壁の耐震補強を行う|連載「セルフリノベーション・ラボ」vol. 04

この連載について

リノベーションってカッコ良いけど、自分にはできないかも……。でも、リノベーションの多様な入口をちょっと知るだけで、「これならできそう!」という接点が見つかるかもしれません。

本連載では大学研究室のメンバーが、セルフリノベーションの基本的な考え方(理論編)、方法や道具の使い方(実践編)、先達の創意工夫(事例編) という3つの視点から紹介していきます。
日本全国にあるたくさんの空き家を、セルフリノベーションで楽しみながら使う。そんな人が増えたら、まちも、暮らしも、もっと豊かになるのではないでしょうか。

地震の多い日本で暮らす私たちにとって、耐震補強は安心して暮らすための大切な要素です。専門家に頼むイメージが強いですが、条件と手順を押さえればセルフリノベでも取り組めます。

今回は、富山大学籔谷研究室の学生シェアハウス「くめいま」で実践した3種類の耐震補強を紹介します。

1|3種類の耐震補強を比べてみる

柱・梁によって組まれた木造軸組工法は、屋根や床の重さといった上からの力(鉛直力)に対しはとても強い一方、地震や強風による横からの力(水平力)には、それに抵抗するための耐震補強が必要です。

耐震補強と一言で言っても、方法はいろいろあります。今回は次の3つの方法を試しました(表1)。これ以外にも、コボットシステムという耐震補強金物を用いる方法もあります。

表1:3種類の耐震補強の比較

①構造用合板:断熱と相性がよい「堅実な方法」
(コスト:★☆☆・難易度:★★☆)

柱や間柱などの下地を組み、その上に構造用合板を張って壁を強くする方法です。
水平力に対し、壁を「面」として抵抗させるため考え方が直感的で、3つの中ではコストが抑えられ、工程も比較的読みやすいです。
下地の間に断熱材を入れやすく、「壁を開けるなら断熱も一緒に」という場合に向きます。

今回は、日本合板工業組合連合会が発行する「耐震補強用合板耐力壁マニュアル」を参考にしました。

②木の筋交い:難しいが達成感のある「見せる補強」
(コスト:★☆☆・難易度:★★★)

柱の間に木材を斜めに入れて補強することで、水平力に対し抵抗させる方法です。
筋交いの入れ方には、1本の筋交いを入れる「片筋交い」と2本をクロスさせる「たすき掛け」があり、強度が異なります。

実践してみたところ、作業に掛かった時間は約4時間半、費用は約4万円でした。墨出しや、筋交いを納めるための間柱の切り欠き(溝)づくりなど、慣れないと難しい工程が多く、うまく納まったときの達成感は格別です。

筋交いが壁内を分断するため、柱や間柱の間に断熱材を詰めるためには切り欠き等の調整が増えますが、無垢材で補強できることや、筋交いを剥き出しにして意匠的に見せられるのも魅力です。

③紐の筋交い:軽やかで工程が少ない「未来の選択肢」
(コスト:★★★・難易度:★☆☆)

高強度アラミド繊維の紐を、専用金物に取り付け強く張り、横揺れに抵抗させる方法で、東京理科大学・高橋治教授と建築家・常山未央氏により共同開発されたものです。

普及途上のため特注品となり、今回はコストが高額でしたが、工程が少なく、丸鋸などの危険な工具を使わずに施工できます。空間への圧迫感が小さいのも魅力です。

2|補強箇所を検討する

「どの壁を補強するか」は、耐力壁(水平方向に抵抗する壁)の量だけでなく配置バランスが重要です。偏った位置だけを強くすると、地震時に建物がねじれやすくなるためです。平面上のバランスだけでなく、上階から下階へと力をスムーズに伝えるために、垂直方向(上下階)の耐力壁の位置を揃えることも重要です。(図1)

また、耐力壁の強さは「壁倍率」という指標で表されます。耐力壁は種類ごとに壁倍率が定められており、建物全体で必要壁倍率を満たすと同時に、配置バランスを整えることが求められます。

詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
壁量計算とは何か? 建築基準法と品確法との違いは?(CAD Japan.com)

今回の実践では、自分たちで壁倍率をもとに壁量計算を行い、建物全体の壁配置を確認・検討しましたが、必要壁量の判断には専門的知識が必要です。

初めての方は、設計士や構造に詳しい大工などに「補強してよい壁・優先順位・全体バランス」だけでも確認してもらうと安心です。

また今回は、既存の片筋交いが入っている壁を活かし、補強を追加しました。既存部材の劣化や、柱・梁・土台との接合状態によって効果は変わるため、施工前に状態確認を行い、必要に応じて補修や金物の追加も検討しましょう。

3|構造用合板を施工しよう

ここからは、今回の実践で採り入れた構造用合板による耐震補強の施工手順を紹介します。
必要な材料・道具は、表2にまとめました。

表2:構造用合板に必要な材料・道具

金物の種類・取り付け位置・使用するビス/釘は製品ごとに異なるため、必ずメーカーの施工要領に従ってください。分からないことはメーカーに問い合わせると、優しく教えてくれますのでおすすめです。

こちらが改修前の状態です(写真1)。

写真1:改修前〈構造用合板〉

構造用合板による耐震補強は、一般的に次の流れで進めます。

手順1:既存の柱・横架材に金物を取り付ける

柱と横架材(土台・梁など)の接合部を確認し、必要に応じて専用金物を取り付けます。古い建物では、接合金物が十分でない場合が多いためです。耐力壁の壁倍率を確保するには、仕様に見合った金物の使用が前提となるため、必ず確認しましょう。

手順2:下地材の実測・切り出し・取り付け(外枠→間柱→胴つなぎ)

