第19回「高速道路は時代遅れになる⁈(1)――解体、拡張/延伸計画の中止急増」連載『変わりゆくアメリカからさぐる都市のかたち』

この連載について

アメリカで展開されている都市政策の最新事情から注目の事例をひもときつつ、変容するこれからの都市のありよう=かたちをさぐります。

筆者

矢作 弘(やはぎ・ひろし)

龍谷大学フェロー

前回の記事

“反高速道路運動”を受けて進む解体・撤去

アメリカ都市で高速道路(州際高速道路=Interstate Highway System,「I-20」のように表記される)を解体、撤去する事例が増えています。

  1. 都市内を貫通する高架の高速道路を取り壊して側道にプラタナスを植栽し、高規格の並木道(boulevard)を整備する
  2. 都心を走る高速道,を地下に埋め込み、撤去跡を都市公園に造り替える
  3. 道路自体を廃止し、車を外縁部の道路に迂回させる

――などの取り組みが行われています。また、高速道路の拡張/延伸計画が潰される事例も増えています。

気候変動危機に取り組むグループやコミュニティの再生に従事する市民が、反高速道路運動を先導しています。
高速道路の解体要求、あるいは拡張/延伸反対は、「Anti-car Movements(反車運動)」の中核に位置する都市社会運動になっています。最近は連邦政府、一部の州政府もそれまでの立ち位置を変え、反高速道路運動に理解を示すようになっています。

初期の高速道路の撤去は、半世紀以上前の、20世紀半ばに遡ります。以来、草の根発の市民運動がアメリカ各地で高速道路の新設、車線の拡張、延伸に反対してきました。
しかし、当初は連戦連敗でした。高速道路反対運動が成果を上げるようになったのは、20世紀末以降、それも特にここ10年余のことです。高速道路解体運動に追い風が吹いています。それには、時代の変化が影響しています。

高速道路の解体事例は、資料によってデータに違いがあり正確な数字の把握が難しいのですが、20世紀に3、4件、21世紀になって15-18件という記録があります。
これらの資料によると2010年代以降に10件以上です。また、解体、及び拡張/延伸計画の取り消しが政府の政策課題として俎上にあるか、問題提起されている高速道路が20件前後あります。