〈京都市美術館本館〉や丹下健三設計・浦辺鎮太郎改修設計の〈旧倉敷市庁舎〉など133件が新たに登録有形文化財へ

Image: 旧倉敷市役所を再利用した倉敷市立美術館(Photo by Tatushin / CC BY-SA 3.0)

以下、文化庁の報道発表資料より


文化審議会(会長:佐藤信)は,令和2年3月19日(木)に開催された同審議会文化財分科会の審議・議決を経て,新たに133件の建造物を登録するよう文部科学大臣に答申しました。

この結果,官報告示を経て,登録有形文化財(建造物)は,12,692件となる予定です。

今回の答申における主なもの

①独創的な意匠が際立つ座敷蔵

旧吉田家住宅紫雲閣ほか1件/福島県田村郡三春町

三春町旧城下町の階段状敷地に建つ生糸商の住宅。紫雲閣は主屋北西上段に建つ2階建ての座敷蔵で、明治中頃に建設された。入母屋屋根の土蔵造で,ベランダ風意匠の下屋を正面に設ける。内部は趣向を凝らした設えで,特に2階座敷は,軸部を赤色系の磯草模様に仕上げ,床柱と落掛に龍の彫刻を巻くなど,豪華につくる。中国趣味を色濃く取り入れ,多彩な工芸技術を駆使した意匠奇抜で類稀な建物。

②戦前の民芸運動の流行も垣間見える高尚なつくりの邸宅

旧尾張徳川家本邸主屋(八ヶ岳高原ヒュッテ) /長野県南佐久郡南牧村

尾張徳川家第19代当主義親が昭和9年に東京の目白に建てた本邸を,昭和43年に八ヶ岳へ移築したもの。ハーフティンバーを基調とし,大小の切妻屋根を組み合わせて変化を付けた外観を見せる。端正な意匠でまとめつつ,内外の木部を手斧ちょうなで仕上げた温もりあるつくり。階段の手すり親柱上部などを飾る手彫りの熊の彫刻も印象的。戦前を代表する建築家・渡辺仁による邸宅建築の好例。

③ 雄大さと繊細さを兼ね備えた荘厳な美術館

京都市美術館本館/京都府京都市

平安神宮へ至る神宮道に面して建つ,昭和天皇即位に伴う奉祝記念事業で昭和8年に建設された美術館。設計図案を公募し,和洋の様式を巧みに織り交ぜた意匠が評価された建築家・前田健二郎の原案を基に,京都市土木局営繕課が設計した。鉄筋コンクリート造一部鉄骨造,地上2階地下1階建てで,四面中央に車寄せ付きの入り口を設ける。堂々たるつくりで,洗練された細部意匠も秀逸。

④ 圧倒的な表現力を持つ大阪万博のシンボル

太陽の塔/大阪府吹田市

昭和45年に開催された万国博覧会のために建てられた。岡本太郎の斬新な造形表現を,鉄筋コンクリート造や鉄骨造などを混用し,様々な建設技術を駆使して実現した。内部は展示空間そのものでありながら,階段を設けて地下展示と空中展示を結ぶ動線の役割も担った。大阪万博を象徴する存在感あるデザインで,現在も多くの人に親しまれる。

⑤巨匠・丹下健三によるモダニズム庁舎建築の好例

旧倉敷市庁舎(倉敷市立美術館)/岡山県倉敷市

昭和35年に建設された,鉄筋コンクリート造,地上3階地下1階建ての元庁舎。コンクリート打ち放しの柱や梁を平滑に見せる外観で,2階を太い柱と約20mの長大なプレストレスコンクリートの横架材で支える。南面には,先端を湾曲させた庇を付けて変化を付ける。長方形平面で,1,2階中心部に吹き抜けの大空間を設け,壁面を幾何学的な意匠で飾る。直線的な構成が,合理的なモダニズム建築の理念をよく示す。

⑥ 江戸時代の宇島の繁栄を物語る三層の鐘楼

教圓寺鐘楼/福岡県豊前市

周防灘に面する宇島に所在する浄土真宗本願寺派寺院の鐘楼で,文久3年(1863)に建設された。旧中津街道沿いの境内南西隅に建つ,正面三間,側面二間,木造3階建て袴腰付きで,宝形造桟瓦葺ぶきの屋根とし,入り口には唐破風屋根を付ける。内部には大小の梵鐘を吊る。鐘楼としては珍しい三層の構成で,かつては物見櫓としても利用したと伝わる。地域のランドマークとして親しまれている。

その他詳細

概要と主な事例

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/92093901_01.pdf

一覧表

https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/92093901_03.pdf