Foodscape フードスケープ

Foodscape フードスケープ 図解 食がつくる建築と風景
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内容紹介

自然のリズムで生きるための問いと手がかり

地形と気候に応じた食がつくる建築と風景の図解集。カレマ村のワイン、アマルフィのレモン、小豆島の醤油、多気町の日本酒等、日本とイタリア16の食の生産現場を読み解く。蓄熱する石積みの段々畑、風を呼込む櫓、光や湿気を採り入れる窓等、自然のリズムとともにある食生産と人の暮らしを取り戻す為の建築の問いと手がかり


正田 智樹 著   
著者紹介

体裁A5横判・224頁

定価本体3000円+税

発行日2023-10-10

装丁UMA design farm(原田祐馬・山副佳祐)

ISBN9784761528683

GCODE2329

在庫◎
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イタリアへ行き、彼らと食事をするとその食事の長さに驚かされる。
3時間以上かけて夕食をとったこともあった。
そんな長い時間の中で食の話は欠かせない。
夕食に出てくる料理から始まり、地元のパスタやチーズ、ワインの味や形の違いそして作り方までを誇らしげに語るのである。
その時間と会話をとても豊かなものだと感じた。
彼らはそこにある食の味や匂い、形を語るとともに、その美味しさがつくられた背景を知り、語ることができるからだ。

(本書「はじめに」より)

 

『Foodscape フードスケープ 食がつくる建築と風景』では、ワインやレモン、醤油や日本酒、イタリアと日本の食の生産地16か所を詳細図で読み解きます。
各地の生産者を取材した著者・正田智樹さんが描くのは、光・風・熱を活かし、自然のリズムとともに生きる人と食と建築の関係。
この連載では、農業史・環境史の研究者・藤原辰史さん、建築家・塚本由晴さんとともに、土地の気候や地形に応じた人の暮らし、それを支える、食と建築を語ります。

連載一覧

・スローフード運動とエコロジカルな転回
・日本とイタリアのフードスケープ
・エコロジカル治具とフードスケープ
・アイソメ図とバレーセクション

イタリアのフードスケープ Foodscape in Italy

カレマ村のワイン

ボルミダのワイン

トレンティーノの貴腐ワイン

ヴェッサーリコ村のニンニク

ジベッロ村のクラテッロ

〈食コラム〉パルマハム
〈食コラム〉コロンナータのラルド

モデナのバルサミコ酢

ヴェスヴィオ火山のトマト

アマルフィのレモン

トラパニの塩

〈食コラム〉マドニエのプロヴォラ

食と建築をめぐる対話①藤原辰史(農業史・環境史)×正田智樹

日本のフードスケープ Foodscape in Japan

四郷の串柿

小豆島の醤油

石井味噌

豊島の天日塩

海の精

多気町の日本酒

〈食コラム〉寺田本家

八女茶

田野町の寒干し大根

〈食コラム〉山之村の寒干し大根

下津の蔵出しみかん

〈食コラム〉カネサ鰹節商店

食と建築をめぐる対話②塚本由晴(建築家)×正田智樹

・エコロジカル治具の拡がり
・自然と機械によるハイブリッド生産
・おわりに
・取材・執筆協力、参考文献
・謝辞
・Foodscape Graphical Analyses of Architecture and Landscapes of Food

正田 智樹

1990年千葉県生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。一級建築士。2016-17年イタリアミラノ工科大学留学。現地ではSlow Foodに登録されるイタリアの伝統的な食品を建築の視点から調査。2018年-現在会社員。

普段私たちが口にする食は一体どこからきているのだろうか。商品の棚に包装されて大量に並べられる食のラベルを見ると生産地や生産者の名が書かれていることがあるが、そこから先へと食の辿ってきた生産の背景を想像することは難しい。

20世紀の産業革命により人々は工場で働くために都市部へと移動したことで、暮らしから食の生産は分断されてしまった。食は自給自足でつくるものから、購入するものへと変わっていく。世界大戦後には、大量生産のためのトラクターや農薬、遺伝子組み換えなどの技術革新が次々に進められていった。こうした人々の暮らしの変化や食の産業化は、私たちに安定した食糧を効率的に届けてくれる。しかし商品の棚からは、食の生産とともにあった人々の暮らしや地形、地質、気候がはぐくむ農作物や加工物の風景を想像することはできない。

イタリアへ行き、彼らと食事をするとその食事の長さに驚かされる。3時間以上かけて夕食をとったこともあった。そんな長い時間の中で食の話は欠かせない。夕食に出てくる料理から始まり、地元のパスタやチーズ、ワインの味や形の違いそして作り方までを誇らしげに語るのである。その時間と会話をとても豊かなものだと感じた。彼らはそこにある食の味や匂い、形を語るとともに、その美味しさがつくられた背景を知り、語ることができるからだ。

イタリアの食の生産現場に訪れると、さんさんと降り注ぐ太陽の下で育てられるレモンを支えるパーゴラや、冷気からぶどうを守る象徴的なパーゴラの石柱、眼鏡が曇るほどの湿度の中で生ハムにカビを生やすための発酵・熟成室といった、美味しい食の背景には建築が関わっていることに気づいた。そこには普段目にする建築とは少し違う、食の生産ならではの建築の形や素材の使われ方があった。それは、人のためだけの建築ではなく、自然を活かしながら食をつくるための建築である。さらに、パーゴラや発酵・熟成室などの建築は生産者によって少しずつ形や材料が異なるが、同じような方法で地域の中に反復し、風景をつくる。人々が試行錯誤を繰り返し、時間をかけて自然との関係の中でつくりだした知恵が建築という形になってあらわれ、地域の中で広がり、人々の暮らしを支えてきたのである。こうした自然を活かす建築を起点にすることで、食の風景を考えることができるのではないだろうか。

そう考え、イタリアと日本の食の生産現場で調査を行った。ここに集められたのは、季節や時間の中で変化する自然とともに生産されるワイン、レモン、塩、日本酒などの食がつくる建築と風景である。本書ではそうした食がつくる建築と風景をフードスケープと呼ぶ。

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