クラブやライブハウスを「文化施設」に分類する法案がドイツで可決 立地確保時の負担軽減に期待

ドイツ連邦議会は7日、クラブや音楽のライブハウスを「文化施設」(cultural institutions)として分類することを定めた法案を可決した。
ドイツにおけるクラブハウスの位置付けはこれまで、ゲームセンターや場外馬券場、性風俗店などと同類の「娯楽施設」(entertainment venues)だった。

法案の可決により、クラブやライブハウスは、オペラハウスやコンサートホール、劇場などと同類の位置付けとなるため、都市開発や投資家からの影響を受けにくくなることが期待されている。

2018年の統計では、クラブの利用者による消費額が年間で15億ユーロ近くに上っているほか、ベルリンだけでも9千人ほどが直接的な職に就いており、間接的な雇用を含めるとさらに数千人が従事していることがわかっている。

ドイツ政府はこれまでにも、クラブを筆頭とするいわゆる「ナイトタイムエコノミー」の経済・雇用面の価値を認める形で、防音環境の整備やトラブル対処スタッフの新規雇用に対して計100万ユーロ規模の助成を2018年に行うなど、地域生活との共存を促す試みには取り組んできていた。

今回の法案は、超党派で「クラブカルチャーとナイトライフのための議員フォーラム」を結成していた、緑の党(the Greens)、左翼党(the Left)、自由民主党(the Free Democratic Party)、ドイツ社会民主党(the Social Democratic Party of Germany)、ドイツキリスト教民主同盟(the CDU/CSU)らの議員によって起案されたもの。

法案のもとになった提案文では、1980年代後半から発展してきたドイツのクラブ文化について、国の「文化的多様性」を示すものであり、観光客や若者が集まることで地域社会にとって経済的に重要な役割を果たしているほか、都市部だけでなく郊外や地方においても、廃れた地域の再開発や新たな建築文化の創出に寄与していると主張。

一方で、近年の賃料の高騰により移転を余儀なくされるクラブが増えており、その際に計画法や不発弾管理法といった法令の規定が障壁になる問題を指摘。地方自治体に対してはクラブの立地を支援・確保するよう求め、連邦政府に対しては文化目的の施設として定義するよう建物使用条例を改正するよう求めていた。

今回の決定を受けて発表された声明で、ドイツの音楽施設による連合組織 “LiveKomm” のCEOであるPamela Schobeß氏は「本日の決定により、議会はこの国の社会に対して、強く、そしてもっと早くに送られるべきだったシグナルを発しています。ミュージック・クラブは文化施設であり、文化と経済という暮らしの両面を統合したものとして、地域のアイデンティティを作り上げているのです。」とコメント。

またベルリン・クラブ・コミッションの広報担当者であるLutz Leichsenring氏は、「今回の決定は、ナイトタイムを支持する人々によって、ベルリンやドイツ全土で上げられてきた20年以上の声が実った結果です。すばらしい決断であり、世界に先駆けた例となることを願っています。」とコメントしている。

日本では宇多田ヒカルさんがTwitterで喜びを表明している。

詳細

Clubs are now cultural institutions in Germany

https://www.dazeddigital.com/life-culture/article/52706/1/clubs-are-now-cultural-institutions-in-germany

Berlin officially recognizes clubs as cultural institutions

https://dancingastronaut.com/2021/05/berlin-recognizes-clubs-as-cultural-institutions/

Pressemitteilung des Forums Clubkultur und Nachtleben

https://www.livemusikkommission.de/pressemitteilung-des-forums-clubkultur-und-nachtleben/

Berlin clubs brought city €1.5 billion in 2018: study

https://www.thelocal.de/20190213/new-research-highlights-the-economic-value-of-berlins-nightlife-and-why-it-might-be-under-threat/


Cover Photo by Antoine Julien on Unsplash

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公開日:2021/05/12/最終更新日:2021/05/14
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