ビットコインによる年間の電力消費量は主要先進国並みに 拡大する市場の裏で高まる暗号資産の環境負荷
暗号資産(仮想通貨)Bitcoin(ビットコイン)の流通に伴う環境負荷について試算するオンラインツールを、オランダのDigiconomist社(以下、D社)が開発し公開している。
市場調査機関Facts and Factorsが発表したレポートによれば、仮想通貨の市場規模は急速な拡大を続けており、2020年7月から2021年6月までの1年間の普及率は880%。このペースが続けば、2019年時点で約7億9,300万ドルだった市場は、2026年までに52億ドル近くに成長すると予測されている。
こうした中で、データサイエンティストAlex de Vries氏が代表を務めるD社から公開されているのが、「Bitcoin Energy Consumption Index」(以下、BECI)というウェブサイト。
掲載されている情報によれば、ビットコインの流通に伴って年間に排出される二酸化炭素(CO2)排出量は97.14Mt相当、電力消費量は204.50TWh、電子廃棄物量は25.65ktなどと見込まれている。
CO2排出量はクウェート、電力消費量はタイ、電子廃棄物量はオランダに、それぞれ相当する水準。電力消費量に関しては、主要な先進国の年間消費量にも比肩する水準で、オーストラリアの80%弱相当まで増加してきている。
なお、VISAでの決済取引と比較したBECIの試算によると、ビットコインの取引1回に要する環境負荷は、電力消費量では1,542,417回、二酸化炭素排出量では2,413,459回分に相当するという。
中央銀行が発行する法定通貨とは異なり、仮想通貨ビットコインの取引は、世界中のコンピュータのネットワークで構成される公開台帳、いわゆる「ブロックチェーン」を通じて追跡される仕組み。
このうち、ユーザー間の取引を検証するために計算パズルを解き、それをブロックチェーンに追加するプロセスは「採掘(マイニング)」と呼ばれる。
上限が決まっている流通量の増加に伴い、必要な計算パズルの難易度が上がっているため、採掘者(マイナー)がマイニングにかける処理が急激に増加し、エネルギーの大量消費につながっていると考えられている。
暗号資産の環境負荷については、中国など化石燃料に由来する電力の占める割合が大きい地域でのマイニングによる気候変動への影響、安価な電力源を求めるマイナーの流入で電力消費が急増することによる電力供給の不安定化などが、問題となってきた。
かねてから主要な採掘拠点となってきた中国は、2021年9月に「仮想通貨のマイニング活動は中国の経済成長にほとんど貢献しない一方で、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)達成を阻害する」として、マイニングを禁止。
これを受け、無認可を含むマイナー業者の多くが、1キロワット当たり22.367テンゲ(約6円、1テンゲ=約0.25円。日本の約3分の1程度)と電力価格が安価なカザフスタンを移転先として選択。JETROによれば、カザフスタンにおける過去1年間の全国電力消費量の伸び率は7%を超え、電力価格の上昇や一部地域での停電を招く事態に陥っている。
詳細
Bitcoin Energy Consumption Index
https://digiconomist.net/bitcoin-energy-consumption
Bitcoin’s wild ride renews worries about its massive carbon footprint
参考
ビットコインのエネルギー問題
https://www.pictet.co.jp/company/sustainability/mega/2021/Environmental-footprint-of-bitcoin.html
中国人民銀、仮想通貨を全面禁止 「違法」と位置付け
https://jp.reuters.com/article/crypto-currency-china-idJPKBN2GK0RZ
電力不足解消へ無認可暗号資産マイニング業者を規制(カザフスタン)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/11/354eb6280d0e8bac.html