飯盛義徳 編著 西村浩 ・坂倉杏介・伴英美子・上田洋平著

内容紹介

わいわいコンテナ、芝の家等の実践例から

つながりを紡ぎだし、新たな活動を生み出している「場」をどのようにつくるか。街なかに新風を吹き込んだ「わいわい!!コンテナ」、多世代の交流を生み出した「芝の家」。「ゆがわらっことつくる多世代の居場所」や「ふるさと絵屏風」などの事例から、場づくりのポイントとなるさまざまなデザインを実践者が具体的に解説。

体 裁 A5・216頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2779-2
発行日 2021-07-05
装 丁 美馬智


目次著者紹介はじめにさいごに関連イベント

はじめに

序章 地域づくりにおける場とは何か 飯盛義徳

1 相互作用が生まれる枠組みや空間としての場

2 地域づくりにおける場の事例

3 本書の内容

1章 まちづくりの持続可能性を支える仕掛け 西村浩

1 発明の時代へ――20世紀の手法はもう通用しない

2 岩見沢複合駅舎(北海道)――人を育てる

・計画の始まり
・4代目岩見沢駅舎の意味―街の未来を見据える舞台として
・市民がまちづくりの当事者となる―岩見沢レンガプロジェクト
・駅からまちづくりへ駅建設プロセスにおける市民との協働の意義

3 佐賀市の街なか再生――動機の連鎖をつくる

・“空き”のマネージメント
・動機の連鎖を生む仕掛け
・見えてきた課題―物件化していない空き不動産とプレイヤー不足
・街で育ったプレイヤーが街を変える―マチノシゴトバCOTOCO215からON THE ROOFへ

4 喜多方小田付蔵通り「南町2850プロジェクト」――未来の担い手を育成する教育の重要性

・プロジェクトの始まり
・空き地デザインワークショップ
・まちづくりにおける教育の意義

5 まちづくりに求められる持続性と波及力

2章 都市部のつながりを形成する場づくり 坂倉杏介

1 芝の家―地域をつなぐ!交流の場づくりプロジェクト

・芝の家の風景
・港区の概況と区役所・支所改革
・慶應義塾大学との連携によるコミュニティ事業

2 「誰もがいたいようにいられる」居場所づくり

・芝の家の立ち上げ
・居場所づくりの仕組み・仕掛け
・しつらえのデザイン
・きりもりのデザイン
・くわだてのデザイン
・出来事の連鎖

3 ご近所イノベーション学校というコミュニティのプラットフォーム

・ご近所イノベータ養成講座
・ご近所ラボ新橋
・事業間の相互作用による創発

4 場づくりから地域づくりへ

・地域が人の居場所に
・場づくりを通したソーシャルキャピタルの醸成

3章 多世代の居場所づくりの実践と課題 伴英美子

1 ゆがわらっことつくる多世代の居場所とは

・“多世代の居場所”ある夕方の出来事
・“多世代の居場所”の空間的特徴
・地域共生社会と“多世代の居場所”
・湯河原町の特徴

2 空間づくり――“多世代の居場所”設立のプロセス

・2011年:子どもフォーラム
・2015年:“多世代の居場所”の構想
・2016年:放課後リノベーション
・2016年11月:“多世代の居場所”のオープン~その後

3 場づくり――多世代が安心して過ごすことのできる場づくり

・基本コンセプト「ありのまま」と「斜めの関係」
・コミュニケーションの仕掛け

4 プラットフォームデザイン

・場
・学び
・実践・挑戦

5 事業モデルの特徴

・大学との連携
・湯河原町役場との連携
・運営資金

6 活動実績と効果

・開催回数、来所者数
・“多世代の居場所”への参加と自己肯定感・自己効力感
・“多世代の居場所”が子どもに与える影響
・“多世代の居場所”が大学生に与える影響
・ゆがわらっこ大学の利用者満足

7 評価と展望

・“多世代の居場所”プロジェクトの評価
・今後の展望――未完の場として

4章 ふるさと絵屏風で生みだす心の居場所 上田洋平

1 ふるさと絵屏風とは

・ある語り部の死
・ふるさと絵屏風
・百聞を一見にした「絵画ドラマ」
・地域の健忘症
・つくって・つかって・そだてる

2 五感体験マンダラをつくる

・心象図法
・五感体験アンケート
・あなたの「身みしき識」を聞かせてほしい
・五感体験マンダラ
・記憶の変奏曲
・地域の環世界

3 聞き取りから語り部さがし

・聞き取り
・語り部さがし
・くらしと歴史・文化の斜交場
・過去をそだてて未来をつくる

4 ふるさと絵屏風の制作

・絵師の条件
・構想を練る
・エピソードを取捨選択する
・心の遠近法に従う
・時間の遠近法をあらわす
・下絵を描く
・下絵の確認会
・どこで制作するか
・本図の制作
・完成披露

