『福祉と住宅をつなぐ』著者・牧嶋誠吾さんからのメッセージ


“公務員に必要な「四つの力」 一つ目は「住民と対話する力」”

本書は1章から7章まで構成をしていますが、最後の第7章に『自治体職員が変われば地域が変わる』というタイトルをつけさせてもらいました。
その中でこれからの公務員に必要な「四つの力」を書いていますが、一つ目に「住民と対話する力」が求められると思います。
これは住民と同じ目線に立つことができるか、いわゆるまちづくりのパートナーとして住民の人と(同じビジョンを)見ることができるかです。そのためには行政職員が持ってるプライドは捨てた方が良い、うまくいくと思っています。
多様化する社会、それからマニュアルのない仕事がこれから増えてきます。特に、地域づくりをご担当される職員のみなさんは、マニュアルにあまり縛られずに自由に動いていただくと良いかなと。そういった意味で「住民と対話する力」が、これからの自治体には求められると書いています。

“「本質を見抜く力」 学問ができる人が優秀な人材ではない”

二つ目に「物事の本質を見抜く力」。行政という所は、学問ができる優秀な人材が入ってきます。
でも市役所・役場などの行政では、必ずしも学問ができるということ=優秀な人材とは限らないと思っています。
むしろ市民生活を同じ目線で見ることができるか、そしていま担当している仕事がなぜ必要なのか、そしてその仕事が五年から十年先のまちづくりに寄与できるのかを考えられた方が今後にとっていいのかな。
そういった意味で、これからいろんなものを見る、物事の「本質を見抜く力」というのが大切じゃないかなという風に思います。

“「つなぐ力」 住民と地域団体をつなげるネットワーク力が求められている”

それから3番目に「つなぐ力」です。
行政が主導するまちづくりは、とうの昔に終わっていると思っています。現在は住民が主役の時代。だから、自治体職員には住民同士や関係する地域団体、あるいはその組織をつなげる、いわゆるネットワークを作る力が求められると思っています。
その中でつなげるためのコミュニケーション力=「つなぐ力」がこれからの職員に求められているのでないかと思います。
特に縦割り行政とよく言われますが組織のあり方をなくすためには、人事政策を大きく改善するということも必要です。

“「改善する力」 慣例慣習にとらわれず、チャレンジすることが重要”

最後に書いてあるのが、「改善する力」です。
行政の中には、前例や慣例慣習を必死で守ろうとする職員が多いというイメージを持ちました。
特に管理職になればなるほど、身を守る・守りの姿勢に入ってくるという傾向があるのではないかと思います。
そういった環境を見ている若手職員の皆さんは、本当は色々なことをやりたいと思っているけれど、結局役所に入って、やってもやらなくても一緒という気持ちになるかもしれません。ですが、実際はやってもやらなくても一緒ということはなくて、皆さんが想いを持って取り組めば、必ず変わると思います。

“現場にこそ、自治体職員が活躍できる場所がある。”

市民生活という現場では、市役所や自治体職員に助けを求めている人たちがいるとはっきり言えます。
だから現場にこそ、自治体職員が活躍できる場所があって、公務員としてのあり方をはかるものさしがそこ(現場)にあるんじゃないかな。
組織のために、公務員として活動するのではなく、地域のために真剣に前向きに取り組むことが大事だと思います。
この章(第7章)の中で最後に書いていますが、特に役所というところで何をやるのか、何ができるかという話ではなく、必要なのは何がしたいかということだと思います。
特に危機に直面した時こそ、大胆な発想と決断が求められるので、そういったこと(現場で何ができるか・何がしたいか)を踏まえて、勇気を持ってチャレンジすることが大事かなと思います。

“マニュアルにない対応をせざるを得ない状況は今後たくさん出てくる”

新型コロナウイルスのことも本当は書きたかったのですが、実際にこの文章を書き終えたのは、新型コロナウイルスがまだ騒動になる前でした。
現在は新型コロナウイルスの対応・初めての経験をする中で現場は大変なことになっていると思います。
非常時にはマニュアルがありません。予期せぬことが、今後の自治体運営ではたくさん出てくると思います。
大牟田市も昨年7月に初めての浸水被害、大雨、豪雨災害(令和2年7月豪雨)があったのですが、その時もまさにマニュアルにない対応をせざるを得ない状況でした。
やはり前例や慣習ということは重要ではなく、色々な意味で現場の住民の生活を見ながら判断することが必要です。答えは必ず現場にあると思います。
そういった(現場で感じたこと)の中で、政策を作るなど(様々な)チャレンジをされるといいのかなという風に思います。

“断らないというスタンスが重要”

福祉関係では、介護保険の制度も三年おきでどんどん変わっていきます。
障害福祉も、子育ての政策も。色々な面でどんどん変わっていきますので、色々な人たち(住民や関係団体)の声に対して出来ないと断るのではなくて、基本的に断らないというスタンスが重要です。そういうことを踏まえて、いろんなことにチャレンジされたらいいかなと思います。

“住民の方へのメッセージ”

最後に住民の方にもメッセージを送ります。
今後は役所がこれから変わらなきゃいけない時代になってくると思います。
辛抱強く、役所の人達と仲良くなりながら、あまり文句も言わずにきちんと対応していければいいのではないかと思います。

“自分が変われば役所は変わる。だから面白い”

もう一つですね、これから自治体職員・行政に入りたいという学生の皆さんに伝えたいことがあります。
自治体・行政は思っているよりも堅いイメージはなく、役所ってすごく面白いと思います。考え方次第です。
入庁当時に思った「これをやりたい」「あんなことをしたい」という想いを、いつまでも失くさずに、ずっと秘めていてください。
役所は関わっている人が変わると、どんどん変わっていきます。
そして自分の想いがあれば、役所を変えることもできると思います。そんななかで、友達を作ったり、仲間を作ったり。役所という組織のなかだけではなく、外にも目を向けていくことが重要です。
色々な分野の人たちとお友達になって、連携をして、役所人生が自ら(の行動で)楽しくなるような取り組みをされたらいいのかなという想いで、この本を書かせていただきました。
たった25年の役所人生でしたが、色々なことを取り組んできました。だから面白い役所人生です。

是非この本を読んでいただいて、行政職員としての糧にしていただければ幸いに思います。

『福祉と住宅をつなぐ 課題先進都市・大牟田市職員の実践』牧嶋 誠吾 著