【受付終了】ラーニング・ツアー もう一つの世界を想像するための「世界の見方」: 人類学・エスノグラフィと工藝
主催 | 一般社団法人パースペクティブ |
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※詳細は主催団体等にお問い合わせください。 |
- 日時:2024年3月15日〜18日(受付期限:3月2日)
- 会場:Fab Village Keihoku / ファブビレッジ京北 京都市右京区京北上弓削町弾正27
- 参加費:70,000円/学割40,000円
- 詳細・申込:https://ethnography-perspective-2.peatix.com/
内容
このラーニング・ツアーは、エスノグラフィの手法をベースに、実践的なリサーチ技術・分析技術を学ぶことで、固定観念から離れ、様々なモノや生命が絡み合う複雑な世界を捉え直すことを促す、実践的プログラムです。
一般社団法人パースペクティブは、「モノづくりのサイクルを自然のサイクルに近づける」という理念のもと、京都の中山間地域「京北」で活動しています。私たちは、「工藝」というモノづくりのあり方や、京北のような地域社会そのものが、近代の経済や社会が置き去りにしてきたものへのまなざしを回復していく重要な鍵になるのではないか、という仮説を提示してきました。
そして大阪大学人類学研究室の森田敦郎さんと協働し、人の暮らしに繋がる生産活動(広い意味での「作ること」)とそれを支える技術やインフラ、そしてそれらを取り巻く自然がどのように相互に繋がっているかを探索してきました。
その協働の中で出会ったのが、人類学の手法であるエスノグラフィの手法でした。エスノグラフィは、既存の見方を離れ、人やモノが織りなす関係として世界を捉え直す、人類学の手法です。
私たちはいま、気候変動をはじめとする環境危機の中で、既存の枠組みでは対処できなくなった社会に身を置いています。その中で多くの人が、この世界をイチから捉え直し、人間中心の姿勢から脱却する必要があると感じ始めているのではないでしょうか。
このツアーでは、エスノグラフィの手法をベースに、俯瞰的なリサーチ技術と、概念的な分析技術を学びます。この手法を身につけることで、実社会の現実から立ち現れるリアリティをもった仮説やストーリー(コンセプト)を描くことができるようになります。そのように言語化されたコンセプトは多くの人の潜在意識と結びつき、共感を繋いでいくことができるようになるでしょう。
この講座ではまた、人間中心の姿勢から脱却するために、近代化の中で激しく対立するようになってきた生産システムと生態系を再び結び合わせ、暮らし・テクノロジー・産業を結びつけて考える「インフラストラクチャー」の視点を学ぶこともできます。
ラーニング・ツアーのフィールドとなる京北は、平安京以前より木材供給という側面で、京の都という都市の形成に関わってきた自然資源の供給地です。その地を「インフラストラクチャー」の視点を通して探索し、モノづくりと自然との連関を紡ぐパースペクティブ社の活動と重ねることで、暮らしと産業、環境がひとつづきのものとして立ち現れます。それはその後のご自身のフィールドと、その上での暮らしや活動を考える上で、リアリティのある体験的な学びとなるでしょう。
皆様のご参加をお待ちしています。
こんな人に向いています
⚪︎エスノグラフィに関心のある方
⚪︎デザインリサーチに関心のある方
⚪︎トランジションデザインに関心のある方
⚪︎持続的な社会のあり方に関心のある方
⚪︎暮らしと産業、環境とのつながりが気になる方
⚪︎新たな社会のヒントを探している方
⚪︎消費主義、経済成長や産業主義の風潮に違和感を感じている方
⚪︎地域、もしくは職域・業界において変化を起こそうとしている方
⚪︎ビジネスや、コミュニティを通して変化を起こそうとしている方
⚪︎人間中心の姿勢から脱却するデザイン姿勢を学びたいと考えるデザイナーの方
講師プロフィール
