2021年度グッドデザイン賞受賞記念連載(4)
変化し続ける街、がもよん。この1年の動き
2021年度グッドデザイン賞ベスト100に選ばれた、大阪市城東区蒲生四丁目界隈を舞台とする地域づくりの取り組み「がもよんモデル」。
この連載では、“そもそもがもよんって何?”というおはなしから、きっと訪れてみたくなるリアルタイムの街の動きまで、住まいと街の解説者・中川寛子さん(東京情報堂代表、『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』著者)にレポートいただきます。
第4回の主な内容
- アフターヌーンティーというブルーオーシャン
- リスク回避のため、低予算で採算を維持
- クラフトビール工場、建設中
さまざまな業態に影響を及ぼした新型コロナウイルスだが、そのうちでも影響が大きかったのが飲食と観光。だが、がもよんではそんな時期にあっても飲食店が2店、オープン。しかも、カフェである。
書籍をお読みいただいた方ならお分かりだろうが、これまでのがもよんではカフェの出店はわずか1店のみ。収益性が低いと希望者がいてもほとんど応じてこなかったのである。
ところが今回はこのタイミングでカフェが2店。しかも着実に顧客を掴んでいる。
成功の背景を、一般社団法人がもよんにぎわいプロジェクトの和田欣也氏と田中創大氏に聞いた。
アフタヌーンティーというブルーオーシャン
2021年4月にオープンしたのは築80年を超える古民家をリノベーションした『salon de the Tea shot / サロン ド テ ティーショット』。
オーナーからがもよんにぎわいプロジェクトにアプローチがあり、最初に会ってから約半年でオープンしたと田中氏。
オーナーさんには飲食の経験はなかったものの、アルコール無の飲食店の経営が難しいことを理解した上で滞在時間が長く、単価を高く設定できるアフタヌーンティーなら成立するのでないかと推論、事業計画を立てていらっしゃいました。
田中氏
私も、アフタヌーンティーと聞いた時には、その手があったかと思った。ホテルなどでは楽しめるものの、市中の店舗でアフタヌーンティーを出している店は少なく、ある意味ブルーオーシャン。客は長時間、店内に留まることになるが、その分、単価が高いならありだろうと思ったのだ。
和田氏はオーナーの熱意、勉強ぶりに加え、店舗の内装や経営イメージが出来上がっていたことを評価。GOを出した。「ただ、業態的には一過性のブームになりかねない懸念もあり、次の展開についての計画も検討しつつあります」とも。一時期の人気に安心せず、常に先を見据える姿勢、参考にしたいところである。
現在では老若問わず女性主体で非日常の空間として人気を集めており、リピート客も多いそうである。
リスク回避のため、低予算で採算を維持
2021年6月にオープンしたのはティラミスとエスプレッソがこだわりの新古民家カフェ『amaretto』。
カフェというだけでなく、ティラミスに絞った専門店である。リスクもあろうと和田氏は低家賃、低内装費、低人件費で回せる店舗をと考えた。
結果、ワンオペレーションで採算性が維持できている状態だという。
当初は差別化のために専門性を押し出し、テイクアウトに力を入れて採算性にこだわった店をとのことだったそうだが、現状はカフェメインで、利用者は若年層から40代が中心。15時頃に賑わっていると田中氏。
2店ともに制限がある中では専門性に特化しなければ生き残れないという考えがコロナ以前より強かったように思います。
田中氏クラフトビール工場、建設中
もうひとつ、現在進行しているプロジェクトがある。クラフトビール工場の建設だ。
クラフトビールは製造過程において機械の分解・洗浄・組立てが毎回あり、単純作業の人員コストのウェイトが大きいことに着目。B型就労支援事業のクラフトビール醸造+販売所にする計画です。クラフトビール製造自体は全国で増えつつありますが、そこに障がい者雇用を組み込んだ事例は全国でも珍しいのではないでしょうか。
和田氏現在は建物の解体が終わり、基礎工事が始まるところ。元々は古い長屋を改装という計画だったが、内部の状態が想像以上に良くなかったため、新築するかのような大規模な工事になりそうとのこと。
また、酒造、酒販ともに初めての試みで試行錯誤も多々あるそうだが、がもよんのみならず、全国レベルで見ても挑戦である。次の展開を楽しみにしたい。
それ以外にもこれまでとは全く別ジャンルである英語塾の出店希望者が来ているなど、がもよんの進化は飲食に留まらない。
(続く)