歩いて読みとく地域デザイン
普通のまちの見方・活かし方

山納洋 著

内容紹介

マンションと駐車場に囲まれた古民家、途中で細くなる道路、居酒屋が並ぶ商店街…。何気なく通り過ぎてしまう「当たり前の風景」も、「まちのリテラシー」を身につければ、暮らし手と作り手による「まちの必然」をめぐるドラマに見えてくる。「芝居を観るようにまちを観る」達人が贈る、地域づくりのためのまち歩き入門。

体 裁 A5・200頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2707-5
発行日 2019/06/10
装 丁 中川未子(よろずでざいん)


目次著者紹介はじめに正誤情報

はじめに

1| 「まちのリテラシー」を高める

1│まち観察企画「Walkin’About」
2│芝居を観るように、まちを観る
3│作り手の視点、受け手の視点

2|農業から読みとく

1│残された旧家 「昔からそこにあるもの」からわかること
2│カーブした道 旧集落の名残は人にやさしい
3│まっすぐな道 意図があるからまっすぐになる
4│中世の文脈 自治の歴史を示すモノ
5│ため池の存在 豊かな水環境を現代にどう活かすか
6│用水路の存在 水利にまつわるドラマが見えてくる
7│製造業化した農業 プロデューサーが地域を変えた
8│最適化された農地 生産性を上げるための工夫
9│残されている農地 2022年問題を乗り切れるか
コラム 高砂で畑を耕すおじいさんに聞いた話

3|製造・物流業から読みとく

1│川に港があった時代 水運の時代を見直す
2│水力を利用していた産業 電気普及以前の産業立地
3│産業革命と港湾立地 臨海部の土地利用はどう変わったか
4│かつての港湾の気配 コンテナ化で人々の姿が消えた
5│役割を終えた港 コンビニからもまちは読み解ける
6│鉄道貨物が盛んだった時代 駅前に大きな土地が空いた理由
7│駅前だった場所 繁華街は交通モードとともに
8│最先端の製造物流のかたち 倉庫と工場はジャンクション前に立地する
9│工場閉鎖と跡地活用 広大な跡地に何を作ったか
コラム 和田岬の駄菓子屋で知った地域産業の状況

4|サービス業から読みとく

1│街道筋に残る昔からの商売 交通から地域の文脈を見る
2│飲食街化する商店街 フルセットから飲食・サービス業へ
3│ショッピングセンターの変遷 需要と法律が変える商業
4│必然的にそこにあるお店 商いからわかるまちの姿
5│同郷コミュニティのお店 移民の歴史とまちの成り立ちを知る
6│高齢化に対応する商売 コンビニは公共施設化している
7│外国人観光客に対応する商売 インバウンドで劇的に変わる市場と商店街
8│宿泊客に対応するハコモノ どこもかしこも宿屋になる時代
9│賃料負担力がつくる風景 チェーン店ばかりの風景は変わるか
10│キャッチされる街 まちを荒廃からどう守るか
コラム 西宮卸売市場の喫茶店で聞いた昔の商売

5|住まいから読みとく

1│鉄道事業者が開発した郊外住宅地 小林一三モデルが生んだ風景
2│戦後に建てられた木賃住宅 住宅難と人口増が生んだ密集住宅地
3│ニュータウンはどこに開発されたか オールドニュータウン再生が新たな課題
4│都心に林立するタワーマンション 高層化はどう始まったのか
5│駅前居住という選択 リセールバリューが新たな鍵に
コラム 高槻・日吉台の喫茶店で聞いた話

6|駅前から読みとく

1│ターミナル駅の風格 かつては街外れに作られた駅
2│放射状街路がある駅前 近代的な住宅地を志向した地域
3│駅前広場のない駅前 開発を志向しなかった地域
4│行き止まり駅の風景 なぜそこに線路を引いたのか
5│駅前広場が果たしている機能 駅まで・駅からの交通手段の多様化
6│ペデストリアンデッキの風景 日本独特の歩車分離の解決策だった
7│駅と自転車 庶民の足を支えるビジネス
8│変わる駅前空間 人が集まれる場所をどう作るか
コラム ボストン郊外の駅前風景

7|都市計画から読みとく

1│かつて計画された区画 時代を超えて伝えられる意図
2│城跡はどうなったのか 廃藩置県は公共空間を大きく変えている
3│住宅地化した農地 戦前の連棟長屋はどう生まれたか
4│戦争が拡げた道 建物疎開と空襲の後にできた道
5│いつまでも通らない道路 道を通すのはなかなか大変
6│スプロールと土地区画整理 計画が先か、オーガニックに生まれたか
7│「ミニ開発」というもの 制度のスキマで作られた住宅地
8│旗竿地のアイロニー 建て替えられなくなった家
9│2項道路とセットバック クルマ社会化以前からの道の広げ方
10│既存不適格の風景 政策はどうまちの風景に影響するか
11│ペンシルビルが生まれた理由 建ぺい率と容積率で生まれる風景
コラム 三国の居酒屋で聞いた話

