カフェという場のつくり方
自分らしい起業のススメ

山納 洋 著

内容紹介

人と人が出会う場を実現できる、自分らしい生き方の選択肢として人気の「カフェ経営」。しかし、そこには憧れだけでは続かない厳しい現実が…。「それでもカフェがやりたい!」アナタに、人がつながる場づくりの達人が、自らの経験も交えて熱くクールに徹底指南。これからのカフェのカタチがわかる、異色の「起業のススメ」。

体 裁 四六・184頁・定価 本体1600円+税
ISBN 978-4-7615-1308-5
発行日 2012/08/01
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介はじめにレクチャー動画
はじめに

1 カフェは「ビジネス」から「生き方」の時代へ

1 一人の男の「ロマン」から始まった日本の喫茶店

2 ビジネスとしてのカフェの時代

喫茶店がビジネスとして成立し始めた時代
喫茶店が儲かった時代
70年代の喫茶店開業ブーム
チェーン化と個人経営喫茶店の凋落
カフェブームの到来と終焉

3 再び「生き方」としてのカフェの時代へ

コラム:パリのカフェ

2 「やりたいこと」だけでは続かない

1 なぜ、すぐにお店をやめてしまうのか?

オープンして初めて気づくこと
忙しすぎる!
お客さんから受けるストレス
仲間との共同経営の難しさ
物件・近隣をめぐる想定外

2 「跳ぶ」前の準備から始めよう

コラム:無理なく開業するための方法

3 「お客さんが望むこと」は見えてる? 63

1 お客さんが入りやすいお店、入りにくいお店

小さなカフェには入りにくい
近所のカフェも入りにくい
外から見られることを嫌がるお客さんも
カフェは男性客には入りづらい

2 見落としがちなカフェの「立地」

ハードルの高いオフィス街
「学生街の喫茶店」は過去のもの
郊外のカフェは車対応がポイント

3 「やりたいこと」と「お客さんが望むこと」のバランス

進歩的な私と保守的なお客さん
お客さんの望みに応えるだけでは続かない
店主満足度の追求
コラム:地域のニーズに合ったお店

4 「閉じつつ開く」お客さんとのコミュニケーション 97

1 常連さんを中心に閉じていくお店

「一見さんがもう10年来ていない」お店
新しいお客さんに来てもらわなくてもいいお店
一見客をお断りする哲学
常連客商売の落とし穴

2 メディアの変化で増える「街の文脈から自由なお店」

雑誌でお店を「消費」する人たち
ネットの口コミによるカフェのブランド化

3 一見客と常連客のバランス

新しいお客さんが店を育てる
お店が閉じてしまわないために
コラム:伝説の喫茶店・風月堂

5 これからのカフェのカタチ 自分軸・他人軸を超えた「場」をつくる 127

1 カフェが担う公共性

どこかもの足りない「コミュニティカフェ」
カフェ的な会話が生み出すイノベーション
会話的サロンへの挑戦~Talkin’About

2 文化的な場づくりの可能性

「場づくり」というモチベーション
文化施設としてのカフェ

3 カフェを続けるしくみづくり

シェアされるカフェ
店主が日替わりでお店に立つ「コモンカフェ」というしくみ
開業支援の場としての「半年替わり店主カフェ」~クレオ・チャレンジカフェ
④場を継承するしくみづくり
歴史的な建物を地域の人々の力で継承する~木村邸
老舗の茶屋を継承する「週末替わり店主」~六甲山カフェ
カフェのコミュニティを継承する「譲り店」
コラム:一軒のカフェから生まれる街

おわりに 人生のステップとしてのカフェ―場からの卒業、場への回帰―
参考文献

山納 洋(やまのう ひろし)

1993年大阪ガス(株)入社。神戸アートビレッジセンター、扇町ミュージアムスクエア、メビック扇町、(公財)大阪21世紀協会での企画・プロデュース業務を歴任。2010年より大阪ガス(株)近畿圏部において地域活性化、社会貢献事業に関わる。一方でカフェ空間のシェア活動「common cafe」、「六甲山カフェ」、トークサロン企画「御堂筋Talkin’About」などをプロデュースしている。著書に『common cafe―人と人とが出会う場のつくりかた―』(西日本出版社、2007年)がある。

