イギリスが2024年10月までに石炭発電を廃止へ 増加路線のアジア諸国の動向と対照的
イギリス政府はこのほど、2024年10月1日までに石炭を使用した発電を廃止する方針を明らかにした。
6月30日にエネルギー・気候変動担当大臣であるアン=マリー・トレベリアン(Anne-Marie Trevelyan)氏が公表したもので、ボリス・ジョンソン首相が昨年明らかにしていた1年前倒しでの実行案を、正式に発表した形となる。
イギリスは11月にグラスゴーで開催が予定されているCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の議長国を務めているが、主要目標である気温上昇1.5度以内への抑制は危機的な状況にあるとみられている。
実際、同日にエネルギーを専門とする金融シンクタンク「Carbon Tracker」が発表した報告書によれば、中国・インド・インドネシア・日本・ベトナムをはじめとするアジア諸国では石炭火力発電への高い依存が継続。上記5カ国で、世界で新規に計画されている石炭発電所の8割にあたる600基以上の建設が計画されているという。
こうした状況を踏まえ、石炭発電の放棄に向けた各国への呼び掛けは、今回のリリースにも色濃く反映されている。
アン=マリー・トレベリアン大臣は、「石炭は200年前の産業革命の原動力となりましたが、この汚れた燃料をエネルギーのシステムから完全に排除すべく、今こそ抜本的な行動が求められています」などとコメント。
リリースでは、イギリス国内のエネルギーの3分の1強が風力発電で賄われていること、グリーンエネルギーのコストが下がっているためにほとんどの国で石炭火力発電のコストが高くなっていることなどに言及している。
イギリスは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「ネットゼロエミッション」を2050年までに達成することを2019年に法律で定めるなど、脱炭素化の取り組みを率先して進めてきた。
最も炭素消費量が多い化石燃料の一つである石炭発電からの脱却と自然エネルギーへの転換もその一環で、2012年には電力の40%を依存していた石炭発電の割合は2020年には1.8%にまで減少。国内の石炭発電所はすでに3カ所を残すのみとなっている。
詳細
End to coal power brought forward to October 2024
https://www.gov.uk/government/news/end-to-coal-power-brought-forward-to-october-2024
Do Not Revive Coal: Planned Asia coal plants a danger to Paris
https://carbontracker.org/reports/do-not-revive-coal/