コロナ禍による観光縮小の損失は2020~21年で計4兆ドルを超える可能性 国連貿易開発会議らがレポート発表

国連貿易開発会議(UNCTAD)は6月30日、国連世界観光機関(UNWTO)と共同で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが観光に与えた打撃を試算した報告書 “COVID-19 AND TOURISM AN UPDATE” を発表した。

これによれば、2020年と21年で、世界のGDPは合わせて4兆ドル(約442兆円)以上の損失を被る可能性があるという。2020年に2.4兆ドル、21年に1.7兆ドル~2.4兆ドルとそれぞれ推定されている。
この推定額は、観光業への直接的な影響に加え、関連する他の産業セクターへの波及効果を踏まえ、2019年の水準と比較して算出されているもの。試算は国際観光産業の縮小による影響のみをパラメータとしたシミュレーションに基づくものであるため、観光業を念頭に置いた経済刺激策の効果は加味されていない。

UNWTOによれば、専門家の見解として、国際観光客の到着数などがパンデミック以前の水準に戻るのは2023年以降になると予測。
回復までが長引く障壁として、旅行に対する規制、ウイルスの封じ込めの遅れ、旅行者からの信頼の低さ、経済環境の悪さを挙げている。

2021年の損失額を算出するにあたり、UNWTOはレポートで3つのシナリオを提示している。シナリオ1は国際観光客の到着数が75%減少すると予測したもの、同2は同じく63%減少すると予測したもの、そして同3は、ワクチン接種率の比較的低い国で75%、比較的高い国(主に先進国と一部の経済的に豊かな小国)で37%減少すると予測したもの。

このうち最も悲観的なシナリオ1では、世界の観光客収入が9,480億ドル(約104兆円)減少し、実質GDPが2.4兆ドルの損失となることが推定されている。

熟練度の低い労働者の失業など、観光部門の「バックワード・リンケージ(後方連関性:他部門への波及効果)」のありようによって、国・地域ごとに損失の比率が異なってくるという。

例えば最も打撃が大きいとみられているトルコでは、観光業の落ち込みだけで実質GDPは9.1%の損失が生じると推定。
直接的な観光需要の落ち込みは330億ドルだが、食品・飲料・小売業・通信・輸送といった関連部門の損失で、総額930億ドル程度の生産高の落ち込みに陥る可能性があるとみられている。

なおUNCTADはパンデミック当初の2020年7月時点で、国際観光の低迷により世界経済の被る影響が最悪で3.3兆ドルに上るとする試算を発表しており、今回の発表は当初の予測では楽観的で、見通しがさらに悪化していることを示すものになっている。

Source: UNCTAD based on GTAP simulation.

地域別にみた観光客の減少によるGDP損失割合の推定値(単位:%|Source: UNCTAD based on GTAP simulation.)

詳細

Global economy could lose over $4 trillion due to COVID-19 impact on tourism

https://unctad.org/news/global-economy-could-lose-over-4-trillion-due-covid-19-impact-tourism

COVID-19 AND TOURISM AN UPDATE

https://unctad.org/system/files/official-document/ditcinf2021d3_en_0.pdf