パブリックアートを道路に導入した米カンザスシティの交差点 自動車の速度45%抑制や騒音軽減など顕著な効果
- アメリカ合衆国のカンザスシティにある交差点が、道路上へのパブリックアートの導入などにより、自動車の通行速度の抑制や騒音の軽減といった効果を生んでいるとして注目を集めている。
- カンザスシティのウェストポート地区を走るワイアンドット通りとウエストポート通りの交差点周辺には、図書館や教会、郵便局などが立地。いずれの通りに対しても停止標識が設置されているものの、交通量は多く通行する車のスピードも速い。また、道路幅の広さとカーブしながら交わる交差点の形状から、横断の所要時間の長さなど、歩行者の安全性への懸念がかねてから指摘されていたという。
- この交差点における安全面の改良の必要性を感じた地元の都市デザイン事務所 “Street Smarts Design + Build” のデュロン・ネッツェル氏が昨年、米ブルームバーグ財団が実施している助成事業 “Asphalt Art Initiative” への応募を発案。これは、アートやデザインを通じて道路の安全性の向上や公共空間の活性化、地域住民の参加促進などに取り組もうとする米国内の都市を同財団が選出し、最大で2万5千ドル(約272万円)を補助する助成事業で、応募の結果、カンザスシティは2020年の助成対象16都市の一つに選ばれた。
- 助成を受け、ネッツェル氏は行政当局のほか地元のアーティスト4名と協働し、交差点周辺の環境改善に着手。まず停止標識2本の増設と縁石の張り出しを拡張したほか、植木鉢などで道路と歩道の境界を明示。さらに交差点周辺のアスファルト舗装の計約400平方フィート(約37㎡)をキャンバスに見立て、アーティストが作品を描いた。
「2カ所には記号的な作品、もう2カ所には花をイメージした作品が描かれましたが、色使いはそれぞれつながりあっています」とネッツェル氏は話している。 - この取り組みは実際に安全性の向上に顕著な貢献をみせており、整備完了後に市が実施した調査によると、通行する自動車の走行速度は全体で45%低下したほか、歩行者が横断に要する距離は半減し、周辺の騒音レベルも10~12デシベル軽減されたという。特に縁石の道路側への拡張は、交差点を曲がる車の速度抑制につながっているとみられる。
詳細
An Initiative to Improve Street Safety through Public Art
Can Asphalt Art Create Safer Streets?
https://streetsmartsdesignbuild.com/can-asphalt-art-create-safer-streets/
Asphalt Art Initiative
https://asphaltart.bloomberg.org/
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