『小さな空間から都市をプランニングする』の著者・武田重昭先生による特別寄稿「大きな時間のなかで考える都市の未来――6つの変化の兆しから」を公開しました
長引く自粛生活があたらしいパブリックライフを誘発しています。
多くの人びとの困難や苦痛に比べれば取るに足らない小さなできごとですが、このコロナ禍で前向きに都市を志向する6つの視点を、『小さな空間から都市をプランニングする』の著者・武田重昭先生にお寄せいただきました。
特別寄稿「大きな時間のなかで考える都市の未来――6つの変化の兆しから」(武田重昭)
目次/Index
- いま、目の前にあらわれている風景
- ①代謝する都市空間の3つの効果
- ②人々の抱く意味こそが都市の個性
- ③共感のパンデミックーー世界的流行に乗せるもの
- ④公共と共同の接近
- ⑤まちのフロネーシスーー強要ではなく教養がつくる風景
- ⑥大きな時間のなかの都市
「いま、目の前にあらわれている風景」
自宅で過ごす生活が長引くほど、人びとは身近な屋外空間に悦びを求めるようになっています。大人数での集合を避けながらも散歩や運動をはじめ、食事を楽しんだり、パソコンに向かったり、なかには青空のもとで麻雀を楽しむ人たちまであらわれています。これらは抑鬱された生活のなかでの抑えきれない欲求を満たそうとするだけの行動ですが、世情のことを少し脇に置いて、目の前の風景だけを切り取ってみると、身近な空間がずいぶんとうまく使いこなされていると見ることもできます。そこにはもちろん、人びとが集い、交流する集団の歓喜のようなものはありません。それでも、思い思いに過ごす人たちが互いの距離を保ちつつ「離散的に集合」する風景に、ある種の豊かさを感じずにはいられません。離散することは疎外ではなく、……
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筆者略歴
武田重昭 Shigeaki Takeda
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科准教授。1975年生まれ。UR都市機構、兵庫県立人と自然の博物館を経て現職。博士(緑地環境科学)。技術士(建設部門)。登録ランドスケープアーキテクト。共著書に『小さな空間から都市をプランニングする』(2019)、『都市を変える水辺アクション』(2015)、『いま、都市をつくる仕事』(2011、いずれも学芸出版社)ほか。
学芸出版社編集部が運営するウェブマガジン「まち座」では、新型コロナウイルスと建築・都市・まちづくりに関するニュースを連日紹介しています。