「村ぐるみホテル」計画を進めるスイス最小の村 初のコテージ宿を開業も資金調達に苦戦中

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Tambako The Jaguar (CC BY-ND 2.0)

スイスのアルプス地方にある国内最小の村で、域内全体の観光地化計画を進めていることで知られるコリッポ村に、初めてのコテージ宿がオープンしました。計画全体の実現に向けて、資金調達が続けられています。

南部・ティチーノ州の山あいにあるコリッポ村。19世紀半ばに独立した自治体となった当時は300人ほどの住民が暮らしていたものの、この数十年間はよりよい教育機会や働き口を求める若年層の流出が続き、現在では村長を含めてわずか12人にまで人口が減少しました。平均年齢は75歳で、村消滅の危機に直面しています。

この村では1975年から、建築士らが参加する財団「Fondazione Corippo 1975」が中心となり、村全体をリゾート化する計画を主導。イタリア発祥の地域再生アイデアとして知られる「アルベルゴ・ディフーゾ(albergo diffuso)」をモデルにしたもので、
広場をロビーに、レストランを受付に、路地を廊下に見立てるなど、村全体をホテルのようにとらえて観光地化を進める構想です。主に村内に約60ある古くからの空き家を宿泊施設に改修することを目指して、取り組みが進められてきています。

こうした中、2017年6月には、スイスのホテルやレストランで組織される団体「Gastrosuisse」から取り組みを評価され、ホテル・イノベーション・アワードを受賞。そして2018年7月下旬には、宿泊可能な村内初の施設として2床のベッドを備えたコテージ「Casa Arcotti」のオープンにこぎつけました。

同財団らは今後も、2020年のイースターまでにホテルの開業を目指しているほか、村役場前の広場整備など景観面のリノベーションや、ヤギの酪農やライ麦・麻・栗の植樹なども計画。総事業費は約650万ドルに上ります。
ただ外部からは、高齢者ばかりの住民らで十分な受け入れ体制を整えられるのか、実現性には疑問の声が寄せられており、一般からの寄付や銀行からの借り入れなどで確保できている資金は2018年8月時点で約270万ドルにとどまっています。

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参考


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