中島健祐 著

内容紹介

税金が高くても幸福だと実感できる暮らしと持続可能な経済成長を実現するデンマーク。人々の活動が生みだすビッグデータは、デジタル技術と多様な主体のガバナンスにより活用され、社会を最適化し、暮らしをアップデートする。交通、エネルギー、金融、医療、福祉、教育等のイノベーションを実装する都市づくりの最前線。

体 裁 四六・288頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2728-0
発行日 2019/12/10
装 丁 藤田康平(Barber)


目次著者紹介はじめにおわりに関連イベント

はじめに

1章 格差が少ない社会のデザイン

1 格差を生まない北欧型社会システム
2 税金が高くても満足度の高い社会を実現
3 共生と共創の精神
4 課題解決力を伸ばす教育
5 働きやすい環境
6 格差がないからこそ起きること

2章 サステイナブルな都市のデザイン

1 2050 年に再生可能エネルギー100 %の社会を実現
2 サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進
3 世界有数の自転車都市
4 複合的な価値を生むパブリックデザイン

3章 市民がつくるオープンガバナンス

1 市民が積極的に政治に参加する北欧型民主主義
2 市民生活に溶け込む電子政府
3 高度なサービスを実現するオープンガバメント
4 サムソ島の住民によるガバナンス

4章 クリエイティブ産業のエコシステム

1 デンマーク企業の特徴
2 世界で活躍するクリエイティブなグローバル企業
3 デジタル成長戦略と連携して進展するIT産業
4 スタートアップ企業と支援体制
5 新北欧料理とノマノミクス

5章 デンマークのスマートシティ

1 デンマークのスマートシティの特徴
2 コペンハーゲンのスマートシティ
3 オーフスのスマートシティ
4 オーデンセのスマートシティ

6章 イノベーションを創出するフレームワーク

1 オープンイノベーションが進展する背景
2 トリプルヘリックス(次世代型産官学連携)
3 IPD(知的公共需要)
4 社会課題を解決するイノベーションラボ
5 イノベーションにおけるデザインの戦略的利用
6 社会システムを変えるデザイン

7章 デンマーク×日本でつくる新しい社会システム

1 日本から学んでいたデンマーク
2 デンマークと連携する日本の自治体
3 北欧型システムをローカライズする
4 新たな社会システムの構築

おわりに

中島健祐

デンマーク大使館投資部部門長(デンマーク外務省投資局所属)。通信会社、米国系コンサルティング会社を経て、2008年より、デンマーク外務省投資局(インベスト・イン・デンマーク)に参画。従来のビジネスマッチングを中心とした投資支援から、プロジェクトベースによる戦略コンサルティング、特にイノベーションを軸にした顧客の成長戦略、新規事業戦略、技術戦略を支援する活動を展開している。最近は特にデンマークで進展している、ビッグデータ、IoT、ロボット、人工知能、デジタルデザイン、そして日本とデンマークが共有する伝統と革新の要素を総合的に組み合わせた、新しいフレームワークの構築に邁進している。

デンマークは人口わずか580万人の小国である。日本人には社会保障制度が充実した福祉国家であり、「人魚姫」や「マッチ売りの少女」などの童話で有名なハンス・クリスチャン・アンデルセンが生まれた国として親しみがあるだろう。最近は幸福度が高い国としても知られるようになり、デンマークの文化、デザイン、ライフスタイルが紹介されることが増えてきた。

一方で、デンマークが現在の社会システムを築くに至った要因を行政システム、社会インフラ、イノベーション、テクノロジーの切り口で横断的に紹介しているものは少ない。そのため日本でデンマークの経験を取り入れようとしてもうまくいかないことが多い。

本書は、デンマークについて、社会システムの中心である国の政策から市民の暮らしまで俯瞰する形でまとめた。さらに、デンマークを礼賛するのではなく、客観的事実を提示することで、日本で応用展開できることを見極めてもらうことが狙いである。

1章では、「格差が少ない社会のデザイン」としてデンマークがオープンで公平な社会をつくりあげてきた歴史的背景と本質的要素について紹介している。現在のデンマークがつくられたバックグラウンドである。

2章では、「サステイナブルな都市のデザイン」を取り上げる。日本でも地球温暖化に伴い、SGDs(持続可能な開発目標)が話題となっているが、デンマークでは理念にとどまらず具体的なプロジェクトに落とし込むことで社会実装を図っている。

