『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』中川寛子さんに聞いた「いま気になる人・コト」

コロナ禍で店舗の時短営業や企業の在宅勤務が増えたことなどから、都市の風景は静かに様変わりしています。もちろん、建築や不動産を取り巻く環境にも小さくない影響が及んでいますが、この機会をとらえたチャレンジングな取り組みも生まれつつあるようです。

今回は、『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』著者で“住まいと街の解説者”の中川寛子さんに、いま気になっている業界の動きについて教えていただきました。


最近、不動産関連で注目している設計事例や業界の取り組みはありますか?


新たに建築するのではなく、車や駐車場、箱を使って住宅地、建物の隙間を埋め、街の機能を拡張するような動きが同時多発的にあちこちで起こり始めており、面白く眺めています。このやり方なら一見隙間がないように見える都市近郊にも低コストで新しい機能を挿入でき、地域を動かせるのではないかと。


なるほど。
たとえばどのような例があるのでしょう。


たとえば「Carstay」はキャンピングカーを住宅街、オフィス街の駐車場に置いて時間貸オフィスとして使う実験を行っており、これがうまくいけば駐車場に新しい空間が生まれるでしょう。

オフィスとしてだけでなく、教室、サロン、ショップ、客間、子どもの勉強部屋、地域の寄合所などと使い方はさまざまに想定でき、安価に街の機能が拡張できます。


キャンピングカーをモバイルな空間として活かそうというサービスなのですね。コロナ禍で逼迫する医療機関の臨時シェルターとしての活用実績もあるとのことで、可能性を感じます。

ほかに注目されている事例はありますか?


建築家・進藤強さんが作ったのは、1階の駐車場を2階以上の入居者が日替わりで運営する店舗にするという建物。
これを住宅街の使われていない個人宅駐車場に応用すれば、住宅街に居住している人たちがわざわざ駅前に出かけなくて済む、と進藤さん。もちろん、飲食店以外でも住宅街に欠けている機能であれば何を入れても面白く、刺激的です。


空き駐車場の活用と言えば、個人宅の駐車スペースをオンラインで貸し借りできる「akippa」が注目されていますが、確かに意欲的な地域の人たちによる、より多様な使いこなしが増えれば、まちの価値も高まりそうです。

あともう一つくらい、ご紹介いただけますか?


アートアンドクラフトさんは、20戸の文化アパートをスケルトンにして長手方向に三分割。壁や屋根はそのままに居住空間となる断熱性能の高い箱を挿入した賃貸住宅を作りました。
箱内部は快適だけれど、それ以外は暑くて寒い。その代わりに空間は広く、高くて開放的。20年前に同じコンセプトで作った物件が選ばれ続けているというから、これもアリなのです。


東大阪市の木造アパート「旧弥生荘」のリノベーションですね。外観には文化住宅の趣が残りつつ、内側では大胆な空間提案がなされていて、面白いです…!

最後に、何か告知があればお願いします。


5月30日に「価格差10倍以上。地形も価格も凸凹の新宿の光と影」と題した街歩きをします。この5年ほど続けている路線価図で街歩きの一環で、路線価と地形、歴史、用途地域や都市計画その他の関係を考えながら、感じながら歩くというもの。今のところ、路線価図を街歩きに利用している例は他にない、はずです。

「ブラタモリ」人気で地形散歩を楽しむ人が増えていますが、そこにさらに“路線価”というレイヤを重ねたまち歩きということですね。都市のありようを読み解く新しい視点が学べそうです。

ありがとうございました!
中川寛子さんの取材・構成による好著『空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる 「がもよんモデル」の秘密』詳細はこちら👇


記事をシェアする

公開日:2021/03/31
学芸出版社では正社員を募集しています
学芸出版社 正社員募集のお知らせ