[レポート]フィンランドの最新サウナ「Loÿly/ロウリュ」に行ってきました!

執筆:西村祐子/ゲストハウスプレス編集長・あたらしい旅の案内人
旅は人生のエッセンス。旅するように生きるをモットーに、日本の個性豊かで素敵なゲストハウスを紹介するメディア「ゲストハウスプレス」を主宰するほか、旅人ワンダラーユウコとして自身の経験をベースにした旅情報をブログ「Live a good life」で発信中。
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はじめまして!西村祐子です。ゲストハウスプレスというメディアの編集長をしています。最近、日本国内にとどまらず、世界各国のゲストハウス・ホステル事情を探るべく、LCCなどを駆使して旅取材を続けています。

今回、たまたま決まっていたフィンランドはヘルシンキ行き。フィンランドがサウナの聖地であるという情報は耳にしていましたが、日本ではさほどサウナ好きではない私(温泉と銭湯はかなりマニアに攻めているのですが)。でも以前お世話になった学芸出版社の編集者、岩切さんが偶然ヘルシンキのサウナについて「行ってみたい!」と呟いていたのを見て、「わたし来週行きますけど、レポートしましょうか?」とお声がけし、この記事企画が実現しました。

訪問したのはヘルシンキ市内にあるオシャレ公衆サウナ「Loÿly(ロウリュ)」。控え目に言って「めちゃ楽しかった!」です。どんな様子だったか早速ご紹介していきましょう!

●フィンランドのサウナって?

そもそも「サウナ」という言葉自体、フィンランドからの外来語ってご存知でしたか? 人口540万人の国に330万ものサウナが存在するほど、サウナ文化はフィンランドに深く根付いています。冬が寒い国なので、サウナにじっくり入って暖まり、湖のそばに建てられたサウナ小屋から水風呂の代わりにそのままドボンと雪景色の湖の水に飛び込むこともよくあること!?なのだとか。

ただし日本の銭湯と同様、昔は公衆サウナと呼ばれる施設に通うのが一般的でしたが、最近は自宅にサウナを持つ家も増え、公衆サウナの数はどんどんと減ってきています。

●2016年にオープンしたスタイリッシュなサウナ、Löyly(ロウリュ)

そんな流れのなか、ここ数年は新しいタイプの公共サウナが少しずつ増えてきています。今回ご紹介する「Löyly(ロウリュ)」は、個人化が進む都市環境を考慮しながら、共同体(コミュニティ)の重要性に着目し、ヘルシンキ市が2016年にオープンさせた公衆サウナなのです。

設計したのは、フィンランドを拠点とする気鋭の建築事務所Avanto Architects。ヘルシンキの沿岸を整備する公園計画のひとつとして建てられました。そのスタイリッシュな外観や、水着着用の男女混合サウナで外国人にも入りやすいように構造と動線を設計していることから、国内外で注目度が高いプロジェクトのひとつとなっています。

なお、「LÖYLY(ロウリュ)」という名前は、フィンランド語でサウナの熱された石に水をかけたときに出る蒸気(スチーム)の意味。

●事前の予約は必須!まずはオンラインで日時を確保

さて、ヘルシンキに到着し、市内のホステルからいざロウリュへ!と意気込んだものの、調べてみると、営業時間が変則的なことが判明。平日は夕方以降しか営業していない日もあり、混むことも多いので予約しておいたほうがよいとの情報も。

月曜日ー水曜日は16時~22時まで

木曜日ー土曜日は13時~22時まで

土曜日は朝7時半~10時までの早朝サウナもあり

日曜日は13時~21時

となっています。予約はオンラインですべて完結、フィンランド語と英語に対応していました。料金は2時間で19€ 、30分毎に予約時間と人数を入力し、事前決済までスムーズに行うことができました。(ただし時間変更など細かいことは電話か現地で対応)

施設はヘルシンキ市内中心部から2kmほど。歩くと30分程度、ロウリュの目の前に停車する市バスも時間によりますが20分に1本程度の頻度で走っています。

●ロウリュ到着!海辺を楽しむランドスケープ

訪問当日、まだ明るい夕方の時間に予約を入れていたので、散歩がてら歩いて現地へ向かいました。遠くからでも特徴的な建物がよく見えます。よく見ると既にサウナから海へ飛び込んでいる人も!

