『がくげいラボ×Talkin’ About  vol.1『場の文化を育む場』を語る』イベントレポート


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2021年5月21日に開催された『がくげいラボ×Talkin’ About  vol.1『場の文化を育む場』を語る』
ホストに山納洋さん(大阪ガス都市魅力研究室長)、ゲストに坂倉杏介さん(東京都市大学准教授)をお招きし、『場の文化を育む場』をテーマにお話しいただいた本イベント。
会場・オンラインともにたくさんの方にご参加いただき、大盛況のうちに終わりました。
時間に収まりきらなかった質問を、お二人にご回答いただきましたので、紹介させていただきます。

【質問1】

自治会が所有する集会所などの既存の拠点を活用して、「芝の家」のようなコミュニティの場を住民主体で市内各所に複数つくっていくという事業を担当しております。
補助金事業で取り組んでおり、立ち上げ期の支援として最大3年間しか交付できないのですが、やはり継続的に事業を続けるための資金がなかなか生み出せないという課題があります。行政からの補助金から自立し、住民主体でコミュニティの場を運営する上で、事業の運営費を獲得するためのアドバイス等あれば、教えていただきたいです。

山納主体的に動こうという住民さんがいて初めて成立する話ですが、空き家を大家さんから固定資産税程度で借りて、カフェ事業などで家賃を賄っているという話が聞いたことがあります。
またコミュニティ農園については、裏技的ですが、生産緑地を宅地に変えると固定資産税がはね上がるので、大家さんが生産緑地のままにして、市民団体がコミュニティ農園として運営している、という話を聞いたことがあります。

坂倉まずはそれぞれの場で持続可能なビジネスモデルを考えることが大事だと思います。集会所を活用するなら経費はそれほどかからないでしょうし、上の山納さんのアドバイスのように工夫の余地はいろいろあるはずです。
むしろ、運営する方のモチベーションが大事で、市に頼まれたからやっている、という意識だと続きません。
「ゆがわらっことつくる多世代の居場所」は、設置数年後から湯河原町の委託を受けるようになりました。はじめは生活困窮家庭の学習支援事業でした。このほか、移住や若者起業支援で役場と連携し、地方創生交付金を活用した事業も行っています。
その拠点が自治体の公的サービスの一翼を担えるように育てていくこと、その過程でどのように予算化可能かを考えるのも行政担当者の重要な役割だと思います。

【質問2】

近隣の方たちがやってきて、昔ながらの多世代混ざり合い方のコミュニティをつくる「ご近所」型と、地域に居場所がなく、様々な生きづらさを抱える人たちが安心していられて混ざり合える「ソーシャル・インクルージョン」型の場づくりがあるのではと思うのですが、特に後者の場づくりにおいて、大事だと思われることが何でしょうか?

山納運営される方の度量、懐の深さだと思っています。居場所を必要としている人は、人付き合いの上手な人とは限りません。
むしろ人付き合いがうまくないからこそ、人とつながれる場を希求しているかも知れません

坂倉まず当事者とのネットワークが大事だと思います。わかりやすい例としては、子ども食堂をつくりたい人はたくさんいますが、実際にそれを切実に必要としている子どもたちにつながっている人は少ない。
当事者と顔の見える関係をつくっていくことが、場づくりの前提として重要だと思います。

【質問3】

以前、子育て中のママ(パパ)向けに、今回のお話でいうと「ケア」の要素が強い場を2年間運営していました。個人事業主として、補助金なども無く、という運営だったのですが、力不足で2年で閉めることになってしまいました。
もちろん諦めてはおらず、借入返済期間は潜伏期間だ!と思いリベンジ案を練り続けています。今は「場(箱)」は持てないけど気持ちは諦めてはいないので出来ることから動いています(子育て支援団体を作って)。
もし板倉さんが箱がない状況で同じこと(芝の家のような場づくり)をやるとしたら、何からやりますか?

山納自分以上にそれが必要だと感じている人を見つける。特に不動産物件を持っている人でそういう気持ちになってくれる人を探してみる。

坂倉背景がまったくわからないのですが、力不足ではなく、誰に対して何を提供するのか、というアプローチの問題だったかもしれません。その場があって泣いて喜ぶのは誰か。その人が泣いて喜ぶのはどんな活動なのか。という視点でリベンジ案を考えるとよいのではないでしょうか。
私も、拠点は特にない、「ご近所イノベータ養成講座」や「おやまちプロジェクト」という活動を行っています。

【質問4】

複数人がかかわる中で、なにかルールを作らず、文化を作るといった話ですが、ルールがないとはいえ、些細な決め事は出てくるものなのかなと思ったりもしています。その場合の決め方、最終決定はどなたが担っていたりするのでしょうか?リーダー的存在は、場づくりにあった方がいいのでしょうか。

山納自分が主催している場では、僕が決めています。

坂倉(私が現場にいた当時は)強いて言えば私でしたが、細かな決めごとは私が決めるというより、なんとなく合意ができていくものなので、それがブレないようその都度確認するというような立ち位置でした。
むしろリーダーが必要とされる局面はもう少し大きな問題で、たとえばどうしても受け入れがたい行動を取る来場者に対しては、リーダーの責任で毅然とした対応をするということが、色々な人の出入りする場では必要になることがあります。

【質問5】

愛知でコミュニティカフェをしています。10年前にコモンカフェの本を持って保健所に通ってワンデーマスターを許可してもらったのが懐かしいです。
このコロナ禍で苦しむ中、普通の商店主がコミュニティマネージャー的な才能があるとお客がお店を支えるケースがあり、これからコミュニティマネジメントはまちづくりを飛び出して、商い道的なもっと一般的なものになる可能性があると思うのですが、このタイミングで何か感じていることはありますか?

山納お客さんたちがそこを「自分たちの場所」だと思っているお店では、そうなっていますね。ただ、店主はただ困っているだけだけれど、お客さんがお店のことを思って何とかしている、そんなお店も一杯あります。「みんなの場所」になっているお店は、特に「荒天」(「晴天」ではない)時に強い、とは言えると思っています。

坂倉とても共感します。地域の小売業は、商品での差別化は難しくなっています。なので、モノやサービスを売るだけではなく、地域とのつながりのきっかけとかネットでは得られない親切とかを提供することが有効になっていくのではないかと思います。
私の周りでは、商売以前に地域の色々な人と地域の仲間としての関係性があることが、結果的に売り上げにつながるという現象が起きているようです(買う側から見てもどこで買っても同じなので、だったら知っている人から買う)。地域で真面目に自分の商売だけに打ち込んでいてはだめで、ぶらぶら遊んでるように見える楽しい活動をしていることもお客さんとのつながりをつくるという意味で必要だということです(笑)。

【質問6】

宮城県の田舎で場づくりを作ろうとしています。都市部と地方では場づくりの違いとかはあったりしますか?

山納コモンカフェは大阪の中心近くにあります。都市には多様な人たちが集まっているので、多少エッジの効いたことをやっていても、それを受け止めてくれる人たちが現れてくれます。ですが、ローカルエリアに場を作ろうという時には、やりたいことをそこに持ち込むだけでは成立しません。 なので、そこにいる人、来てくれる人が何を求めているかを「傾聴する」という姿勢がより必要になると思います。

坂倉物理的には駐車場があることです。心理的には、規模が小さいところほど噂話とか派閥とかの影響を受けやすいので、特定の仲間に偏らない、内輪の場にしないという心がけが大事になるのではないでしょうか。
事前に地域のキーパーソンに「仁義を切っておく」のも大事です。影響力の強い方が、「聞いてない!」と怒るケースも多いので。

以上

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