8災害から読みとく

1│洪水に備えていた暮らし かさ上げから神頼みまで
2│水害が変えた風景 まちと水辺を分離する解決策
3│土砂災害を想定した暮らし まちを支える縁の下の力持ち
4│火災を想定した暮らし 消防車がなかった時代の備え
5│大震災の痕跡 新しいことから推察される震災の被害
6│災害と再開発 計画的復興だけでは解決できないこと

9|愛着から読みとく

1│保存か、開発か 「腰巻ビル」という現実解
2│ヒューマンレベルの投資と挑戦 個人レベルの再生が生み出す活気と魅力
3│復興のための超法規的措置 再建後に残せた路地
4│人が心地よく感じる環境 心地よさを与える「パターン」に注目する
5│人がつながる空間をつくる ソフトなまちづくりが生み出す風景
コラム 京都・七条七本松の喫茶店のはなし

おわりに

山納 洋(やまのう ひろし)

1993年大阪ガス入社。神戸アートビレッジセンター、扇町ミュージアムスクエア、メビック扇町、大阪21世紀協会での企画・プロデュース業務を歴任。2010年より大阪ガス近畿圏部において地域活性化、社会貢献事業に関わる。現在同社近畿圏部都市魅力研究室室長。一方でカフェ空間のシェア活動「common cafe」「六甲山カフェ」、トークサロン企画「Talkin’About」、まち観察企画「Walkin’About」などをプロデュースしている。
著書:『common cafe』(西日本出版社、2007年)、『カフェという場のつくり方』(学芸出版社、2012年)、『つながるカフェ』(学芸出版社、2016年)、『地域プロデュース、はじめの一歩』(河出書房新社、2018年)

僕は2014年に「Walkin’ About」というまちあるき企画を始めました。

これは、参加者の方々にある街を90分間自由に歩いていただき、その後に再集合してそれぞれが得た見聞をシェアするというものです。

そもそもなぜ、こんなスタイルのまちあるきを始めたのか、ですが…

僕自身は、ガイドの方の説明を受けながら決められたコースを歩く一般的なスタイルのまちあるきが好きではありません。なぜかというと、情報を教わりながら歩くと、まちに対する感度が落ちてしまうからです。できれば何も教わらずに知らない街に繰り出し、自分なりの方法でまちと出会いたいのです。そんな風に考えるのは、僕だけではないはず。“案内しないまちあるき”というWalkin’ Aboutのスタイルは、そういう発想から生まれました。

僕らが訪ねてきたまちの多くは、各駅停車しか止まらず、特別なものは何もないと思われている場所です。そんな場所でも、行くと必ず何らかの発見があります。それは美味しそうなパン屋さんやいい感じの呑み屋、歴史的価値のありそうな建物や不思議な構造物だったりしますが、そのまちでの暮らしに想像力を働かせつつ観察を深めていくと、「このまちにはどんな歴史があったか」「今はどんな状況なのか」「将来このまちはどうなりそうか」といったことが見えてきます。

Walkin’ Aboutでは、これまでに関西の都心近郊を60ヶ所ほど巡ってきました。そうして参加者の気づきを共有し続けているうちに、僕らの“まちのリテラシー”はどんどん上がっていきました。

リテラシーとは「読み書き能力」という意味ですが、ここでは「まちのここがこうなっているのはこういう理由からである」「ここを見ればまちの歴史や現状がわかる」といった、まちを深く知るために有効な基礎知識という意味で使っています。

NHKの「ブラタモリ」を観ていると、ある土地の歴史的痕跡について、それぞれの土地の歴史に詳しい専門家の方々が問題を出し、博識なタモリさんが「お見事!」に正解を出すというパターンになっていますが、このことは、まちのリテラシーを高めていけば、その土地固有の歴史を知らなくても、目の前にある「?」の理由が推察できるようになる、ということを示しているように思います。

これからご紹介しようとしているのは、この“まちのリテラシー”です。

こうしたリテラシーを得れば、まちあるきは作り手の手口を読みとく探偵のような知的な営みに変わります。おそらくどんなまちに行っても、面白い切り口を見つけることができるでしょう。そしてさらに、今度はみずからが作り手になる、つまり新たにまちを創っていくための糸口を見つけることもできるはずです。

そんなゴールを目指してこの本をお届けします。最後までよろしくお付き合いください。

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