2021年度グッドデザイン賞受賞記念連載(5)
地元の公立小学校の授業に登場!? がもよんを知って地域を学ぶ
2021年度グッドデザイン賞ベスト100に選ばれた、大阪市城東区蒲生四丁目界隈を舞台とする地域づくりの取り組み「がもよんモデル」。
この連載では、“そもそもがもよんって何?”というおはなしから、きっと訪れてみたくなるリアルタイムの街の動きまで、住まいと街の解説者・中川寛子さん(東京情報堂代表、『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』著者)にレポートいただきます。
第5回(最終回)の主な内容
- 3年生と5年生を対象に授業を実施
- 子どもたちがまちを歩き、店主にインタビュー
- 次の時代のがもよんを担う子どもたちを育てたい
がもよんは、書籍の出版をきっかけに、地元の大阪市立聖賢小学校の授業に登場することになった。
出版時に学校に書籍を贈呈したことから先生方ががもよんに関心を持ち、総合学習の課題として取り上げてはどうかという声が挙がったのだ。
校長先生から元PTA会長だったがもよんの地主である杦田さんに相談があり、3年生、5年生を対象に一緒に授業をすることになりました
一般社団法人がもよんにぎわいプロジェクトの和田欣也氏3年生と5年生を対象に授業を実施
3年生は「職業について学ぶ」がテーマで具体的には飲食業について、5年生は「古民家再生やまちづくりについて学ぶ」がテーマで、最初の座学が行われたのは9月。
講演後も時間切れになるまで質問が殺到、関心の高さが印象的でした。
がもよんの活動自体はあまり理解されていなかったものの、地域におしゃれな店が増えているという認識は子どもたちにもあったようです。通学路にある物件のことでもあり、気にはなっているけれど、建物内がどうなっていて、どんな人がいるのか、気になっていたのでしょう
講演を聞いた先生や父兄からも「聞きに来てよかった」という声が多数上がった。地元が変化しつつあることは分かっていても、外から見ているだけでは何が起こっているかまではなかなか分からないもの。それをきちんと知ることができて良かったというのである。
さらに子どもたちが学校で聞いた話を家庭で話したことがきっかけで父兄が実際に店舗を訪れる例も出てきている。
子どもたちがまちを歩き、店主にインタビュー
続いては10月に3年生、5年生が3人一組となってのフィールドワークが行われた。がもよんの店主たちにインタビュー、11月にはそれをまとめて報告会を開くという計画だ。
インタビューはすでに行われており、これについては店主たちが喜んだと和田氏。
地元の子どもたちの勉強に協力、地域貢献できた上に店のPRもできた。それに自分が好きでやっている仕事に子どもたちから尊敬の目を向けられたことがうれしかったという声もありました
和田氏まだ、これからまとめ作業があるものの、子どもたちはもちろん、先生方からも好評で、すでに来年も授業を続けることが決まっている。それだけではない。年末には聖賢小学校でしめ縄ワークショップの開催も決まっている。
420人にしめ縄作りをしてもらい、正月の意味や文化を伝えればと…。来年は最多で一度にしめ縄を作ったという名目でギネスを狙っています(笑)
和田氏次の時代のがもよんを担う子どもたちを育てたい
以前からがもよん子ども食堂や親子でフラワーアレンジメントなど、がもよんのイベントのうちには子どもたちを対象としたものも多かった。
「地域の子どもに向けた教育・文化活動は長年、がもよんにぎわいプロジェクトが力を入れてきたことだったので、子どもたちに活動を受け継ぎ、がもよん愛を持って成長してもらうことが目標です。将来はこの子どもたちが新たなプロジェクトの仕掛け人となり、自分たちの理想の地域を思い描いて実現して行って欲しいと思っています」と田中氏。
子どもたちだけではなく、新成人に向けての取組もある。
成人式の式典で新成人300人が初めてお酒を飲む場所としてがもよんを選んで欲しいとのことで、マップとチケットを作成して欲しいと区役所、町会から相談が来ています。がもよんでなら安心して地域の人と顔の見える関係を築き、楽しめます。そうしたがもよんの特徴、自分のまちの魅力を分かってもらえる機会にできれば良いと思っています
和田氏ひとつ問題は和田氏の顔が地元の小学3年生、5年生全員に知られてしまったこと。
道を歩いていると子どもたちから和田さ~んと声を掛けられるようになり、ちょっと困っています
和田氏それ以前も大人たちからはよく声がかかっていたが、それに加えて子どもたちである。地元では悪いことはできなさそうである。
(連載おわり)