都市の“木陰格差”解消のためには5億本以上の植樹が必要 米国機関が樹木分布の評価指標を発表しヒートアイランド現象悪化に警鐘

アメリカに拠点を置く非営利の環境保全団体 “American Forests” がこのほど、米国内における樹木の分布状況に関する公平さを評価する指標「Tree Equity Score」(TES)を発表した。
TESは、国内の15万地域、486都市圏を対象に、社会・経済的な状況や既存の樹木の状況、人口密度などの情報を組み合わせて、健康・経済・気候といった視点で最適な環境をもたらすのに十分な樹木があるかを判断するもの。この指標によると、人口50万人以上の大規模都市では、下記の20都市が特に高い評価となったという。

  • シカゴ(イリノイ州)
  • コロンバス(オハイオ州)
  • デトロイト(ミシガン州)
  • フレズノ(カリフォルニア州)
  • ヒューストン、フォートワース、エルパソ(テキサス州)
  • ヘムステッド、ニューヨーク(ニューヨーク州)
  • ジャクソンビル(フロリダ州)
  • ロサンゼルス(カリフォルニア州)
  • メンフィス(テネシー州)
  • ミルウォーキー(ウィスコンシン州)
  • オクラホマシティ(オクラホマ州)
  • フィラデルフィア(ペンシルベニア州)
  • フェニックス(アリゾナ州)
  • ポートランド(オレゴン州)
  • サクラメント、サンディエゴ、サンノゼ(カリフォルニア州)

一方、American Forestsは、樹木によりもたらされる恩恵の分布が不公平な状況にあることを指摘。低所得者層や有色人種などの弱い立場にある人々と都市のヒートアイランド現象による影響の関係を念頭に、分析結果を紹介している。

近年の気候変動の影響で都市のヒートアイランド現象は悪化しているとされ、熱を要因とする死亡者数は、2031年~2050年にかけて、1971年~2000年までの死亡者数に比べて57%増加するとみられている。
TESによれば、樹木の分布は、資源の乏しい地域で少なく、裕福で白人住民の多い地域では多い状況が顕著に。具体的には、有色人種が多数を占める地域では、白人が多数を占める地域に比べて、樹木のキャノピー(傘上に覆われる空間)が33%少ないという。また、住民の9割以上が貧困層である地域は、貧困層が1割以下の地域と比較して同じく41%少なくなっているという。

こうした点を踏まえ、レポートでは、樹木の木陰による気温の低減効果は日中に最大で7度、夜間は22度にのぼることや、米国の都市部に所在する樹木が、国内全体の森林で貯蔵・吸収される二酸化炭素排出量の2割を占めていることなど、都市における樹木の存在の意義を指摘。全国規模で木の公平性(Tree Equity)を達成するには、人口5万人以上の大都市圏で5億2200万本の木を植える必要があると訴えている。

詳細

Study finds that 500 million new trees are needed to address U.S. shade disparity

https://www.archpaper.com/2021/07/study-finds-that-500-million-new-trees-are-needed-to-address-u-s-shade-disparity/

American Forests Launches Nationwide Tree Equity Scores

https://www.americanforests.org/media-release/nationwide-tree-equity-score/

Hot and Getting Hotter: Heat Islands Cooking U.S. Cities

https://www.climatecentral.org/news/urban-heat-islands-threaten-us-health-17919


Cover Photo by Alex Zarubi on Unsplash