トイレからはじめる防災ハンドブック 自宅でも避難所でも困らないための知識

トイレからはじめる防災ハンドブック 自宅でも避難所でも困らないための知識 
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内容紹介

健康と生活を守ろう!家庭・職場に1冊必携

災害とトイレについての基本知識から、家庭や職場ですぐにできる備え、集合住宅や地域で協力したい対応のポイント、避難所での時間を快適に保つ工夫について、トイレ衛生の専門家が解説。家庭や職場で備えたい方から、地域の防災リーダーや行政・企業の防災担当者まで、健康と生活を守るために1冊必携のハンドブックです。


加藤篤 著
著者紹介

体裁四六判・192頁

定価本体2000円+税

発行日2024-02-01

装丁金子英夫(テンテツキ)

ISBN9784761528782

GCODE5681

試し読み目次著者紹介まえがきあとがきレクチャー動画関連イベント関連ニュース

令和6年能登半島地震を受け、被災地の皆さまに少しでもお役に立つことができればとの気持ちから、本書の「Part 5|快適に過ごすために!被災時に取り組みたい避難所のトイレ運営」(15項目・30頁)を、著者のご協力のもと公開いたします。

※内容の無断転載等は禁じます。

クリックしてPDFをダウンロード(約5MB)

Part 1 みんな知っておきたい!災害とトイレの基礎知識

1 発災から3時間以内に38.5%の人がトイレに行く
2 給水と排水の両方が機能しないと水洗トイレは使えない
3 断水が起きると水道の仮復旧までは約1か月間かかる
4 74.7%の避難所がトイレに問題を抱えている
5 仮設トイレが3日以内に行き渡った自治体は34%
6 災害時にはトイレが大小便で満杯になる
7 安心できないトイレは「我慢」を引き起こす
8 トイレの我慢はエコノミークラス症候群による関連死につながる
9 不衛生なトイレは感染症の温床になる
10 口腔ケアと排泄ケアはつながっている
11 便器に溜まっている水は悪臭と虫を防ぐ

Part 2 自宅・職場で今すぐ実践!災害が起きる前の備え

12 トイレ個室内の棚に重いものと硬いものは置かない
13 トイレに備える非常用照明はランタンタイプが効果的
14 後悔しないための携帯トイレの選び方・使い方
15 使用済み携帯トイレはフタつきの入れ物で保管する
16 「人数×回数×日数」で携帯トイレを常備する
17 必要な備えを知るのに便利な「排便日誌」と「排尿日誌」
18 トイレットペーパーの使用量を把握する
19 手洗いでは石けんの種類よりも洗浄時間を意識する
20 手を洗うだけではなく清潔なペーパータオルでしっかり“拭き取る”
21 アルコール消毒は指の間からしたたるくらい必要
22 便器の洗浄水量を把握する
23 下水道タイプ・浄化槽タイプ・くみ取タイプのどれに該当するか知っておく
24 自主的に点検できる建物の箇所を把握しておく
25 信頼できる排水設備の維持管理業者を見分ける

Part 3 こんな時には?戸建・集合住宅で協力したいトイレ対応

26 便器内に溜まっている水の跳ね出しは汚水逆流の兆候
27 災害発生直後は真っ先に携帯トイレを取りつける
28 停電時は散水栓から水を確保する
29 断水時にバケツで水を流す方法
30 洗浄タンクに水を入れるとトラブルの原因になる?
31 道路やマンホールの状態から下水道の状況を調べる
32 排水設備は建物から下水道までの間が破損しやすい
33 トラブルを感知するには汚水マスのチェックが有効
34 集合住宅では上下階で連携してトイレトラブルを回避する
35 建物の給水タイプによって災害時の対応は異なる
36 断水時は「高置水槽」の水を活用する
37 調べておきたい受水槽の非常用給水栓と緊急遮断弁の扱い方
38 排水槽がある場合は貯留容量を確認する
39 浄化槽の自己点検4つのポイント
40 公共マスは下水道の公共管理と個人管理の接点
41 マンションの水洗トイレ対応 ステップ1 緊急点検
42 マンションの水洗トイレ対応 ステップ2 機能点検
43 マンションの水洗トイレ対応 ステップ3 暫定使用
44 マンションの水洗トイレ対応 ステップ4 復旧確認

Part 4 パニックを防ぐために!災害前に知っておきたい避難所のトイレ環境

45 在宅避難者の43.8%が避難所や公園のトイレを利用する
46 トイレの個室は50人に1つ必要
47 避難所にある災害用トイレの使い勝手を把握しておく
48 災害用トイレは使用・性能で選ぶ
49 災害時のトイレ対策は20以上の行政部署にまたがる
50 災害時はトイレ確保・管理計画がなければ対応できない
51 トイレ衛生を確保するには司令塔が必要
52 下水道が被災した場合は使用自粛が必要
53 国際的に提唱されているし尿管理の“最低基準”
54 トイレの運営管理は男女共同で実施する
55 広域的な検討が必要なし尿の受け入れとルート選定
56 し尿発生量を考慮して必要数のめどをつける
57 災害用トイレは時間経過に応じて組み合わせる
58 災害になる前に周知しておきたい携帯トイレの使い方
59 持ち運べる簡易トイレを正しく活用する
60 仮設トイレは国が定める「快適トイレ」を優先して調達
61 仮設トイレにはボックスタイプ・組み立てタイプの2タイプがある
62 仮設トイレは“人目につく”場所に設置する
63 マンホールトイレは“下水道接続”と“便槽貯留”の2タイプ
64 段差がなく衛生的なマンホールトイレのメリット
65 運動会をマンホールトイレの啓発・訓練の機会にする
66 下水道接続タイプのマンホールトイレは3型式ある
67 処理装置が備わった自己処理型トイレを活用する

