【受付終了】シェアをめぐる新たな問い|「分人主義」から「所有」を思考する

主催 シティラボ
※詳細は主催団体等にお問い合わせください。
  • 日時:2022年3月9日(水)19:00〜20:30(18:55開場)
  • 場所:オンライン
  • 参加費:
    書籍+SDGsまちづくりブックレットPDF付きチケット ¥2,600
    SDGsまちづくりブックレットPDF付きチケット ¥1,200
    一般チケット ¥900
    学生チケット ¥500
  • 詳細・申し込み:
    https://citylabtokyo-bunjin.peatix.com/

分人主義ってなんだろう?

まちづくりの現場で、人々を常に困らせてきた問題の1つとして、土地や建物の「所有」の存在があげられるのではないでしょうか。その不動産を必要としている人と所有している人が一致しておらず、所有者から譲ってもらうにも使わせてもらうにも様々な問題が生じて話はちっとも前に進まない。そんな状況に立たされる度に、そもそも所有って何なんだろう?と考えさせられます…。かつては問題に対処するために設定された様々なルールが、こんどは私達をがんじがらめに縛ってしまっているようです。

こうした現代の課題に対し、新たな視点を投ずるのが「分人主義」という考え方です。分人主義とは、人を分割不可能な存在―個人(Individual)としてみなすのではなく、分割可能な存在―分人(Dividual)としてみなす考え方です。これはどういうことでしょうか。分人主義とは、人は1人では生きていけず、周りの人やものなど、あらゆる存在と関係することで生きている、つまり、人の存在はあらゆる存在との「関係の束」である、と考える思想のことです。周りの環境が変われば自分も変わるし、そんな自分もまた誰かの存在を作っていると考えると、たしかにそうかも、と思えますよね。

分人主義の立場から不動産を考えてみると、土地や建物も私を構成する一要素であるし、家族をはじめその土地に関係するあらゆる人の構成要素でもあります。だから、そのあらゆる関係を断ち切って、誰か特定の人だけが土地を「所有する」という考え方そのものが根本的にずれている気がしてくるのです。空間はみんなのもの、と考えられるようになると、想像できるのはシェアの世界です。実際に、スペースマーケットやairbnb、ADDressのように、空間をシェアするサービスが次々に生まれていますよね。しかしながら、これらのサービスは消費形態に大きな変化をもたらしているものの、人と土地の関係は所有するものとされるものであるという前提に疑いを向けるには至っていません。

本イベントでは、シェアリングエコノミーの先にあるかもしれない世界を想像してみたいと思います。分人主義の視点に立って考えることで、人の存在とそれに関係するあらゆる存在との関係性を見直すことができないでしょうか?ゲストに書籍『住まいから問うシェアの未来』で編著を務めた東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の岡部明子氏、そして、書籍『知的所有権の人類学ー現代インドの生物資源をめぐる科学と在来知』の著者であり、論文「人類学における「分人」概念の展開」の筆者である広島大学大学院人間社会科学研究科講師の中空萌氏をお招きし、対談していただきます。イベント前半に建築行為やまちづくりの現場で起きている所有をめぐる課題、そして「分人」という概念の整理を行ったうえで、後半はシェアが成熟した先に来る新たな日常の姿を議論を通して想像してみたいと思います。

登壇者

岡部 明子(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)

博士(環境学)2005年。1985年、東京大学工学部建築学科卒業後、磯崎新アトリエ(バルセロナ)に勤務、1995年まで、バルセロナに滞在し建築などのデザインを手がける。2004年より千葉大学助教授などを経て、2015年より現職。著書に、『住まいから問うシェアの未来』(編著、学芸出版社、2021)『高密度化するメガシティ』(編著、東京大学出版会、2017)、『バルセロナ』(中公新書、2010)、『サステイナブルシティ-EUの地域・環境戦略』(学芸出版社、2003)、『ユーロアーキテクツ』(学芸出版社、1998)、ほか。

中空 萌(広島大学大学院人間社会科学研究科 専任講師)

東京大学大学院修了、博士(学術)。専門は文化人類学。インドの山岳州に2年間住み込み、現地の伝統医療に「知的所有権」という考え方が持ち込まれたときに何が起こるのか、そしてそもそも知識の所有とはなにか?について考えてきた。文化人類学的なフィールドワークをとおして、「所有」あるいは所有する「人」について、人以外の多様な存在を含み込んだ、新しい思想を生み出すことに関心がある。主著『知的所有権の人類学』(世界思想社、2019年)で第47回澁澤賞受賞。