5 ふるさと絵屏風のつかいかた・そだてかた

・絵解き
・絵解き再現
・郷土学習からエコツアーまで

6 ふるさと絵屏風のはたらき

・無事の文化の発見――なんにもないを続けてきた営みのすごさ
・ターミナルケアとして
・歴史のなかに居場所を得る
・新たなる在所を求めて

終章 創発を生むプラットフォームと地域づくり 飯盛義徳

1 場づくりのポイント

・誰でも出入りしやすい仕組みづくり
・多様な人々が気軽に参加できるプログラムの提供
・資源持ち寄りによる運営

2 地域づくりへの広がり

さいごに

【編著者】

飯盛 義徳

慶應義塾大学総合政策学部教授。博士(経営学)。特定活動非営利法人鳳雛塾理事長
1964年佐賀市生まれ。慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程単位取得退学。松下電器産業株式会社勤務などを経て、2014年慶應義塾大学総合政策学部教授。2015年SFC研究所所長、2017年総合政策学部学部長補佐などを務めた。専門は、プラットフォームデザイン、地域づくり、ファミリービジネスマネジメントなど。総務省、国土交通省などの委員を務める。主著に『地域づくりのプラットフォーム』(学芸出版社)、『社会イノベータ』(慶應義塾大学出版会)など多数。
執筆分担:序章、終章

【著者】

西村 浩

建築家/クリエイティブディレクター
1967年佐賀市生まれ。東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了後、1999年ワークヴィジョンズ一級建築士事務所(東京都品川区)を設立し、2014年同社佐賀オフィス開設。建築・リノベーション・土木デザインに加えて、各地の都市再生戦略の立案にも取り組む。2020年にはベーグル専門店「MOMs’ Bagel」の事業主となり、マイクロデベロッパーとしても活動中。
執筆分担:1章

坂倉 杏介

東京都市大学都市生活学部准教授。博士(政策・メディア)。三田の家LLP代表
1972年生まれ。東京都世田谷区出身。専門はコミュニティマネジメント。多様な主体の相互作用によってつながりと活動が生まれる「協働プラットフォーム」という視点で地域や組織のコミュニティ形成手法を実践的に研究。共著に『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』(2020年、BNN出版)、『コミュニティマネジメント』(中央経済社、2020年)など。
執筆分担:2章

伴 英美子

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師
1975年カナダ生まれ。専門は産業組織心理学。1998年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2000年同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。在宅介護サービス事業者勤務。2008年同大学院後期博士課程修了。2008年より介護療養型医療施設勤務。傍ら、介護従事者の防災やメンタルヘルス研究および教材開発に取り組む。2016年ゆがわらっことつくる多世代の居場所開設に携わる。2018年一般社団法人ユガラボ理事に就任。
執筆分担:3章

上田 洋平

滋賀県立大学地域共生センター講師
1976年京都府生まれ。専門は地域文化学・地域学。1999年滋賀県立大学人間文化学部地域文化学科卒業。2001年同大学大学院修了。2004年同大学院博士後期課程単位取得退学。湖東町歴史民俗資料館嘱託職員、滋賀県立大学地域共生センター助教などを経て現職。「ふるさと絵屏風」によるまちづくりの手法を開発し各地での実践を指導する一方、地域と連携した人材育成や「地域共育」プログラムの開発に取り組む。
執筆分担:4章

地域づくりに関心があり、一歩踏み出してみようと思ったものの、何から手をつけていいのかよく分からない。各地を訪問するとこのような声をよく耳にする。本書は、まさにこの思いに応えるための実践の書を目指している。

本書では、各地の「場づくり」の実践事例をとおして、地域づくりに資する場をいかに構築するか、そのための大切なポイントについて議論する。地域づくりは、まず、場づくりから始まる。これが本書のメッセージである。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス飯盛義徳研究室では、各地で、地域の人々と一緒に、地域の課題解決のプロジェクトを実践している。実際、どのプロジェクトも、最初に行うことは、ハード、ソフトを問わず、地域の多様な人々が交流したり、意見交換できる場づくりなのである。

本書で取り上げる事例は、中心市街地における人の流れを取り戻している「わいわい!! コンテナ」、顔見知りを増やして都心のコミュニティ再生を果たしている「芝の家」、子どもたちから高齢者までの多世代の人々の交流をもたらしている「ゆがわらっことつくる多世代の居場所」、地域の思い出を絵屏風にして学び合いを生みだす「ふるさと絵屏風」とハード、ソフトの両面にわたっている。いずれも私自身が訪問したり、活動に参加したりしたことがあるものばかりだ。