3章では、「市民がつくるオープンガバナンス」を紹介している。デンマークで市民が積極的に参加するオープンガバナンスがどのように実現されているのか、その背景やしくみを取り上げた。

4章の「クリエイティブ産業のエコシステム」では、資源が限られた小国デンマークが創造性によって、いかに産業を発展させてきたのかについて事例を交えて紹介している。

5章の「デンマークのスマートシティ」では、首都コペンハーゲン、第二の都市オーフス、第三の都市オーデンセのスマートシティの取り組みを取り上げた。日本で推進されているスマートシティやスーパーシティ計画との違いは参考になるだろう。

6章の「イノベーションを創出するフレームワーク」では、意外に知られていない、デンマークでイノベーションが創出されるしくみを解説している。概念にとどまらず、日本との投資プロジェクトを通じたイノベーションのメカニズムを解説した。

最後の7章では、「デンマーク×日本でつくる新しい社会システム」として、日本の自治体がデンマークの社会システムを参考にしている具体的な事例と、将来、日本とデンマークが連携する場合の体系について説明した。

デンマークでは、新しい技術やしくみを取り入れるだけではなく、先人の知恵を尊重した社会を構築している。これは「伝統と革新の融合」ともいえるもので、旧来型社会システムから時代を超えた普遍的価値のある枠組みを維持し、そこに先端技術を統合する取り組みでもある。デンマークが500年先も存続し、世界から尊敬される国家を築くための秘訣でもある。

筆者はデンマーク外務省という特殊な職場に身を置き、日本人でありながらデンマーク国家の中枢に触れることができる恵まれた環境にいる。本書は、そうした私の立場から、日本の社会に役立つと考えたデンマークの社会システムを紹介したものである。ますます複雑化する現代社会において、本書がデンマーク人の憧れる日本をさらに豊かなものとするきっかけとなれば幸いである。約100年前に内村鑑三が「デンマルク国の話」として紹介したように。

ここ数年、日本におけるデンマークに対する関心が高まっている。2014年4月に三菱重工業と洋上風車の開発製造で世界的大手のヴェスタス社(Vestas Wind Systems A/S)が共同で、洋上風力発電設備専業の合併会社であるエムエイチアイ・ヴェスタス・オフショアウィンド社(MHI Vestas Offshore Wind A/S)を設立したのを皮切りに、2018年12月にはNECがIT企業最大手のケーエムディー社(KMD A/S)を買収した。2019年1月には東京電力ホールディングスが、世界最大の洋上風力発電事業者であるアーステッド社(Ørsted A/S)と洋上風力事業での協働について覚書を締結、さらに同年3月には富士フィルムがバイオ医薬品の開発・製造受託事業を拡大するため、アメリカのバイオ医薬品大手バイオジェン社(Biogen Inc.)の製造子会社であるバイオジェン・デンマーク・マニュファクチャリング社の買収を発表した。

本書で紹介した通り、霞ケ関や地方自治体の公的セクターに加えて、民間企業もイノベーション先進国であるデンマークから、先端技術、ソリューション開発、新規事業のノウハウを習得しようと関係を強化している。

それは、デンマークが小国であるという自国の弱みを補完しながら自国の強みを活かす政策を実行し、デジタル化時代に対応した分野横断的で多様な主体の連携するフレームワークを実現しており、アメリカや中国といった大国とは異なる知見を提供することができるからであろう。

一方、逆説的でもあるが、日本こそがデンマークが見習うべき知恵に満ちた国であるとするデンマーク人も多い。

デンマークと日本は、自然と調和する考え方を持つ共通性もある一方で、個人主義がベースで自己主張が強いが故にフラットな組織で人々の合意形成を尊重するデンマークと、同質性と現状維持を好み、どちらかというと自己犠牲による協調性で社会のバランスを保ってきた日本とでは、その社会的特質は異なる面も多い。

本書でも触れてきた通り、各国の社会システムは長い時間をかけて文化風土とともに形成されてきたものであり、他国の経験を闇雲に導入しようとしても必ず弊害が起こるだろう。

その前提を踏まえた上で、地理的にも遠い北欧デンマークの知恵は、その本質的価値を抽出し、本来はデンマークよりはるかに先進的かつ高度な精神文化を有する日本に調和する形でなければ安易に導入するべきではないだろう。私たちが真に幸福だと感じられる瑞穂の国を取り戻すために、本書が少しでもお役に立てたら幸いである。

2019年12月
中島健祐

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