がくげいラボ Vol.10|『時間の設計手法に関する研究──「リノベーション」の概念をとおして』を語る(2019/04/05|京都)

主催 学芸出版社
※詳細は主催団体等にお問い合わせください。
背景写真撮影:表 恒匡

がくげいラボ vol.10

『時間の設計手法に関する研究──「リノベーション」の概念をとおして』を語る


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がくげいラボは、編集部の「今これが気になる!」に答えてくれる方々をお呼びし、参加者の皆さんを交えてざっくばらんに議論したい!という企画です。

リノベーション、新築を問わずに作品を発表している建築家・森田一弥さん。その設計を支える建築論を、森田さんの博士論文のキーワードである「時間の設計」を軸に論じていただきます。コメンテーターは、東京R不動産に携わりながら近畿大学で建築・都市再生の教鞭をとる宮部浩幸さんです。

森田一弥さん博士論文概要

“時間の設計手法に関する研究
──「リノベーション」の概念をとおして”

  • 序論
  • リノベーションの定義と方法
  • 形のリノベーション
  • 工法のリノベーション
  • 形式のリノベーション
  • 原型のリノベーション
  • リノベーションの重層化と時間の可視化
  • 結論

イベント概要

  • 日時:2019年4月5日(金)19:00-21:00
    • 発表60分+トーク40分+会場からの質疑20分
  • 定員:40名(事前申込制)
  • 参加費:500円
  • 会場:タイルギャラリー京都(学芸出版社ビル3階)

  • 企画:満田衛資(満田衛資構造計画研究所、京都工芸繊維大学教授)、山崎泰寛(滋賀県立大学准教授)
  • 協力:学芸出版社

スピーカー

森田一弥(もりた かずや)

建築家
1971年愛知県生まれ。1997年、京都大学工学部建築学科修士課程修了。1997~01年京都「しっくい浅原」にて左官職人として金閣寺、妙心寺などの文化財建築物の修復工事にたずさわる。2000年森田一弥建築工房設立、2007~08年ポーラ美術振興財団、2011~12年文化庁の若手芸術家在外研修員としてスペインで活動、現在、森田一弥建築設計事務所代表

ゲスト

宮部 浩幸(みやべ・ひろゆき)

近畿大学准教授、SPEAC
1972年生まれ。1997年東京大学大学院工学系研究科修了。北川原温建築都市研究所、東京大学工学系研究科助手、リスボン工科大学客員研究員を経て、2007年スピークのパートナーとなる。建築作品に「龍宮城アパートメント」「リージア代田テラス」など。共著書に『リノベーションの教科書』『世界の地方創生』。2015年より近畿大学建築学部准教授。博士(工学)、一級建築士。

イベントレポート

建築家・森田一弥さんが学位論文を書き上げられたことを記念して、森田さんの論文“時間の設計手法に関する研究─「リノベーション」の概念をとおして”をレクチャーしていただこうという今回のイベント。告知開始後すぐに満員御礼となり、関心の高さがうかがえました(なんと宮城から駆けつけてくださったかたも…!)。

今回のレクチャーの発端は、実は2015年にさかのぼります。編集者の山崎泰寛さん・構造家の満田衛資さんの学位取得を記念した公開レクチャーを京都工芸繊維大学の岡田栄造さんが企画、建築家の魚谷繁礼さんらが協力してイベントを開催され、がくげいスタッフも参加者として聴講させてもらったのが4年前のこと。普段はなかなかしっかり聞く機会のない博士論文という大仕事をご本人に丁寧に解説していただき、かつ聞き手の方との応答を通してじっくり噛み砕くヒントをもらえるという、新鮮な会でした。そして前回は発表者であった山崎さん・満田さんが「論文を発表する場をもっと開いていこう」と発起人になり、森田さんにバトンが渡ったのが今回のvol.10でした。

森田一弥さん

当日は、聞き手に近畿大学で㈱SPEACの宮部浩幸さんをお迎えし、森田さんのたっぷり1時間超のレクチャーが第一部、宮部さんが論文を解題していく第二部、そして参加者の皆さんを交えてより白熱した議論が展開された第三部という三部構成。

宮部浩幸さん(左)森田一弥さん(右)

森田さんはスペイン、宮部さんはポルトガルでの都市体験がリノベーションを考えるうえでとても大きな原体験になっているという共通点や、設計者/職人という森田さんの思考法への実務者としての宮部さんの鋭い読み解きを口火に、参加者を巻き込んだ白熱議論に。

皆さんのご感想も面白かったので、一部ご紹介。

  • 実務者⇔研究者、設計者⇔職人を横断して森田さんの思考の移り変わりがわかり興味深かった(実務者)
  • 普段このような学術的考察は行わず直感で設計してきたが、自分もそれを少し分解してみたいと思った(実務者)
  • リノベーションへの多角的なアプローチが大変興味深かった(実務者)
  • 普段のレクチャーとは少し異なる、公聴会の緊張感があり新鮮だった(学生)
  • 制作を博士論文に纏め上げることの難しさを感じ、それをやり遂げられたことに勇気をもらった(学生)
  • これからの卒業設計にとても参考になった、自分なりにリノベーションの手立てを考えていこうと思う(学生)
  • 質疑で出てきたリノベーションはむしろコンテクストを変える行為、という指摘が面白かった(実務者)
  • リノベーションの店舗設計業務が増えているなか、良いと感じる店舗設計の観点を考えさせれた(実務者)
  • 個人の作品の話がリノベーションの過程を経て一般に開かれていくのが興味深かった(実務者)
  • この時代に学ぶ立場として「時間とデザインの関わり」という普遍的なテーマにもっと理解を深めたいと思った(学生)

懇親会もさらなる議論の場となりました

リノベーションや時間という森田さんのお話、実務者の方から学生さんまで皆さんがご自身のフィールドに持ち帰っていただけるテーマだったのが興味深いです。終了後の懇親会でもまだまだ議論は冷めやらず、たくさんの視点を持ち寄っての解題があちこちで行われていました。

「がくげいラボ Vol.10|『時間の設計手法に関する研究──「リノベーション」の概念をとおして』を語る」にご参加くださった皆様、ご登壇くださった森田さん、宮部さん、発起人の山崎さん、満田さん、ありがとうございました。森田さんからは「ぜひこの企画を続けていきましょう」とコメントもいただいたので、早くも第3回の論文発表会が楽しみです…!(岩切)

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