アテネが欧州初の「最高熱責任者」職を創設 インフラ整備等で猛暑による都市生活者のリスク低減を強化へ
ギリシャの首都・アテネ市がこのほど、頻発する熱波への政策的な対策を強化すべく、新しい役職として「最高熱責任者」(Chief Heat Officer: CHO)を創設した。
CHO職はアメリカ・フロリダ州のマイアミ市が5月に世界で初めて創設しているが、ヨーロッパの都市ではアテネ市が初めてとなる。
CHOの創設は、高齢者など弱い立場にある都市生活者が、熱波や猛暑によってさらされるリスクを低減しようとする、欧州中心の都市間連携 “Extreme Heat Resilience Alliance”(EHRA)の中核的な枠組み “Champions for Heat Action”(CCA)にアテネ市が参画していることによるもの。
2018年にはEUの高齢者10万4,000人が熱に関連した死亡に見舞われているとされ、これは世界全体の3分の1以上に相当。特に比較的北部に位置する地域では、極端な暑さに対処するための物理的なインフラが十分に整っていないことが要因とみられ、対策が急務となっている。
アテネ市も2017年に策定した「2030年に向けたレジリエンス戦略」(Athens Resilience Strategy for 2030)の中で熱波への適応に注力する方針を示しており、緑地や日陰を増やしたり、涼しい素材の使用を拡大したりすることにより、リスクの高い人々を猛暑から保護することを目指している。
コスタス・バコヤニス市長は、「アテネにとっての気候変動とは、住民にとっても、経済的に重要な観光客にとっても、より高い頻度で危険かつ極端な形で襲う高温を意味します。残念ながらアテネだけでなく、ヨーロッパや世界中の都市で、暑さが緊急的な事態になっています。“City Champions for Heat Action” に参加することで、弱い立場にある人々の保護を加速し、長期的な健康や福祉のために最も適切な冷却策を見出すことができると考えています」などとコメントしている。
なおアテネ市の初代CHOに任命されたのは、米国ワシントンを拠点とするシンクタンク “Atlantic Council”(大西洋評議会) のシニアフェロー、エレニ・ミリビリ氏。気候変動やレジリエンスに関する専門家で、アテネ市でもかねてからレジリエンスやサステイナビリティに関するアドバイザー等を務めてきた。
特に2014年から2019年にかけては、副市長として都市の自然と気候変動への対応に従事し、数百万ユーロ規模でグリーンインフラ等の整備に先駆的に取り組んだ実績を持っているという。
ミリビリ氏は「ヨーロッパ初のCHOを務められることを光栄に思います。猛暑の深刻な危険性について市民の意識を高め、意思決定者が街を冷やし、人々や地域社会を守るための行動を起こせるよう支援したいと思います」などとコメント。
今後、アテネ市で省庁間チームと連携し、メディアやその他のコミュニケーションチャンネルを通じて「猛暑」を優先的な課題として取り上げ、暑さ対策に関する特命チームを立ち上げるとみられている。
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Athens Mayor Kostas Bakoyannis announces Europe’s first Chief Heat Officer
Cities including Miami and Athens are hiring ‘Chief Heat Officers’ to help businesses and residents survive extreme heat
Miami, Athens and Freetown to appoint world’s 1st Chief Heat Officers
Cover Photo by Danielle Smit on Unsplash