他書と一線を画しているところは、単に事例紹介にとどまることなく、それぞれの場をつくり、運営しているリーダーたちの思いや息づかい、活動が広がっていくダイナミックなプロセスにふれることができることだろう。そのため、執筆者の理念や意図を正しく伝えるために、各章の表記や用語の統一はあえて最小限にとどめていることを理解いただきたい。さらに、それぞれの事例を総合して、地域づくりにつながる効果的な場を構築するための方策について試論を展開していることも特徴の一つにあげられるだろう。

各章の執筆者である西村浩氏、坂倉杏介氏、伴英美子氏、上田洋平氏とは、日頃から交流があり、シンポジウムや授業などで一緒に登壇することも多い。それぞれ分野は違うものの、話をうかがうたびに、すべての取り組みには共通のポイントが確かにあり、それは場づくりをするうえでの至言だと思いいたった。ただ、これらの取り組みをそのままコピーしただけで巧くいくわけではないだろう。本書で述べられたことの本質を洞察して、地域の状況や自らの資源などに配慮しながら試行錯誤を繰り返していくことできっと道は開けてくるはずだ。

本書で取り上げているどの取り組みも最初の一歩はごく小さなもの。場は、つくったら終わりというものではなく、さまざまな人々と一緒に少しずつつくりあげていくものなのだろう。本書が地域づくりの「一隅を照らす」ような活動につながることを心から願っている。

2021年4月 飯盛義徳

本書で紹介した取り組みには、もう一つ共通のポイントがある。それは、どの場も笑い声や歓声が絶えないことだ。わいわい!! コンテナではいつも子どもたちの元気な声が響き渡っている。芝の家やゆがわらっことつくる多世代交流の居場所では、入口のドアを開けた途端、利用者たちの笑い声に包まれる。ふるさと絵屏風では、地域の人々の思い出がつまった絵屏風の前で楽しそうに昔話に花が咲いている。もし機会があれば、実際に足を運んで場の雰囲気を体感いただきたい。

本文でもふれたように、場における楽しさは、参加を促す強力なインセンティブになる。あったかふれあいセンターも参加して楽しいからこそ人々が次々と訪れる。また、当事者意識を持つようになるのも楽しいからという要素が大きい。

2018年、飯盛義徳研究会で芝の家を訪問したときのこと。学生メンバーは、けん玉、お手玉、おはじきなどのグループに分かれて昔遊びに興じていた。
このとき、コーディネーターは、何かを無理強いすることは決してなく、自然と各グループの学生たちの側に寄り添いながら、学生が「これはどうやって使うのかな」などと言葉を発したときだけ、「このように使うのですよ」とだけ伝えて、あとは笑顔で見守っていた。場の全体に目を配りながら、各人がやりたいことを最大限に引き出す工夫がなされていると実感した。まさに、「木も見て森も見る」姿勢だ。このように、効果的な場をつくるためには、場の設計者、運営者をはじめ、コーディネーターとなるスタッフなどの人材の確保、育成をいかに果たすかがこれからの課題となる。

何度も繰り返すように、場は一足飛びにできるものではない。今までの取り組みを洞観すると、①今までつながっていなかったような人や組織がつながるようになる、②参加者間で、何らかの資源の持ち寄り、シェア、活用が実現する、③これらが常に行われるような仕組みづくりをする、というプロセスを辿る。これらの流れを巧く創造していくこともコーディネーターに求められる力の一つだろう。これらを実現する具体的な方策については、今後の研究課題としたい。

本書を上梓するにあたっては、学芸出版社の前田裕資氏に内容、構成などで貴重なご意見をいただいた。心から感謝したい。地域づくりにおける場づくりの大切について理解してくださり、教育や研究、学務などで執筆が遅れがちになるといろいろな叱咤激励をいただいた。また、執筆者間のさまざまな調整を取り持っていただき、何とか出版にたどり着くことができて安堵している。

さらに、本書は、慶應義塾大学SFC研究所みらいのまちをつくる・ラボでの議論が大きなヒントになった。メンバーの先生方をはじめ、いつも深い理解、支援をいただいている品川区大井町の方々に感佩したい。

なお、ちょうどこの原稿を執筆しているときに、ゆがわらっことつくる多世代の居場所(一般社団法人 ユガラボ)は、第14回「かながわ子ども・子育て支援大賞」を受賞するという栄誉に浴した。紹介したすべての取り組みは、現在も常に進化を続けており、場づくり、地域づくりに完成はない。私たちもまた次のステップに踏み出して、場から地域を元気にする流れを築き上げたいと念願している。

2021年春
花の雲から垣間見る富士山を愛でながら
執筆者を代表して 飯盛義徳

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