入口は一ヶ所、レストランのエントランスと同じ中央のガラス扉から入場します。行くまでは日本のスーパー銭湯のような大規模施設を想像していたのですが、行ってみると全く違いました。建物上部へも階段状になった外側から上ることができ、海に面したこの施設の雰囲気を存分に楽しむことができるようになっています。公園に付属しているオシャレなレストランの雰囲気で、実際にサウナの専有面積は全体の約3割ほどのようです。

受付手前のロッカーでコートなど上着をハンガーラックにかけ、靴を脱いで更衣室へ。ロッカーの数も20程度でしょうか、サウナが2種類(貸切できるプライベートサウナが別途ひとつ)あり、その中も10人も入れば満員になってしまう大きさです。なるほど、この大きさでは「予約必須」というのも理解できます。

このサウナの特徴は、水着を着用して、男女混合でサウナを楽しめるところ。フィンランドのサウナでは、男女別で裸で入ることが一般的だとか。このあたりは、欧米のジャグジー文化を踏襲しているのか、「外国人も含め多くの人にサウナを楽しんでもらいたい」という意図を感じます。

シャワーブースを抜けてサウナエリアに入ると、そこで見かけたのはなんと暖炉!みなさん暖炉のまわりでサウナを出たあとのんびりとくつろいでいます。そこでなんとビールやワインといったアルコール類を飲んでいる人たちも発見!受付横で低濃度のアルコール類も販売しているようです。体質の違いもあるのでしょうが、日本ではサウナにアルコールは厳禁なので、かなり驚きました。

●いよいよサウナ内部へ!

誰でも利用できるサウナは2つ。一つは一般家庭にも普及している電気サウナ、もうひとつが薪を利用したサウナ。階段状になったサウナ内は上のほうが温度が高くなっています。全員専用のサウナマットを敷いて、そこに座って温まります。

どちらのサウナも15人も入ればいっぱいになる大きさ。予約制で最大入場人数を制限しているため、サウナに入れないということはありませんが、狭い空間にかなりぎゅうぎゅうと密着して入ることになります。

利用しているのは、私のような初めてここを利用する外国人(英語を話していたり、妙にはしゃいでいたりする人)も多いようしたが、常連と思われる人もいました。時折、慣れた人が窯の上の扉を開け、「水かけていい?」と声をかけます。そう、店名にもある「ロウリュ(熱い石に水をかけることで蒸気を起こす)」を行うため。

バケツに水を汲んだり、柄杓で石に水をかけたりするのはサウナの利用者の自由。そこに居合わせた人の中で、サウナの室温を上げたいと思った人が自主的にそれらを行っていました。狭くて熱い室内で、ロウリュのために知らない人同士声をかけあうことで、なんとなくその場の雰囲気が生成されていきます。

古くからの伝統様式である薪サウナのほうは、意図的なのか、電気式のサウナ部屋よりもさらに暗く密集した雰囲気に包まれていました。私が入った際は、ぎゅうぎゅうの屋内なのに誰も話さず、とても静か。もちろんテレビはおろか音楽もかかっていません。

「フィンランドのサウナは瞑想時間のようなものだ」と聞いたのを思い出します。パチパチと薪が焚かれる音が時々聞こえ、ロウリュをした後一気に上昇する室内の温度と熱気に耐える。誰も一言も話さないのにサウナ室内にいる全員がその経験を共有する。時計などもないので、偶発的なサウナへの出入りがその一体感を打ち破ることになるのですが、なんとなく不思議な一体感がある時間をその日わたしは数回ほど体験したのでした。

