地形散歩のすすめ


新之介 著

内容紹介

ブラタモリ案内人も務めた達人による入門書

高低差、坂道、断層、暗渠、スリバチ、アースダイバー…。凸凹視点でまちを歩けば、自然と人間の織り成す壮大なドラマが見えてくる!ブラタモリ案内人も務めた地形散歩の達人は、どんなことを考え、何に注目しながら地形を楽しんでいるのか?どこのまちへ行ってもすぐに使える地形散歩の一般教養を詰め込んだ、初の入門書。

体 裁 A5・192頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2796-9
発行日 2021-11-01
装 丁 中川未子(紙とえんぴつ舎)


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はじめに

第1章 「地形散歩」は町の魅力を読みとく学び場

「地形散歩」のすゝめ
地形の変化から町の景観や歴史を楽しむ
タモリさんから学ぶ「地形散歩」の楽しみ方
目の前の石ころに日本列島誕生のドラマを観る
人と自然との関わりが町をつくっている

第2章「まちなか」で楽しむ地形散歩

上町台地と熱田台地―高低差と歴史の古層を楽しむ
武蔵野台地―世界に誇れる稀有な地形と景観
スリバチ地形―谷を愛でる歩き方
坂道―坂が素敵な景観を創り出す
アースダイバー―古代の海岸線を妄想する
暗渠―町に潜む迷路・ラビリンスの世界

第3章「山地」がつくる地形

山―山はどうしてできたのか
V字谷・先行谷―大地のドラマはここからはじまる
滝―滝は後退し続けるものである
扇状地―水の出口を探そう
伏流水―伏見の女酒と灘の男酒
地溝盆地―断層と断層の間
断層崖―崖を見たら断層を疑え
バッドランド―バッドだが景観はグッド
断層コラム 中央構造線に集まるパワースポットの謎

第4章「河川」がつくる地形

ゼロメートル地帯―ゼロメートルは非安全地帯
三角州―島が生まれていく様子が国生み神話につながる
中洲―鳴かぬなら中洲で待とうホトトギス
河岸段丘―河川によって段々できてゆく段々
天井川―屋根より高い天井川
自然堤防と後背湿地―微高地こそ地形歩きの醍醐味
遊水池―失われた天然の遊水地

第5章「海岸」がつくる地形

砂州―砂の供給先と沿岸流を妄想してみる
海食崖と波食棚―崖を見たら縄文海進も疑え
海成段丘―海岸線の平坦面を疑え
砂浜海岸―町の安心と引き換えになくなっていくもの

第6章「火山」由来の地形

花崗岩―自然が作り出した不思議な岩の形
安山岩・サヌカイト―火山噴火の恵み
凝灰岩―古代人の創作意欲をくすぐる石材
玄武岩・柱状節理―自然の摂理に沿ったハニカム構造の神秘
石ころコラム 無限に跳ねる水切りの石を探せ

第7章「地形」と人の暮らし

古道・旧道・街道(上)―くねくね道は自然の曲線
古道コラム―古道の中の古道
古道・旧道・街道(下)―断層が道を導く
古墳―妄想力が古墳の魅力を高める
水車―川は永遠に続く動力源
「地名」は土地の記憶―土地への愛着が地名を残す原動力となる
水と暮らし―水に流して心も浄化
石切場跡(大坂城)―時間が止まった森
石切場跡(古墳)―手作業に限界はないのかもしれない
温泉―地獄と極楽は隣り合わせ
環濠集落―生きるために地面を掘る
焼き物―奇跡の焼き色スカーレット

おわりに

新之介(しんのすけ)

本名は新開優介、1965年大阪市生まれ。「大阪高低差学会」代表、ブログ「十三のいま昔を歩こう」管理人。著書に『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩』『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩 広域編』『凹凸を楽しむ 阪神・淡路島「高低差」地形散歩』(以上、洋泉社)、『ぶらり大阪「高低差」地形さんぽ』(140B)、『京阪神凸凹地図』『京阪神スリバチの達人』(以上、昭文社)など。NHK「ブラタモリ」の「大阪」「大坂城真田丸スペシャル」の案内人を務める。

はじめに

NHKの「ブラタモリ」は、観光ガイドブックに書かれている名所旧跡を紹介するだけでなく、地形や地質に着目し町の成り立ちを読み解いていく手法で、その土地の魅力アップに貢献しているように感じます。私自身も「ブラタモリ」に感銘を受け、学生時代に学んだ地理・地学を再び学びはじめた一人です。

学生時代に学んだはずの断片的だった地理・地学の知識を整理し、どこへ出かけても通用する「見方」「心得」が獲得できれば地形散歩はもっと楽しくなるのではないか。そんな学芸出版社の編集者のひらめきから本書はスタートしました。編集者の方から声をかけていただき最初にお会いしたとき、「そんな本があればいいけど作るのは難しい」と引き受けるのを躊躇していたのを覚えています。しかし話をしていくうちに「タモリさんは、なぜ石を見てあんなに喜んでいるのだろう?」という素朴な疑問にたどり着きました。私自身「ブラタモリ」の案内人をさせていただいたことがありますが、「ブラタモリ」ファンの一人として番組を見ている中で、ごく稀にタモリさんが石や岩を見て本当に喜んでいると思えるシーンを何度が観たことがあります。それが実は謎でもありました。「なぜあそこまで本気で楽しめるのだろう?」そして、次第に石や岩を見て楽しめるタモリさんが心底うらやましく思えるようになっていったのです。私もタモリさんのように石や岩を見ただけで喜ぶことができるようになりたい。そこにこの本のヒントがあるのではないか。そう考えお受けすることにしました。

