Vol. 03 女郎蜘蛛に憧れ、巣作りに挑む|連載「ニシノカイト―琵琶湖水源の里山でセルフビルドな暮らし」
この連載について
きれいな水に惹かれて滋賀県高島市に移住。地元の人に「ニシノカイト」と呼ばれる一軒家に出会い、女郎蜘蛛の巣作りに憧れ古民家再生に挑む。
畑や田んぼ、動物たちとの暮らし、浮かびくるインスピレーションに素直に生きながら、創造するという人間ならではの行為を楽しんでいる。日々自然の中で教わることを綴ってみたい。
前回の記事
山で見ていた女郎蜘蛛のメスが自分で巣作りし出産する姿に憧れ、自分も巣作りしようと家を探していたところ、一軒だけポツリと残っていた古民家に出逢った。そこは、集落の西のはずれにある、ちょっといいところという意味で、西垣内(ニシノカイト)と呼ばれていた。
想い描いた理想の家
女郎蜘蛛に憧れ、自分も巣作りできる家を探していたが、なかなか思うような家は見つからなかった。もう何度も市内を巡っていたので、さすがにここにはないのかもしれないと思えてきた。
一体私はどんな家がいいのかと、改めて具体的に希望を描いてみることにした。
家の前にニワトリがいて、畑があって、隣の家も離れていて、湧き水が近くにあって…
そんな家どこにあんねん!そもそも雪の降る地域で隣の家と離れているなんてレアすぎるし!と、自分で突っ込みたくなる気持ちをグっと抑え描いてみた。
数日後に友人が「おもしろいとこみつけたよ」と連れてきてくれたのが、今住むこの家だった。
こわいくらい自分が絵に描いた理想の家で驚いた。ここが私の家だと確信してしまった。こんなところにあったなんて!

(撮影:オザキマサキ)
当時、この家には住人がいた。
しかし、この家をよく思っておらず、ずっと住むつもりはないようで、ボロボロでお風呂がないだとか、散々文句を言いながら住んでいた。
実際、家の屋根はボロボロだったけど、とても素敵な家なのに悪く言われていて気の毒に思えた。私なら、楽しく直して明るく暮らすのに…
そう思って、住人が留守の間に、家に気持ちを伝えに来ていた。
「私たち家も地域も大切にします! 屋根も難しそうだけど、周りに家を直した人もいるし教えてもらってどうにかします!
絶対素敵な家にしますので、どうか私たちに住ませてください!」
結婚の誓いのように家に誓った。家の前にある神社にも同様に。
今思うと、自分が留守の間にそんなやつ来てたら相当怖い!(笑)
けど当時は、家に自分たちの存在に気づいてもらいたくて真剣だった。
1年ほど過ぎた頃、ようやく私たちにバトンが回ってきた。
諦めず願い続けた甲斐があった!
ようやくあの家に住める!
お腹の底から嬉しかった。
ついに悲願の巣作りがはじまる!!

(撮影:オザキマサキ)
改修する部分を解体するのに、家をバールで壊したりするのを想像すると、突然乱暴なようで躊躇われた。これからずっと住ませてもらうし、家にも土地の神様にも、まずちゃんと挨拶しておこうと、地鎮祭を行うことにした。
大家さんに相談してお供え物を準備した。
海のもの、山のもの、野菜はタイミングよく自分の畑で初採れのもの。
水、塩、お餅、榊

おもちとおはぎは、大家さんのお母さんの手作り
自分でお供え物を準備するという行為も一人前の大人っぽくグッと来た

この魚体を反らせる方法も今だったらググりそうだけど、当時はそんな感覚はまだなかったようで、独自のやり方で。
今なら地鎮祭のお供え自体もググりそうだ。改めて考えると、最近何にでも正解を求めてしまっている気がする。正解というか誰かが認めた答えを「正解」として安心しているだけというか…。

(撮影:オザキマサキ)

私たちを住人として選んでくれてありがとう!!
(撮影:オザキマサキ)

地鎮祭を終え、ついに巣作り開始
「はじめは怖いけど、まず壊してみたらやり方がわかって先が見えてくる」という、空き家改修の先輩フクイアサト氏の言葉を信じ、まだどんな家にするか詳細は決まっていないけど、とにかく変えたい部分を壊して取り除いてみることにした。
リビングを土間にしたかったので、田舎の家の昔ながらの「田の字型」の和室を半分とることに。

畑の野菜をそのまま持って入れる家にしたかった。
土が床につく=汚れた と言ってしまう現代人ならではの感覚を持つ自分を、どこか悲しく感じていたからだ。
そう感じなくてすむよう、地面とフラットで、外との境界が曖昧な家にしたかった。
犬や猫とも暮らしやすくなるし、野良仕事の合間に長靴を脱ぐのも面倒だったし、訪ねてきた友人が、靴を脱がずそのまま入れるのも気楽でいいなと思えたから。
前に住んでいた古民家の床が腐っていて、床は貼り直したことがあったので、その時のおさらいで、床の解体はスムーズに進んだ。
建具や畳を外して、さらにバールで野地板を剥がす。
大引き、根太(ねだ)、束(つか)は電動の丸ノコでカットしながら解体。

釘はなかなか抜けなかったり、埃まみれだし、運び出す木材もいちいち重いし結構大変だ。

ここにはおくどさんと、囲炉裏があった。
おくどさんは壊れていたけど、囲炉裏は使えたし、最後まで残そうか迷った。

そのくらい何か存在感のあるものだった。今までたくさんのご飯をありがとう。

おくどさんを解体したら、バトンタッチするように、新しいキッチンのイメージが湧いた。
おくどさんのイメージが繋がるようなキッチン。
頭の中のイメージは素敵だけど、一体どうやって作るかは、今はまだ全くわからない。
キッチンどころか、屋根も何もこの先わからないことだらけだ。
わからぬまま進んでいた先に、救世主となる地元の大工、土井工務店の土井さんに出逢った!
土井さんのおかげで、ここから巣作りが急激に本格化していく。

執筆者プロフィール
ワダマキ
ジュエリー作家。大阪生まれ、2009年に滋賀県高島市へ移住。 2013年古民家をセルフリノベーション。2020年より茅葺き屋根のアースバックハウスに着手、未だ制作中。びわこ葦舟プロジェクト、一緒に暮らす羊の毛で作品作り、米作りのほか、朽木地域の魅力を発信する勝手に地域おこしプロジェクト「朽木の風」も開始しました。 http://instagram.com/nishi_no_kaito
お知らせ
●2/10~16
恵文社一乗寺店 ギャラリーアンフェール
グループ展「ある山岳民族の物語」


●2/21(土)
TAKASHIMA BASEで開催される「たかしまサーカス」のトークイベントに参加します



