【受付終了】[レポート]UDCBK連続講座第1回|なぜ小さな空間から都市をプランニングするのか(2019/11/20|滋賀)

※詳細は主催団体等にお問い合わせください。

2019年11月20日(水)に第1回が行われたアーバンデザインセンターびわこ・くさつ(UDCBK)の連続講座「アーバンデザインスクール後期|小さな空間から都市をプランニングする」。

全5回の初回は「なぜ小さな空間から都市をプランニングするのか」と題して、同タイトルの書籍『小さな空間から都市をプランニングする』編著者の大阪府立大学・武田重昭先生と、龍谷大学・阿部大輔先生にご登壇いただきました。

アーバンデザインセンターびわこ・くさつは南草津駅のど真ん前にあります。SEIYUさんと同居していて面白い。運営者の方から、このマイクSEIYUの店内放送と同じ周波数だから、ときどきSEIYUさんの音を拾っちゃうのですがあしからず、という説明が入るのもまた微笑ましかったです。ショッピングセンターと共存していたりと、セミナーを開催している後方では、テーブルを囲んで、女子中学生や小学生が宿題をしていたり、これぞまちの施設!という感じでした。

最初に、立命館大学の武田史朗先生から今回の連続講座について説明が。本書を全5回で読み解きつつ、ひと工夫で場の価値やふるまいが変わると示す本書に倣って、次回以降や次年度では実践やWSスタイルを取り入れ、できるだけ南草津のまちをフィールドとした具体のアクションにつなげるのがねらいだとか。

続いて、編著者の武田重昭先生から本書の紹介と今回のスクールの内容について。旧来的な上からのプランニングでなく現場での質や体験を積み重ねた先に手法を見出すことを目指した本だということを学ぶため、講義の1回目は概要、2〜4回目は本書で紹介している事例の著者によるレクチャー、5回目はまとめという構成(連続参加でより深く理解できます!)をとります。

本書の解説に入る前に、武田先生からまずは都市空間のつくり方研究会の前身メンバーの姉妹本『いま、都市をつくる仕事』についての紹介が。2011年に出版した『いま、都市をつくる仕事』では、40人程の都市にまつわる面白い働き方をしている人を対象に、その仕事のあり方やキャリアパスを分析(経緯がよくわかる「はじめに」もどうぞ)。そんな仕事論にフォーカスした前著から都市空間へコミットするため本書に企画が持ち上がっています。

そして翌々年の2013年、今回の書籍『小さな空間から都市をプランニングする』の研究会が立ち上がります。書籍制作の前段階として「都市空間のレシピ」という全5回の公開研究会を開催し、都市の成り立ちを掴みつつ「空間」にフォーカスするための方法を探ってきました(こちらも「はじめに」読めます)。2冊目では、①都市空間の魅力とは何か?/②それはどうやってつくられるのか?の手順を紐解き、耐えず変化する都市の現場(空間)にスポットを当てて「(小さな)空間から(大きな)都市」を考察する、という思考手順をとりました。

書籍にまとめるまでに6年を要した本書。時間をかけてああでもないこうでもないと議論を重ね、最終的な構成は、事例紹介となる1章で、その空間をマネジメントしている3つの主体別(行政・民間・市民)に分析。2章はその主体に見られるデザインスキームとプランニングマインドを、3章は小さな空間の価値を大きな都市につなげる10の方法について総括しました。

続いて阿部先生から、本書で取り上げている16事例をざざっと総覧してもらいます。そのうえで、そもそも都市の良い空間は計画と無関係に生まれるのでは?という矛盾に向き合う本であると阿部先生。本書は、いわば都市計画に精通していない人の手でこそ面白くなる都市を、専門家はどう捉え、制度や施策で支えることができるか、という読み解きの集積です。16の紹介事例が専門家の職能や関わり方の答えやレシピがクリアに示されているわけではなく、市民や民間事業者の実践を都市的な着眼点をもってひたすら読み込む。例えば家賃断層帯に集まるクリエイター層の動態と分散しながら呼応する市民の賑わいなどについて分析していく。第三者の立場だからこそ読み解ける複数主体による多角的なかかわりしろのありかた・契機を探っています。

