ボストン市が敷地内駐車場の最低附置義務を一部地域で撤廃へ 不足するアフォーダブル住宅の開発促す
アメリカ・ボストン市長のミシェル・ウー(Michelle Wu)氏はこのほど、中低所得者向けの手頃な価格の住宅、いわゆる「アフォーダブル住宅(affordable housing)」を開発する場合において、一部地域で駐車場の最低附置義務を撤廃する修正措置に署名した。アメリカの不動産・金融情報誌AFFORDABLE HOUSING FINANCEが報じている。
世界経済フォーラム(World Economic Forum)によれば、急速な都市化の進展により、所得よりも早いペースでの住宅コストの上昇、住宅供給を上回る需要、土地の不足、人口増加や高齢化、世帯構成の変化などにより、良質なアフォーダブル住宅は不足。
アフォーダブル住宅の一般的な基準は、所得の中央値の3倍以下に収まることとされる。しかし、世界の主要な200都市で平均住宅価格がこの基準に収まっているのは、わずか10%程度だとする調査もあるという。
アメリカでも、東北部のニューヨークやボストン、西海岸のサンフランシスコ、ロサンゼルスなど人気の都市では、不動産や賃貸の価格は上昇を続けている。
WIRED誌によれば、人気都市に住める人は、高家賃を支払う余裕のある富裕層か、住宅補助を受けられる程度の低所得者層に限られており、年収10万ドル(約1,116万円)程度の中間所得層でも、持ち家を購入する余裕がない状況になっているという。
こうした中、住宅地の再開発を妨げ、手ごろな住宅が不足する原因の1つになっている、ゾーニングなどの都市計画上の規制を緩和しようとする動きも起きている。
バイデン米大統領も、一戸建て住宅の建築のみが認められている地区においても集合住宅の建築を容認するよう地方政府に促すべく、都市計画法を緩和する改正に取り組んだ場合に助成金を支給する仕組みを検討している。
今回のボストン市の取り組みもこうした流れの中で行われる施策の一環。アメリカにおけるアフォーダブル住宅の開発においては、敷地内駐車場に関する要件が大きなコスト要因となることが多いとされ、車を持たない居住者が多い高齢者向け住宅などでも建設が必要になるため、開発業者にとっては二の足を踏む要因になってきた。
今回の措置が発効すれば、60%以上の世帯が、所得の地域中央値(AMI:Area Median Income)の100%かそれに満たない所得に制限されている地域での住宅開発において、駐車場の最低基準が廃止される。
なお、この変更により、対象となる住宅事業ですべての駐車場が廃止されるわけではなく、個々の事業において、従来の方式ではなく居住者のニーズに基づいて必要な路上駐車の量を決定できるようになるとも発表されている。
詳細
参考
関連
- ポルトガル・リスボン市 空室が続く民泊用住居を借り上げ若者などへ安価に転貸する施策を始動 長期的な賃貸市場への引き戻しのねらいも
- ニューヨーク州が一部商業ビルの住居用途への転用促進を検討へ 低所得者向け住宅としての活用などを条件に
- 物件探しの際に気候変動による影響のリスクを考慮する米国民が増加 新たなジェントリフィケーションにつながる懸念も
Cover Photo by Blake Wheeler on Unsplash