シンガポール国立大学が新たな修士号プログラム「持続可能なグリーンファイナンスの理学修士」を開始 アジアの主要大学では初の取り組み

シンガポール国立大学(NUS)がこのほど、自然科学系の新しい修士号プログラム「持続可能なグリーンファイナンスの理学修士課程」(MSc SGF)を開始した。

リリースによれば、「金融ソリューションとサービスを通じて環境と持続可能性の課題に立ち向かう新しい人材を育成する」ことを目的としたもので、アジアの主要な大学の中では初めての修士プログラムだという。

 

国際連合のウェブサイトによると、“環境のリスクや欠乏を軽減しながら、人間の福利を向上させ、社会的公正を構築する”経済モデルは、それまでの「グリーンエコノミー(グリーン経済)」と呼ばれる。

環境破壊や労働者の人権搾取、エネルギーの過大消費といった問題をはらむ従来型の経済モデル(ブラウン経済/ブラウンエコノミー)に代わる経済成長の枠組みとされており、2000年代後半以降、世界各国が大規模な投資計画を打ち出すなど成長戦略の柱に位置付けてきた。

国際労働機関(ILO)が2018年に発表した報告書でも、環境にやさしい経済を促進する適切な政策が実施されれば、2030年までに世界全体で2,400万人の新規雇用が創出されることが示されている。

一方で、「環境・経済・社会が共に発展し、持続可能な経済成長を遂げるためには、長期的な視点から、ESG投資等の環境金融を促進していくことが必要」(「環境白書」(2018年))とされる。

特に環境への取り組みと企業価値の向上の両立について投資家らに理解を浸透させるうえでは、金融を通じた取り組みが不可欠とされ、投資における国際的なルールづくりもまだ途上にある。

 

こうした背景から実施されるNUSによる今回の取り組みについて、プログラムのディレクターを務めるチョウ・イナ(Zhang Weina)准教授は、次のようにコメントしている

グリーンファイナンスの専門界の多くは、西側(West:西洋)で訓練を受けてきました。

アジアでは、必要な経済発展とのバランスを取りつつ、環境と持続可能性の課題により組むために、正しい制度的知識を持った独自の、地域に根付いた金融の才能を持った人材が求められています。

NUSが、シンガポールとアジアにおいて、持続可能なグリーンファイナンスに関する本格的な修士プログラム導入の最前線に立てることを楽しみにしています。

開講は2022年8月からで、第1期生としては約35~40名の入学を予定している。学生募集は2月22日からすでに開始されており、4月30日に締め切られる。詳細はプログラムの公式ウェブサイトを参照。

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