コロナ禍でとられたホームレスへの臨時的支援策をいかに長期的な成果に転換してゆくべきか ニューヨーク市前副市長(厚生部門)から都市行政への6つの提言

公開日:2020/05/29/最終更新日:2020/10/20

  • 米の慈善団体ブルームバーグ財団のMedium上で、ニューヨーク市において2005年から2013年まで厚生部門(Health and Human Services)の副市長を務めたリンダ・ギブス氏が提言記事を発表。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐための臨時的な対応としてとられたホームレスの人々への救済策を、都市行政としてより長期的な成果につなげるために求められるポイントを6点挙げている。
  • ギブス氏は「持続的な解決策のために様々な戦略を見つけ出すことにより、社会システムの変革につながり、われわれのコミュニティに属する数えきれない脆弱な立場の人々の暮らしを改善することができる」としている。
  • 以下、抄訳(※は訳注)。
1.時間軸を再設定せよ

新型コロナウイルスに対する緊急対応の初期段階は過ぎたものの、公衆衛生を主導する立場にある人たちは、問題がそのうちすぐには雲散霧消しないことを確信している。したがって都市行政は当分の間、感染リスクの高いホームレスの人々への支援には気を緩めず取り組み続ける必要があるだろう。初動の対応期間が60~90日間であったのであれば、向こう12~24カ月に時間軸を合わせる時が来ている。

2.検査実施に向けた計画を立てよ

検査の実施量に余裕が生まれつつある中で、ホームレスの収容施設内や路上での検査や接触追跡の実施準備を進めるべきだ。また、孤立した陽性例の発現や潜在的な感染発生にどう対処するかについても、適切な計画を立てなければならない。
急速な感染拡大で施設のスタッフらが危険にさらされたり、隔離スペースの確保を急いで右往左往したりしないようにするためにも、ホームレスの人々に対して積極的に検査を実施しつつ、検査場所への安全な移動手段も提供することが必要だ。あらかじめ明確な検査実施要綱を策定しておかねばならないが、そのためには、社会福祉事業者や民間のサービス提供者、あるいは地域の保健当局らとの交渉を通して、感染者を隔離する必要性と、ホームレス状態にある人々が抱える様々な複雑な課題のバランスをうまくとることが求められるだろう。

3.路上でなされる生活について再考せよ

これまでになかった(※感染防止のための)施策により、感染爆発期間中も路上にとどまってきた人々のニーズを満たしたり、安全を確保したり、建物の内側に引き入れたりすることが可能になっている。
例えばニューヨーク市における地下鉄の深夜営業の休止は、駅で寝泊まりする人々への働きかけにつながり、最初の1週間に限ってだが、数百人に寝床が提供された。また、ホームレスとして暮らす人々に公認のテントキャンプスペースを提供したサンフランシスコの戦略は、彼らの心の安定や基本的な欲求の満足につながっただけでなく、支援活動に触れる機会を増やした。
これまでに見逃されてきたような解決策を見出す好機と捉えよう。

4.持続性について考えはじめよ

危機的な状況が続けば、臨時に収容するための空間も長期的な視点での備えが必要になるだろう。一時的に閉鎖された建物に急場で設えられた収容施設は、都市生活がゆるやかに再開される中で移動を余儀なくされる。
(※ホームレスの収容先として)ホテルと短期の賃借契約を結んだ都市は、それまでの間に契約期間の延長が必要になるだろう。高いコストのかかる一時的な収容施策に費用を投じることは、転じて(※ホームレスを)持続的に住み続けられる場所に導くことにつながるかもしれない。援助資金の工夫した活用策として、長期間にわたって収容用施設に費用を払い続けるのではなく、賃貸支援によって住宅を確保したり、ホテルから支援住宅へと資本を転換させたりできないか、探ってみてはどうか。

5.ホームレスの新たな増加を防げ

多くの都市や州においては、(※賃貸住宅からの)立ち退きを短期的に猶予させる措置を決めたり、失業に陥った低所得者への財政的な支援を強化したりしている、これらの取り組みが失効した際には、ホームレス状態に苦しむ人の新たな波が生まれないように、経済的に脆弱な世帯に向けた対策を講じることが求められる。こうしたリスクの高い状況において住宅を失うことを避けるために、家計のニーズを満たす積極的な支援や柔軟なサポートが検討されるべきだろう。

6.家庭内で虐待に苦しむ人を保護せよ

様々な都市において、家庭内暴力の急増が報告されている。児童虐待の報告数は減少しているが、虐待を経験している子どもたちの中には、周りの人に助けを求めることができない子どももいるというのは、疑いようがない現実である。
こうした安全面の問題解決を積極的に追求している、あるいは被害者の安全を確保するためのリソースを有していると、都市行政は確信を持って言えなければならない。被害者が自宅では安全にいられない場合に退避場所へと迅速に導いたり、安全に帰宅させたり、あるいは新たな暮らしへの道筋をつくったりするための様々な戦略があるかどうかも、そうした確信の対象に含まれているかもしれない。

詳細

COVID-19 and the homeless: How cities can turn temporary measures into permanent gains

https://medium.com/@BloombergCities/covid-19-and-the-homeless-how-cities-can-turn-temporary-measures-into-permanent-gains-c1e58c835b45

2020/5/18/Bloomberg Cities