2021年度グッドデザイン賞受賞記念連載(3)
飲食中心の街だから気になる、コロナ禍とがもよん

2021年度グッドデザイン賞ベスト100に選ばれた、大阪市城東区蒲生四丁目界隈を舞台とする地域づくりの取り組み「がもよんモデル」。

この連載では、“そもそもがもよんって何?”というおはなしから、きっと訪れてみたくなるリアルタイムの街の動きまで、住まいと街の解説者・中川寛子さん(東京情報堂代表、『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』著者)にレポートいただきます。


第3回の主な内容
  • 地主による早急な家賃減額
  • テイクアウトマップとレシピ動画の制作支援
  • 助成金申請の手助けも
  • 全店揃って営業継続中

2021年度グッドデザイン賞で「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた[がもよんモデル]だが、何度か説明してきた通り、がもよんは主に飲食店として古民家を再生、街を賑わいのある場としてきた。
となると気になるのは昨今のコロナ禍の影響。がもよんではどのようにコロナと対してきたのか、書籍から紹介していこう。

地主による早急な家賃減額

コロナ禍到来で最初に動いたのはがもよんの地主である杦田グループ。2020年3月の時点でまず、同グループが取ったのは食べて応援するという手。どの店に何度行っても会社負担という太っ腹な支援策である。

だが、その後、外食が憚られる事態が出来。同社は同年4月、6月の家賃を半額に減額、その後の6月、7月は飲食店に対しては家賃を2割減額(業種ごとに数字は異なる)という支援を行った。

東京都の感染協力支援金が同年5月からだったことを考えると初動の速さは特筆ものだったといえよう。

テイクアウトマップとレシピ動画の制作支援

一般社団法人がもよんにぎわいプロジェクトの和田欣也氏が打った手は主に2つ。

ひとつは営業面の直接的な支援である。がもよんでも早々にテイクアウトが始まったが、テイクアウトできる店のマップをwebサイトにアップしたのはもちろん、SNSに不慣れな高齢者向けにはポスティングも実施。幅広い人たちにテイクアウトの利用を呼び掛けた。マップ作製から配布まで1週間ほどというから、実に素早い動きである。

テイクアウトについては日常的な飲食店店主たちの協力体制も生きた。店主が買いに来た客に「ウチだけでなく、あそこの店もテイクアウトをやっていますよ」と伝えることで、テイクアウト利用者が地域内の飲食店を回遊するという現象が起きたのである。

助成金申請の手助けも

もうひとつは行政による支援策の情報をいち早く伝えたり、助成申請をサポートするというもの。

たとえば飲食店は店内ではアルコールを提供できても、酒類販売の免許がない場合には販売はできない。しかし、コロナ禍を受けて特例的に免許無で販売ができるようになっており、その情報を知っていれば料理と酒を販売できる。情報を知っているかどうかが収益に直結したのである。

助成申請では各店に申請を勧めに行き、次いで助成金申請手続きの相談会を実施。2回に分けて数店ずつが参加し、全店が無事に助成を受けられることになった。加えてこの過程で確定申告についてきちんと理解していない店舗があることが判明、実務としての申請作業を手助け、実施すると同時に経理作業の大事さを啓蒙する機会にもなったという。

全店揃って営業継続中

がもよんの飲食店は主に地域のお客さんを相手とする地元密着型の店舗。しかも、蒲生四丁目はもともと夜間人口が多く、そこにテレワークなどで在宅時間が増えたことで昼間人口も増えた。
外食の機会は減ったとしてもテイクアウトのニーズはあり、そうしたこともあって現時点ではコロナ禍以前と変わらず、全店が揃って営業を継続している。それどころか、この間に新たにオープンした店もある。

次回はあらたにがもよんに加わった店舗についてご紹介していこう。

続く


連載バックナンバー

2021年度グッドデザイン賞受賞記念連載(1)速報!「がもよんモデル」が「グッドデザイン・ベスト100」に!

2021年度グッドデザイン賞受賞記念連載(2)そもそも「がもよん」ってどこ? 何が起こっている?