工事を開く
– 真壁智治「臨場」から窺う渋谷問題への気付き(第23回)|連載『「みんなの渋谷問題」会議』
渋谷再開発は百年に一度とされる民間主導の巨大都市開発事業で、今後の都市開発への影響は計り知れない。この巨大開発の問題点を広く議論する場として〈みんなの「渋谷問題」会議〉を設置。コア委員に真壁智治・太田佳代子・北山恒の三名が各様に渋谷問題を議論する為の基調論考を提示する。そこからみんなの「渋谷問題」へ。
真壁智治(まかべ・ともはる)
1943年生れ。プロジェクトプランナー。建築・都市を社会に伝える使命のプロジェクトを展開。主な編著書『建築・都市レビュー叢書』(NTT出版)、『応答漂うモダニズム』(左右社)、『臨場渋谷再開発工事現場』(平凡社)など多数。
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工事を開く
これまでも渋谷再開発では前以ての工事情報公開はなく、過半が直前の工事概要のお知らせ、告示対応のレベルであった(少し増しなのがJRの対応)。
開発計画(上位計画)そのものの情報公開もさることながら、日々進行する工事計画もキチンと事前に公に伝えられるべきものだ。
特に、建設よりも解体工事の方が、一層情報が伝わってこないのです。
どの様な手順、工程を踏んで、どの様な解体の姿になるのか、その間にどの様な事態を招くのか、同時にその工事の見所やそこで使用される技術や課題までも示して欲しい。
二〇二七年完成予定まで実に長い期間にわたって工事が日常的に進む。
開発主体はあまりにも「工事」と言う営為が生み出す都市的光景とその日常性について想像力が全くない。
つまり、彼らには自身が劇場型工事の演出者でありアクターだ、と言う認識が全く感じられないのである。劇場型工事とならざるを得ない渋谷再開発工事での自身の役割が自覚されていないことこそが大問題であり、「渋谷問題」として糾弾されるべきではないか。
この程度の工事に対する認識だから、「工事を開き」、情報を伝え、共有化して、都市生活者と共に在る再開発工事を発想することが一切出来ないのは当然であろう。
渋谷再開発の総合アドバイザーである建築家内藤廣は「工事を面白く出来たら良い」という主旨のことを発言していた。
なにもこの発言の真意は、工事をショーアップしろ、と言うことではなく、工事そのものをもっと面白く理解させるべきだ、とするもので在ったはずだ。
その上で、日々の渋谷再開発工事現場からの情報発信の大切さを示唆したものでもあったろう。その指摘を全く欠くものであったら、それは充分に「渋谷問題」の対象になるのである。
(つづく)