そのあと、武田史朗先生から、会場である南草津に目を向けると、このまちではどんな工夫が可能なのか、市民一人ひとりが取り組めることは何かという問いが投げかけられました。

今回の受講者の方に行政関係者が多かったこともあり、参考になる思考として本書にある「行政のリーダーシップからフォロワーシップへ」という感覚を解説くださった武田重昭先生。小さな空間と大きな都市の関係をつくるためには、大きな都市を描く側のふるまいや役割認識が重要だといいます(詳しくは本書をお読みください)。阿部先生からは、事例5.まちなか防災空地(永続性を前提としない―― 密集市街地に寄り添う暫定的な空地整備事業)のように暫定的な利用にヒントがあるのでは、と。または、事例.13コトブキ荘(都市を読み、文化的に暮らす拠点―― 地方小都市のサロン的古民家シェアスペース)のように、集団で動くこと。ひとつ面白い空間ができれば、フォロワーが生まれるのでは、「良い都市」の答えは多様だし、本書がその多様さに触れるきっかけにはなる。行政のフォロワーシップが大切だと示す一方で、事例1.なぎさのテラス(問題なくつくるという固定概念を外す―― 都市公園への商業施設導入による水辺の暮らしづくり)は、行政による公園利用の強力なリーダーシップが功を奏したとも言える、と。

続いて会場からの質問タイムです。

「例えばリノベーションが流行っているが、まちを魅力的にする一方でそのまちの時間を止めてしまう、それは住まい手にとって良いことなのか」「南草津に魅力がない、どうすればいいか」などの質問が出ました。ここアーバンデザインセンターびわこ・くさつ(UDCBK)の開設時には、「まちが住みやすすぎる」「まちが優等生すぎる」ことが課題として浮かび上がったのだそうです。そんなまちの認識と発信をあと4回で掘り下げて行きたいと、史朗先生。

阿部先生からは、「変化し続けるのが都市の魅力でリノベもそのひとつであり、まちはエイジングが魅力だと思っている。大学のまちだから学生が何かしかけて、ベッドタウンとして埋もれた魅力を発掘しても面白い」との答え。武田先生からは本書の事例11.仏生山まちぐるみ旅館(まちのベクトルを上向きにする―― ゆっくり育てる暮らしこそ消費されないまちの魅力)を例に挙げつつ、「DIYが身近になって、ある種なんでも自分たちで変えてしまえる時代になったのはいいことだと思っている。公園さえも自分たちでつくれる面白い時代。南草津のまちが面白くないとしても、”だめなやつほどかわいい笑”。だめだからこそ、ちょっと変わればぐっとよくなる伸びしろがあると考えるのがよいのではないか」とのアドバイスが。

「小さな対話」を標榜して、各地の小さな会場で議論を積み上げている本書。今回の会場でも、この場所ならではの視点や具体的なアクションが取り組まれることを期待が高まったところで、第1回はお開きに。駅前広場の片隅にふらっと老若男女が立ち寄れる場所としての平日夜のアーバンデザインセンターびわこ・くさつ(UDCBK)、すてきでした。会場には、これからのワンアクションのタネもちらほら。

そして続く議論は残る4回の講座へ。『小さな空間から都市をプランニングする』とUDCBKのコラボで南草津にどんな実践が生まれるのか、これからの展開が楽しみです!

第2回以降も参加者募集中!詳細・申込みはこちらから

https://www.city.kusatsu.shiga.jp/shisei/sisetsuannai/community/UDCBK/school/reiwa1schoolkouki.html

イベント概要

令和元年度のアーバンデザインスクール後期のテーマ、及び日程が決まりましたのでお知らせいたします。

テーマ(第1回目)

なぜ小さな空間から都市をプランニングするのか

講師

武田重昭(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科准教授)
阿部大輔(龍谷大学政策学部教授)

シリーズコーディネート:武田史朗(UDCBK副センター長・立命館大学理工学部教授)

日時

2019年11月20日(水曜) 18時30分~20時

会場

アーバンデザインセンターびわこ・くさつ(UDCBK)

参加費

無料