今から10年ほど前、2000年前後に、日本ではカフェブームが起こりました。

この頃、大都市の都心部を中心に、これまでの喫茶店とは違った、センスや居心地の良いカフェが数多く登場しました。雑誌ではカフェ特集が組まれ、センスの良いカフェを紹介する本が数多く出版され、料理や製菓の専門学校にはカフェコースが新設されました。そしてその後、カフェは街中から郊外へと出店エリアを広げ、その数をどんどん増やしていきました。

しかし数年を経ずして、ブームは下火になっていきました。店舗数が増え、競争が激化したこと、ブーム当初にあった目新しさが薄れてきたことがその理由だと思われますが、その後のコーヒー豆などの原料価格の高騰、年々進行するデフレ化傾向、2008年の世界同時不況、さらに2011年に起こった東日本大震災などの影響により、カフェ経営をめぐる状況は、年々厳しさを増してきています。周りを見ていても、閉店してしまうお店は数知れずあります。

そんな厳しい状況の中ですが、カフェをやりたいという人は、今でもいっぱいいます。そして多くの人が、ビジネスというよりはむしろ、自分らしい生き方の選択として、カフェを志向しています。彼らが模索しているのは、カフェを開業して成功店になるための方法論というよりは、むしろ自分の美意識や価値観にぴったりと沿ったカフェを、いくらかのお客さんに支えられながら、無理なく続けていくための方法論です。

僕は2001年に、大阪・キタの堂山町という繁華街で、「Common Bar SINGLES」という日替わりマスター制のバーを始めました。ここはもともと僕が常連として通っていた「Bar SINGLES」が閉店した後、その場所を維持するために、40人のマスターを集めて立ち上げたものです。2004年には、大阪・キタの中崎町という町の一角で、「common cafe(コモンカフェ)」を始めました。ここでは、カフェとしての営業をベースに置きつつ、演劇公演、音楽ライブ、映像上映会、展覧会、トークイベント、朗読会、セミナー、ワークショップといった、多彩な文化的イベントを日々開催しています。

かつて僕は、OMS(扇町ミュージアムスクエア)という、小劇場、ミニシアター、雑貨店、カフェレストラン、ギャラリーを備えた複合文化施設の仕事をしていました。エッジの効いた文化情報発信を行う場でしたが、2003年に施設の老朽化のために閉館しました。その閉館後に、個人レベルで作れるOMSを、と立ち上げたのが、「common cafe」です。この空間では、さまざまな表現活動に関心を持つ日替わり店主が、日々自分たちのやりたいことを試しています。

また僕は、コモンカフェから派生して生まれた「六甲山カフェ」にも関わっています。これは、六甲山の麓にある茶屋の一角でカフェを営業するというもので、イベントや日曜カフェとして始まり、今では数組の店主が週末ごとに入れ替わるシステムで回っています。

さらに、僕は四天王寺前夕陽丘にある公共施設「クレオ大阪中央」の中に2007年にオープンした「クレオ・チャレンジカフェ」に、立ち上げの頃からアドバイザーとして関わっています。このカフェでは、店主が6ヶ月の期間限定で入居し、カフェ運営の実務経験を積み、将来のカフェ開業に備えています。

出会いの場所として、表現の実験の場として、また新しいアイデアやプロジェクトを生み出す場として、カフェという空間は、大いなる可能性を持っています。その魅力に惹かれて、僕はもう10年以上もカフェやバーの運営に関わってきました。特に、一軒のお店を複数の人間でシェアするという実験を繰り返してきました。このシステムには、店主たちにとっては、今の仕事を続けながら自分のカフェや表現空間が持てる、また店を運営するスキルを身につけ、ネットワークを広げてから実際に開業につなげることもできるなど、メリットはいろいろあります。

しかしながら、日替わり店主というシクミでは、“いつ行ってもあの店主がいる”というお客さんの期待に応えることはできません。そして店主が日々入れ替わる中、一定のクオリティを担保し、つねにお客さんに満足いただくことができなければ、街場での存在意義を失ってしまいます。

本当の意味での「コモンカフェ=みんなで共有するカフェ」とは、どういう形であるべきなのか。僕自身はお店を経営するかたわら、いろんな店に足を運びながら、自問し続けてきました。
その過程で見えてきたことを、今回一冊の本にまとめてみました。

この本を通じて、これからの時代のカフェの現実的な可能性や、カフェをやりたい人たちの夢が現実に押し潰されてしまわないための方法論をお伝えできればと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

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