2020年の道路交通事故による全米の死者数が2007年以降で最多に コロナ禍で交通量減少も走行速度増加などが影響

  • 米国運輸省道路交通安全局(NHTSA | National Highway Traffic Safety Administration)がこのほど、2020年に米国の道路で事故死した人の数が38,680人に上り、2007年以降で最も多い水準となったなどとするレポートを発表した。
  • NHTSAが発表したのは、2020年における自動車(の乗員)、二輪車(の乗員)、歩行者・自転車(の乗員)それぞれの事故死亡率の初期推定値をまとめた “Early Estimate of Motor Vehicle Traffic Fatalities in 2020” など3つの報告書。
  • これらの報告書によれば、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響を受け、2020年における自動車の走行距離は13.2%減少した一方で、自動車が絡む交通事故による死亡者数は前年比約7.2%増加して2007年以来最多となったという(2019年は36,096人)。これにより、走行距離1億マイルあたりの致死率は1.37人となり、2019年の同1.11人から増加した。
  • 死亡者数をカテゴリー別にみても、下記のようにいずれも増加傾向にある。
    • 自動車の乗員:23,395人/2019年比5%増
    • 歩行者:6,205人/同ほぼ横ばい
    • 二輪車の乗員:5,105人/同9%増
    • 自転車の乗員:846人/同5%増
  • NHTSAはまた事故死者数が増加した背景について、都市のロックダウンなどにより道路の交通量が減り、自動車の運転パターンが大きく変化したことがあるとみている。具体的には、パンデミック下でも自動車を運転したドライバーには、制限速度以上で走行したり、シートベルトを着用していなかったり、薬物・アルコールの影響下で運転していたりといった、より危険な行動がみられたという。
  • このうち走行速度については、州間高速道路(Interstate)・幹線道路(Arterial)・主要な補助幹線街路(Collector:幹線道路から住宅地へアクセスする道路)のいずれにおいても増加。
    たとえば州間高速道路では、全体の中で最も遅い(1パーセンタイルの)自動車の走行速度が、2019年比で年間を通して15%前後増加していたという。
  • こうした状況に対しては関係機関も対策を訴えている。たとえばニューヨーク市では、交通事故犠牲者の遺族らが2014年に結成した団体 “Families for Safe Streets” などが、血中アルコール濃度規制の強化や、24時間体制でのスピード取り締まりカメラの運用、SUVに対する歩行者安全評価システムの構築といった取り組みを進めるための8つの法案を支持。このうち、過去の犠牲者の名をとって “Sammy’s Law” と呼ばれている法律では、ニューヨーク市が州の許可なしで制限速度を25mi/h(約40km/h)以下に引き下げられるようにする内容が検討されている。

詳細

2020 Fatality Data Show Increased Traffic Fatalities During Pandemic

https://www.nhtsa.gov/press-releases/2020-fatality-data-show-increased-traffic-fatalities-during-pandemic

Traffic Deaths in 2020 Soared to Highest in 13 Years

https://www.curbed.com/2021/06/traffic-deaths-2020-families-safe-streets.html


Cover Photo by Robin Pierre on Unsplash