第26回「サンベルトのブーミングシティ オースチンの異変(2)―― QOLの劣化とハイテク企業流出の兆し」連載『変わりゆくアメリカからさぐる都市のかたち』

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オースチンから離れつつあるハイテク企業たち

オースチンでは、人口動態以外にも異変が起きています。

オースチンの人口急増の源泉になり、オースチンの「都市の「かたち」」の変貌を牽引したのは、IT系ハイテク企業(Big Tech)の急成長でした。そのハイテク企業が投資戦略の見直しを始めました(Big tech is ghosting downtown Austin. Entrepreneurs are just fine with that, Nov.10, 2023, Inc.)(Texas attracted California techies. Now it’s losing thousands of them, Texas Monthly, April 26, 2024)。

  1. ダウンタウンに2022年11月、66階建ての超高層ビルが完成しました。Big Techのメタが広大なフロアを借り上げて入居するプロジェクトでした。ところがMetaは方針転換し、新築ビルへの転居を止め、既契約分のフロアをサブリースに出しました。
  2. グーグルがダウンタウンにあるオフィスをもっと広いタワービルに移転する計画を進めていました。その計画がなしになりました。
  3. 動画共有アプリのTikTok(ティックトック)も、入居する予定だったダウンタウンのオフィスフロアをサブリースに出しました。

いずれもオースチンでの事業拡張戦略の見直しです。

オラクルが2020年にシリコンバレーからオースチンに本社を移転した時には、地元で大喝采されました。それにテスラが続き、オースチンの郊外にEVsの巨大工場の建設計画を発表しました。

カリフォルニアに強い対抗心を抱くアボット・テキサス知事は、「テキサスこそ、ビジネス、仕事、チャンスに最適の大地である」とSNSで勝利宣言をしました。一方、Los Angeles Timesは、「シリコンバレーのハイテク独壇が終わる。ハイテクの将来はオースチンにある?」という苦渋の記事を掲載しました(Feb. 9, 2022)。

ところがそのオラクルが、今度は本社をナッシュビルに再移転することになりました(2024年4月23日発表)。オースチンの経済界を揺るがす「激震ニュース」になりました。

同じタイミングにテスラが業績不振を理由に、オースチンで2700人規模のレイオフを発表しました。

他のBig Techも、相次ぎオースチンで大型のレイオフに踏み切っています。

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