Part 5 快適に過ごすために!被災時に取り組みたい避難所のトイレ運営

68 声掛けでトイレ我慢を予防する
69 全員参加でトイレの清潔を維持する
70 トイレは手で触れやすい9か所に注意して清掃する
71 服の袖をまくり飛散する汚れの付着を避ける
72 水害時はトイレの近くに大きなごみ箱を置く
73 屋内のトイレ不足は簡易トイレで解消する
74 仮設トイレの容量をかせぐための“棒ならし”と“ペーパー分別”
75 仮設トイレの運用は維持管理のプロに任せる
76 トイレ環境を整えるために欠かせない“意見を聞く”こと
77 車いす使用者が移動しやすい動線を確保する
78 視覚障害者へのトイレ支援では場所と使用方法の伝達に注意
79 聴覚障害者のトイレ支援ではフラッシュライトの設置とビジュアル伝達が大切
80 オストメイトのストーマ用品は連携して調達する
81 トイレ入り口付近の動線分けで犯罪を抑止する
82 子どもが安心できるトイレ環境とおむつ交換場所を確保する

巻末付録

災害時のトイレ対策で参考になる主な資料

加藤 篤(かとう・あつし)

特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事
1972年生まれ。まちづくりのシンクタンクを経て、現職。災害時のトイレ調査や防災トイレワークショップの実施、防災トイレ計画の作成、小学校のトイレ空間改善を展開。「災害時トイレ衛生管理講習会」を開催し、防災トイレアドバイザーの育成に取り組んでいる。
著書『うんちはすごい』(株式会社イースト・プレス)、『もしもトイレがなかったら』(少年写真新聞社)ほか。

はじめに

近年は、大雨や豪雨等で毎年のように甚大な被害が発生しています。

また、首都直下地震、南海トラフ地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など、大規模な災害の発生が危惧されています。

このような災害が起きたとき、真っ先に守るものは命であることは言うまでもありません。では、その次にすべきことは何でしょうか?

これまでの災害を踏まえれば、それはトイレ対応です。発災後の早いタイミングでトイレ問題が起きているからです。しかし、被災地のトイレ問題の映像をテレビで放送することが避けられていることもあり、多くの人はトイレ問題の実情や深刻さを知る機会がほとんどありません。

トイレ問題は感染症や関連死、治安悪化も招きます。また、不衛生な状況下では、医療も食事も生活も成り立ちません。災害時は、水や食料の確保、体調のケア、お金や仕事の工面など、生きていくためにやらなければならないことが山積です。トイレは衛生の要であるとともに、唯一ひとりになれる空間でもあります。だからこそ、トイレを安心できる場にしたいというのが私の考えです。

安心できるトイレ環境を整えるには、多分野の連携が必要です。
例えば、口腔、栄養、排泄、保健、衛生、建築・設備、汚水・し尿処理など、多岐にわたります。これらの分野の専門家が力を合わせることが求められています。

本書は、トイレをきっかけにつながり、トイレをきっかけに防災をはじめる、という思いをこめて執筆しました。

トイレ対策の前提となる基礎知識、災害が起きる前にやるべきこと、発災後の具体的な対応方法や環境づくりなどを、テーマごとに見開きで理解できるように構成しました。関心のあるところからはじめていただければ幸いです。

トイレは命と尊厳に関わります。

災害時でも、安心できるトイレ環境を確保できるように一緒に取り組みましょう。

おわらない

最後まで読んでくださった読者のみなさまに、心から感謝申し上げます。

東日本大震災から数か月後、被災地の仮設診療所でトイレの調査をしているとき、屋外の仮設トイレに高齢の女性が車いすに乗ってやってきました。同行された人に「お手伝いしましょうか?」と尋ねたところ、「ひとりでできることが大切です」と仰ったので、見守ることにしました。

すると、その女性は車いすから下りて四つん這いになって仮設トイレの段差を上っていきました。土足で利用される仮設トイレの床はドロなどで汚れていました。

この女性のように辛い思いをした人がたくさんいたのではないでしょうか。

トイレや排泄は日常会話の話題になりづらく、排泄は他人に見せるものではないので、困りごとを一人で抱えがちです。このような状況を変えるには、小さなことでもよいのでやってみることが大切です。

まずは、身近な人と災害時のトイレについて話してみてはいかがでしょうか?

タブーの扉を一人ひとりが丁寧に開けることで、社会は少しずつ良い方に変わっていくと信じています。

最後に、災害時のトイレに特化した本を執筆する機会を頂けたことに感謝しております。被災された方や支援に携わった方から教えていただいたことを次の備えにつなげるには、行動し続けることが必要です。この頁で終わらせるわけにはいきません。

本書を機に、皆さんの家庭や組織、地域などで、トイレの備えについての話し合いがはじまることを願っています。

NPO法人日本トイレ研究所 代表理事
加藤篤

 

NPO法人日本トイレ研究所 代表理事
加藤篤

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災害時トイレ衛生管理講習会【基礎編】

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編集部より

【特別企画】携帯トイレ1個付き『トイレからはじめる防災ハンドブック』を限定販売いたします

編集部より

学芸出版社は、丸善雄松堂の「電子図書館による被災地支援」に賛同し、能登半島地震被災地の学術・教育機関に電子書籍を無償配信します

編集部より

近刊『トイレからはじめる防災ハンドブック』、『実証・仮設住宅 東日本大震災の現場から』ほか、災害からの復旧・復興に関連する一部の書籍を無料公開しています

営業部より 編集部より

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