国連がコロナ禍と電子ごみの関連を調査 発生量は減少予測もデジタルデバイドの拡大を指摘
国際連合の研究者らが6月9日、2020年の電子・電気機器類の販売動向と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの関連について調査したレポートを公表した。
この調査は、ドイツのボンにある国連大学の「持続可能なサイクルプログラム」と、国連訓練調査研究所(UNITAR)が実施したもの。COVID-19のパンデミックが、乾電池やコンピューター、基板、光源など、電気・電子製品の廃棄により生まれる電子ごみ(電気電子機器廃棄物/E-waste)の状況に与える影響を調べることが目的とされた。2020年7月に国連が発表したレポートでは、2019年までの過去5年間で電子ごみの発生量は21%増加し、5,360万トンに上っていることが報告されている。
今回発表されたレポート“The Impact of the COVID-19 Pandemic on E-waste in the First Three Quarters of 2020”によると、第1四半期から第3四半期にかけて、世界では電子・電気機器類の販売に落ち込みが見られた。
内訳としては、冷蔵庫・洗濯機・オーブンといった「重電機器」の販売台数の減少が6~8%程度と最も大きく、ノートパソコン・携帯電話・ゲーム機といった小型の通信機器の減少は1.4%程度だったという。
このため、2020年における販売に関連した電子ごみは490万トン減少すると予測。これは“通常通りのシナリオ”に比較して6.4%の減少に相当するという。
一方でレポートでは、電子・電気機器の販売数について、低・中所得国では30%程度の減少だったのに対し高所得国では5%の減少にとどまった点や、第3四半期に入って高所得国で消費の回復が見られた一方で低・中所得国では低迷したままになっている点に着目。
情報技術へのアクセスに生じる地域格差、いわゆる「デジタルデバイド」が、パンデミックを機に先進国と新興国の間で拡大していると指摘している。
電子ごみの専門家である国連大学のルーディガー・キュール氏は、
一部の地域では、デジタル化に適応し、生計を立てたり、単に電子機器を所有し、その恩恵を受けたりする能力も低下しています。また、Covid-19により、高所得国でも多くの貧しい人々が取り残され、デジタル格差が拡大していることが明らかになりました
とコメントしている。
詳細
Laptops, Cell Phones, and eGames Defied Slump as COVID-19 Dented 2020’s Electronics Sales
https://unu.edu/media-relations/releases/the-impact-of-the-covid-19-pandemic-on-e-waste.html
(日本語版)https://jp.unu.edu/media-relations/releases/the-impact-of-the-covid-19-pandemic-on-e-waste.html