高室幸子
工藝文化コーディネーター/一社)パースペクティブ共同代表。モノづくりのサイクルが自然のサイクルとシンクロする世界を目指し、そのようなモノづくりのあり方を『工藝の森』として提唱する。講義・講演、教育プログラムやツアーを企画する他、パースペクティブとしては、『工藝の森』の概念のもと、モノづくり材料を植え育て、森の生態系から人と森との関係性を学ぶフィールドとしての森と、「つくる」ことを通して環境とのつながりを学ぶ市民工房『ファブビレッジ京北』を運営する。
森田敦郎
人類学者。テクノロジー・社会・環境の関係をエスノグラフィの手法を通して研究してきた。とくに、日々の暮らしが環境・気候危機といかに繋がっているのかを、物流、エネルギー、生産などのインフラストラクチャーに注目して理解しようとしてきた。工藝をモデルに循環型モノづくりを目指すパースペクティブの理念に共感し、ファブビレッジ京北のラボ事業に参加。「つくること」を通して、暮らしを支えるテクノロジーと環境の関係を探究するクリティカル・メイキングの実験も行っている。
行程
3月15日 ツアー1日目
~午前~
京都市内集合
自己紹介、地域についての導入レクチャー
京北へ移動
~午後~
森を歩く:「気付きの技法(art of noticing /Anna Tsing)」と人間以上の世界としての森
セミナー「視点としての痕跡」
流域の痕跡を歩く
3月16日 ツアー2日目
~午前~
レクチャー:「観察の技法」
循環的な里山暮らしの場の観察:知覚のフィルターを外すための人類学的観察の実習
~午後~
レクチャー「聞くことの技法:エスノグラフィックなインタビューとは?」
インタビューの実習
知覚のフィルターに気づくためのフィールドノートの作成実習
3月17日 ツアー3日目
~午前~
レクチャー:「トランジションのためのデザイン人類学入門」
フィールドノートの比較
~午後~
インタビューの書き起こしと比較
レクチャー:「見えなかったものを見出す技法としての質的データ分析」
データ分析ミニ実習
3月18日 ツアー4日目
~午前~
レクチャー:「影響されることを学ぶ:ブルーノ・ラトゥールの情動論」
分析結果の発表
~午後~
振り返りセッション
京北にて解散
スタディツアーの特徴
(1)気候と環境の危機に対応するために求められている変革を、産業と生活という二つの側面の連関を通して捉えるユニークな視点。本ツアーでは、温暖化ガスの排出や物質の循環を通して環境に影響を与える産業を、生活を維持する基盤としての大規模技術システム、インフラストラクチャーとして捉えます。これによって、しばしば二つに分かれがちな産業の変革とライフスタイルの変容とをつなげて考えることを可能にします。
(2)変化のために必要な視点として、デザインやプランニングについての見方の転換を中心に据えます。近代のビジネスでは主体となる人や組織が、自らの価値に基づいて枠組みを定め、それをベースに事業をデザインしていきます。このような近代的なデザインの思考は、結果的に環境の複雑なプロセスや他の生物種の存在を無視し、複雑さによって維持される生態系を破壊してきました。この見方を転換するためには、自らの合理性に則って対象に働きかけるのではなく、環境の中の他者の求めるものに反応し、その影響下で自らが変わりながら環境に働きかける姿勢が必要とされます。本講座では、一部の研究者が「影響されることを学ぶ」と呼ぶこのプロセスを中心に据えます。
(3)こうした視点の転換を実際の経験に基づいて学んでいただきます。本講座では、人類学の調査法であるエスノグラフィのトレーニングをもとにして、自らの思考の枠組みを外し対象の中の多様な差異に気づいていくための実習を行います。ここでは、自らの感覚を研ぎ澄ませるだけでなく、フィールドノートの記録などを通して自分自身の視点を振り返る手法も体験します。このように手近なメディアを自身で作ることで、環境や他者からより繊細に影響を受ける感受性を磨く手法を学ぶことができます。