外枠(縦材・横材)を実測して切り出し、所定位置に取り付けます。外枠が組めたら、間柱の配置(間隔)を決めて実測・切り出し・取り付けを行います(写真2)。

続いて胴つなぎ(柱や間柱の間を横方向につなぐ横材)も、間柱どうしの内法寸法を測って切り出し、取り付けます。釘(またはビス)を留める際は、狙った部材に確実に効く角度で斜めに打ち、貫通に注意しましょう(写真3)。

写真3:釘を斜めに打ち込む様子

また、この段階で、合板の継ぎ目(端部)が下地に乗るよう、割付の方針を決めておくとスムーズです。

手順3:合板の実測・墨出し・切り出し・取り付け

下地が組めたら、実際の寸法に合わせて最終割付を確定し、間柱・胴つなぎの位置に合わせて墨出し(施工の基準となる位置や寸法を、線や印として材料や床・壁に書き出す作業)します。合板側にも墨出しを行い、カットして取り付けます。今回は、12mmの構造用合板を使用したため、釘CN65を100mmピッチで打っていきます。

繰り返しになりますが、釘の種類やピッチは合板の仕様や求める壁倍率によって異なるため、必ず製品の施工要領を確認してください。
写真5が改修後の状態です。

4|木の筋交いを施工しよう

次に、木の筋交いによる耐震補強の施工手順を紹介します。材料・道具は表3を参照してください。写真6が改修前の状態です。

表3:木の筋交いに必要な材料・道具

木の筋交いによる耐震補強は、一般的に次の流れで進めます。

手順1:柱・横架材・既存筋交い(必要箇所)に金物を取り付ける

柱と横架材(土台・梁など)の接合部を確認し、必要に応じて専用金物を取り付けます。

手順2:筋交い寸法の確認→墨出し→切り出し

柱間の寸法と土台〜梁の高さを実測します。古い建物は、柱や梁が必ずしも直角・鉛直とは限らないため、左右・上下で複数箇所を測ると安心です。

次に、筋交いの長さを決めます。今回の実践では、壁の対角線の長さを紐で当てて測り、その紐を型紙のようにして筋交い材へ写しました(写真7)。スケール(コンベックス)で測っても問題ありません。

写した線に沿って筋交い材をカットします。筋交いの墨出しは、この工程の中でも精度が求められるポイントです(写真8)。

写真8:筋交いの墨出しを行う様子

手順3:間柱の実測・切り出し・取付け

筋交いをきれいに納めるために、間柱に筋交いが通る分だけ「切り欠き」をつくります。切り欠きは深くしすぎず、納まりを確認しながら少しずつ調整します(写真9)。

写真9:間柱に切り欠きをつくる

手順4:筋交いを納める→微調整→金物で固定

筋交いを木槌で軽く叩きながら入れ、きつい場合は無理に叩き込まず、つかえている部分を確認して、削る/切り直すなど調整します(写真10)。筋交いが納まったら、最後に所定の金物で固定して完成です(写真11)。

写真10:筋交いをはめる様子
写真11:改修後〈木の筋交い〉

4|高強度アラミド繊維の「紐の筋交い」を施工しよう!

最後に紹介するのが、高強度アラミド繊維の紐による筋交いです。柱と横架材に専用金物を取り付け、そこに紐を接続して強く張ることで、地震の横揺れに抵抗させる補強方法です。

写真12が改修前の状態です。

写真12:改修前〈紐の筋交い〉

施工は次の流れで進めました。

手順1:柱・横架材に専用金物を取り付ける

手順2:必要な長さに紐を切り出し、引っ張りながら金物に取り付け、所定の張りで固定する

紐をみんなで引っ張りながら施工するのは、祭りのようでとても盛り上がります。

写真15が完成後の状態です。

写真15:改修後〈紐の筋交い〉

今回は、3つの耐震補強を実践例として紹介しました。
耐震補強は家を強くするだけでなく、工法や補強する壁の位置によって、空間の表情や広がりも大きく変わります。必要に応じて専門家に相談しながら、無理のない範囲で、できるところからチャレンジしてみてください。

(つづく)

執筆者プロフィール

籔谷祐介(やぶたに・ゆうすけ)

富山大学学術研究部芸術文化学系講師。(一社)エリアマネジメント・ラボ理事。1986年三重県生まれ。筑波大学大学院博士前期課程修了。札幌市立大学大学院博士後期課程修了。博士(デザイン学)。一級建築士。「建築的思考からコミュニティを創発する」をテーマに、部分セルフリノベーションした自邸「山川藪文庫」(北陸建築文化賞)、「地元材を用いたデザイン・ビルド建築教育の試み」(木の建築賞)、「まちづくり市民活動団体の人材マネジメントに関する組織論的研究」(日本都市計画学会論文奨励賞)など、理論と実践を横断しながら、まちや暮らしをよりよくするためのコミュニティデザインやリノベーションの研究に取り組む。著書(共著)に『エリアマネジメント・ケースメソッド』(学芸出版社)。
https://yabutani-lab.com

黒山真樹(くろやま・まき)

富山大学大学院人文社会芸術総合研究科修士課程。2002年石川県生まれ。2024年の春から学生シェアハウス「くめいま」に住みながらセルフリノベーションを行っている。修士研究では、令和6年能登半島地震で被災した建物から古材をレスキューし、所有者の思いや建物の記憶をもとに家具を製作する実践的研究を行っている。

技術監修

いとうともひさ

株式会社いとうともひさ主宰。1985年大阪府生まれ。神戸芸術工科大学環境デザイン学科卒業。各地を旅してその場にある素材を加工したり空間に転用したり、その場の作り方を試行しながら施工をする大工。 また、地域に関わる人たち(設計・施主・その他プロジェクトメンバーなど)とのコラボレーションを軸にして「つくり方」の企画・指導も行っている。

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