連載|建具デザインの手がかり|vol.4 ZIG HOUSE/ZAG HOUSE
vol.4 ZIG HOUSE/ZAG HOUSE(古谷誠章+NASCA)
壁と同化させた開きつつ遮る「間戸」
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世田谷の住宅街とは思えない豊かな林の残る敷地に建つ、設計者の自邸を含む2世帯住宅である。親世帯がジグハウス、設計者家族の住む子世帯がザグハウスであり、2つの棟を一繋がりのジグザグの形にした建築である。
設計者の古谷誠章は著書『「マド」の思想』のなかで、様々な戦後の名作住宅に見られる、「何かを上手に遮ろうとする窓のことを“window”に対して“間戸”と呼んでいる」*。開いている状態としての間と、遮るものをあらわす戸を掛け合わせて、「間戸」として両義的な開口部のはたらきを見出している。そしてZIG HOUSE/ZAG HOUSEを「間戸」を体現する建築として、同書においても取り上げている。
この住宅は、構造体と床・壁・屋根そして開口部だけでほとんど出来ている。梁間4500mm・桁行1800mmピッチの連続した門型フレーム、および2階床と屋根には奥多摩の間伐材を利用した編成材が用いられている。その中で、特徴的なのは「間戸」となる開口部だ。枠はスチール、框はステンレスの製作サッシで、低いもので2.5m、高いところで上下階連続した6m近くの、住宅とは思えないスケールのサッシが実現されている。
見所は、外壁面とフラットに納まるように、框と一体でつくられたステンレス削り出しのヒンジや、框の見込みを抑えるために8mm厚の強化ガラスを構造シール止めで仕上げるなど、非常に高い施工精度を要求するサッシワークが行われている点である。上下階のサッシが連続するように、水切りと霧除けを兼ねた枠や、開閉用のカムラッチハンドルの納まりも考え抜かれている。これらはまさに「間戸」として、構造体そして壁の間に穿たれた「間」と、内部と外部を仕切る境界面としての「戸」が、寸分の狂いも許さないディテールによって生み出されている。
*古谷誠章 編著『「マド」の思想 名住宅を原図で読む』彰国社、2010、p.8
事例詳細
ZIG HOUSE/ZAG HOUSE
東京都世田谷区、2001
用途:専用住宅
構造:木造2階建
設計:古谷誠章+NASCA
著者プロフィール
藤田雄介
1981年兵庫県生まれ。2005年日本大学生産工学部建築工学科卒業。07年東京都市大学大学院工学研究科修了。手塚建築研究所勤務を経て、10年Camp Design inc.設立。おもな作品に「花畑団地27号棟プロジェクト」「柱の間の家」「AKO HAT」などがある。現在、東京都市大学、工学院大学、東京電機大学非常勤講師。明治大学大学院理工学研究科博士後期課程在籍。