。詳しく読んでいただくと、「重森枯山水」が生み出される「奥義」が読み取れると確信している。

昨今の庭園ブームは、癒しを求める社会風潮、自然への回帰志向などが背景にある。重森が再発見されたことは好ましいことであるが、一時的なブームで終わらせてはならない。そのためにも重森の庭園をより広く、深く研究することはもちろんのこと、古典庭園の見直しも行い、さらに建築、造形など他の芸術分野からの庭園へのアプローチも試みられるべきである。今後、日本庭園を世界に通じる芸術とするためには、重森を総括して新たな視点で日本庭園を創造することが大切である。

(後略)

先日帰宅すると、学芸出版社より中田勝康さんの労作が届けられていた。
秋頃出版と聞いていたため、意外な早さに驚きながら早速に拝見。
しゃれた外装カバー、金色の帯と、前垣邸坪庭の超抽象的石組。さすが「永遠のモダン」を生涯追求された三玲先生の作庭を論じる絶好のアプローチと感じさせ、次なる章へと心を躍らせ、頁を繰った。

永年、先生より御指導をいただいた老生の感想であるが、多くの読者、それも初めて重森庭園に接する方々には少し強烈とも感じられ、さらに、次の展開に何が出るかと期待させる。ページを繰るに従い重森庭園の足跡を、処女作ご生家跡作庭から、絶作となった松尾大社上古の庭に至るまで、活字ばかりでなく、著者自身のカメラを駆使してたどる。風景や造形とともに、庭主の思想、美意識までも平易に語りかけるような画と文の運びで、これも先生がよく言われていた「庭に対する愛情の気持ち」を、読者に訴えるに最もふさわしい形ではなかろうか。

著者は業界や学会関係者ではなく、たまたま自家の古庭園改修時に、三玲先生に接し、生涯無二の師父、一期一会の巨匠と敬慕の想いを深くされたという。定年退職を期に積年の願いを果たすべく、愛用のカメラとともに重森庭園巡礼の旅をされたことは、三玲先生の大著『日本庭園史図鑑』発刊の快挙に匹敵する大事業である。対象こそ重森庭園に絞られているが、助手やカメラマンもなく、徒手空拳ただカメラと同行二人で各地の庭、しかも拝見取材の難しい個人邸宅も多く、これらの公開出版には著者の体当たりの熱意が要因となったと推察される。

三玲先生とその作庭に対する著者積年の想いが、本書にはあふれている。

庭園文化や茶道・華道などの数寄教養の革命的発想家であり、実践家であった三玲先生80年の生涯の大偉業を、庭好きの若者や数寄文化愛好家に、観て、読んで、楽しんでいただける好著として、愛読書の一冊に加えていただきたくお薦めする次第である。

(佐藤嘉一郎/京都林泉協会名誉会員)


担当編集者より

東福寺本坊や、松尾大社といった寺社仏閣の作庭で著名な重森三玲ですが、本書では、これまで公開されてこなかった個人庭園を含む、現時点で掲載可能な庭が網羅されています。

著者による700点以上の撮り下ろし写真から、次々と新たな表現に挑戦する作庭家の姿が見えてくるようです。
重森三玲を知ろうとするとき、基礎資料となる一冊です。

(G)

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