●水温8℃のバルト海に浸かってみた

電気式のサウナ室や休憩エリアからは組木とガラスが組み合わさった壁があり、その向こうには、バルト海をすぐそばに見ることができます。

フィンランドではサウナは湖のそばに建てられることが多く、水風呂の代わりにそこから冷たい水に飛び込む伝統があるそうです。その伝統に則ってか、ここではサウナから外に出て、水着でバルト海の海に入ることもできます。

冬場は雪が積もり、海水も半分凍ることがあるというヘルシンキですが、私が訪れた秋口はまだ水温はそこまで下がっていません。とはいえ、近くのボードに書かれていた水温は8℃。日本のプールの水温が30℃弱、銭湯やサウナで見かける水風呂の温度が16〜18℃程度ですから、それなりに冷たそうです。

でもここまで来たらやらないわけにはいかない!と、サウナの中で「もう限界ぎりぎり!」となるまで温まり、その勢いで外へと飛び出しました。そのまま階段をおりて海へドボン。やはり冷たいので泳ぐほどには中にいられませんでしたが、10秒くらいは気持ちいいと感じた時間も。きっと本気のサウナー(サウナ好きさん)にはこの温度差はたまらないのだろうなと思いつつ、二度ほど海に入って大満足でした。

異国でサウナに入り、さらに冷たい海に浸かるという新鮮な体験は、こりゃ外国人にサウナ文化を知ってもらうためには最高の入口になる、と確信しました。

館内は、照明の輝度が落とされていて、より落ち着いた雰囲気を醸し出しています。休憩時も暖炉の炎を眺めながら、オシャレなワイングラスで水を飲んだり、スマホで写真を撮ったりしていると(禁止とは言われていませんでした。マナーの範囲でということのよう)2時間の予約時間はあっという間。夜の営業だからか、サウナ内に子どもの姿もなく、公共施設とは思えない高級な大人のリゾート感が溢れています。

●サウナから出たらオリジナルクラフトビールで乾杯!

サウナから出たあとも、お楽しみはたくさんありました。

着替えを済ませ、サウナを出ると隣にあるのはバーレストラン。レストランは予約で混雑していることも多く、食事の価格帯も少々高級路線なのですが、バーはキャッシュオン制。サウナ後にふらりと一人で立ち寄っても全く問題ない雰囲気です。メニューを見るとロウリュのオリジナルクラフトビールを発見。

サウナ後の火照ったからだをクラフトビールでクールダウンなんて、素晴らしすぎです。夏場は外のデッキでもシーサイドバースペースがあるようで、半日くらいずっとここにいられる場のデザインがされていると感じました。

●サウナ文化に触れるきっかけ、第一歩としては最高の場所だった

サウナ2時間の予約時間をフルに使い、前後の滞在も存分に楽しんだロウリュ。

わたしもそのうちの1人なのですが、外国人観光客が多く、フィンランドのディープな裸のつきあい方を知ったとは言えませんが、狭い室内で熱い石に水をかける行為で声を掛け合うことで小さなコミュニケーションが生まれ、そこで不思議な連帯感が生まれる時間を体感することができました。

ここロウリュはフィンランドのサウナ文化に触れるきっかけ、第一歩としては最高の場所。日本とは違うちょっぴりラグジュアリーで自由闊達な雰囲気、なんといってもバルト海に浸かる体験!ができたのは素晴らしかったです。

ちなみに、わたしがこのサウナに行くと知ったフィンランド通の友人が「あなたならもっとこんなディープなサウナがあるよ」とおすすめのローカルサウナをいくつか教えてくれました。一度知ると、今度はもっと濃い場所にも行ってみたい!と興味がますます湧きました。

公衆サウナの国フィンランド』がもうすぐ発刊されるとのこと。読んだらますます奥深いフィンランドサウナの世界にどっぷりはまってしまいそうです。