遠藤慧 個展「MEASURE: 空間を解剖するー実測スケッチの世界」

主催 国⽴⼤学法⼈東京藝術⼤学
※詳細は主催団体等にお問い合わせください。
  • 日時:2025 年 2 ⽉ 25 ⽇(⽕)〜3 ⽉ 23 ⽇(⽇)11:00~19:00(最終⼊場 18:45)/休場:⽉曜定休(祝⽇の場合は翌⽇に振替)
  • 会場:CREATIVE HUB UENO “es” 東京都台東区上野 7-1-1(上野駅浅草⼝付近)
  • 参加費:無料
  • 詳細・申込:
    https://ueno-es.jp/exhibitions/289.html

内容

展示概要

建築物のみならず、室内の家具や花瓶などの小物、食べ物にいたるまで、空間のリサーチとしてさまざまなものを測量し、「実測スケッチ」を制作する遠藤慧による初の個展。これまで描き溜めてきたスケッチをCREATIVE HUB UENO “es”の空間に合わせて展示します。その場を構成する要素をつぶさに拾い上げ、建築的な視点から空間を捉え直す遠藤の作品をぜひご堪能ください。

アーティストステートメント

実測スケッチは、建築空間を体験し、その設計を身体的に会得するために、古くから建築家たちが試みてきた手法である。巻き尺を使って一つひとつの寸法を確かめることは、建築を理解し、寸法感覚を養うのに有効な方法だった。今どきそんなことをする人は少ないが、十数秒もあればスマホで3Dスキャンや大量の高解像度写真が手に入る現代において、その簡単さゆえに、「その場で空間を実感する」という体験はむしろ希薄になっているように思う。

描こうとすることで初めて、実は何も観ていなかったことに気付く。何を主体に描くか、どの構図で描くか、どの縮尺で描くか──すべてを選び取らなければ、一本の線を引き始めることすら難しい。その難しさこそが、空間にじっくり向き合うために残された、数少ない手段の一つだと考えている。

設計者としては、建築、内装、家具といったレイヤーに分けて、別々の図面で考えてしまいがちである(そうする必要がある)。しかし、空間の体験とは、本来、その場で感じられる総体的なものではないか。さらには、そこで食べた食事や、その場に至るまでの道のりさえもが、空間の感じ方を決定付けている。スケッチを通じて私は、これらすべての要素を横断的に記録し、空間の質を捉えることを試みている。

推薦コメント

遠藤慧さんの取り組む「実測スケッチ」とは単純で奥深い言葉である。建築の領域では「実測」も、「スケッチ」も、ともに基礎的なスキルであるが、その組み合わせは珍しいからである。パフェの断面を描いたり、ベッドルームの俯瞰的視点を描いたりするのは、建築の基本図である断面図、平面図の応用であるが、そこに正確な陰影や色彩が加わることによって、図と絵が結ばれる。その図かつ絵なるもの、あるいはそのどちらでもないものの描き方を通じて空間の理解の仕方を考えようとする点がユニークである。

東京藝術大学美術学部建築科准教授 藤村龍至

プロフィール

遠藤 慧(えんどう けい)

2017年東京藝術⼤学⼤学院美術研究科建築専攻修了。⼀級建築⼠、カラーデザイナー。建築設計事務所RFAを経て、環境⾊彩デザイン事務所クリマ勤務。東京都⽴⼤学⾮常勤講師。デザインのリサーチとして始めた「実測スケッチ」が⼈気を博す。著書に『東京ホテル図鑑 実測⽔彩スケッチ集』(学芸出版社)。講談社の雑誌『with』にて「実測スケッチで嗜む名作建築」、建築メディアBUNGA NETにて「⾼架下建築図鑑」連載中。近刊に『MEASURE 遠藤慧 実測水彩ポストカードブック』(学芸出版社)。

撮影:YUTA ITAGAKI KIENGI

出版物

東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集』(学芸出版社、2023年8月出版)

世界観の際立つホテルに泊まって、測って、描いた実測水彩スケッチ集。間取りから、インテリア、アメニティ、フードまで、素材や色、寸法つきでビジュアライズした図鑑。東京・近郊のミニマルホテルからラグジュアリーホテルまで、ホテルという空間の魅力を解剖する。

MEASURE 遠藤慧 実測水彩ポストカードブック』(学芸出版社、2025年3月出版予定)

これまで様々な事物を実測し、美しい透明水彩のスケッチで描いてきた遠藤慧。その実測対象は、ケーキやパフェから、建物・都市スケールまで多彩。日常生活や旅先で利用するもの、スケール感の異なるものが、実測スケッチという手法で等価に表現されることで、新鮮なものの見方に気づかせてくれる。新作スケッチを含む全24点をポストカードにした特選作品集。