私の勝手な想像ですが、タモリさんや学者の先生方は地形や岩石を見て「なぜこんな形になったのか?」「なぜここに存在するのか?」「どこでどのように生成されたのか?」などを一瞬にして頭の中で連想ゲームのようなものをしているのではないでしょうか。その答えの連想ゲームを楽しんでいるように感じるのです。実はこれらを解くためのヒントは学生時代に勉強しているはずなのです。
私が地形に関心を持ち出したのは中沢新一氏の『アースダイバー』を読んでからです。それまでは近畿圏を中心に町歩きを楽しみながらブログにアップしていました。ところが『アースダイバー』をきっかけに縄文時代の汀線をたどりながら町を歩くようになったのです。いきなり興奮しました。こんな面白い世界があったのかと。それ以来地形の凸凹に魅了されていきました。

私がはじめて中沢新一氏とお会いしたのはそれから3年後くらいです。『大阪アースダイバー』の出版記念イベントで、アースダイビングをしているブロガーがいると編集者の方が知りゲストで呼んでいただいたのです。そしてイベントの打ち上げの席で中沢氏の前に座らせていただき楽しいひとときを過ごしました。その時に私の人生を変える一言を言われたのです。「新ちゃん、大阪の地形を盛り上げてよ」と。その激励の言葉に奮起して立ち上げたのが「大阪高低差学会」です。SNSを通して共鳴してくださる方がたくさん集まり「東京スリバチ学会」の皆川典久氏とも出会いました。さらに皆川氏と交流するうちに「新之介さん、本を書いてみない?」というさりげない言葉がきっかけとなり『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩』(洋泉社)を出版することになりました。出版の2ヶ月後にはNHK「ブラタモリ」のディレクターから連絡があり、数ヶ月後にタモリさんを案内するという幸運に恵まれたのです。書店でなにげなく『アースダイバー』のタイトルにひかれて手に取ったことがすべてのはじまりでした。人生というのは不思議なものです。

本書は「まちなか」「山地」「河川」「海岸」「火山」「地形と人の暮らし」と6つのカテゴリに分けて主だった地形や地質を解説しながら、地形散歩に役立つ知識を身につけてもらうことを目的としています。こういう地形はこう楽しんでいますというような実践形式で書いたつもりですが、楽しみ方に決まりはありませんので、あくまでも一例としてご理解ください。各項目の地形や地質の紹介は日本列島の中のほんの一部ですが、地形散歩の入門書と考えると少しマニアックな情報が含まれているかもしれません。その場合はお許しください。

使えて楽しく地形散歩の世界に入っていただけるような本を目指していますが、各項目の冒頭にはそれぞれの地形の解説を入れてから具体的な事例紹介をしていくスタイルにしています。地形解説の多くは『地形学辞典』(二宮書店)から引用しましたが、紙面の都合上、解説の一部のみの掲載となっています。あらかじめご了承ください。

地形散歩を楽しんでいて気づいたことがあります。山は崩れていくもので、川は氾濫を繰り返していくものだということです。それらを何百万年も繰り返していまの地形ができています。私たちはそんな自然の摂理の中で暮らしているのだということを忘れてはいけないと思います。

さあ、地形や地質の「なぜ?」の謎を解き明かしに地形散歩の世界に出かけていきましょう。

おわりに ―書を捨て、凸凹を歩こう―

この本のきっかけは、『歩いて読みとく地域デザイン』の著者、山納洋氏の出版記念イベントにゲストで呼んでいただいたところから始まります。そこで本書編集担当の岩崎氏と初めてお会いしました。実は山納氏とお会いするのはその時が2回目で、初めての時がなんと中沢新一氏の『大阪アースダイバー』出版記念イベントの二次会の席なのです。私の人生を変える節目の日にお会いしているということに、とても不思議なご縁を感じます。そして、山納氏と岩崎氏が話をしている時にこの本の企画が生まれたそうです。

学生時代に地理や地学を学んだはずなのに、当時はまったく楽しくなかったことを覚えています。おそらく私の中ではテスト前に暗記して頭に詰め込むだけの科目だったのかもしれません。これまでの人生で地形や地質のリテラシーがあれば、旅行の時などもっと楽しめたことでしょう。地形散歩を続けていくと、“地形のリテラシー”が少しづつ高まっていきます。さらに、町のなりたちを読み解けるようにもなるかもしれません。それは地元の魅力の再発見にもつながっていきますし、どんな土地に行っても楽しみ方が増えるということでもあるのです。だって、そこに落ちている石ころを見るだけで妄想が広がり楽しめるのですから。

この本の執筆にあたってそのきっかけを作ってくださった山納洋氏と学芸出版社の編集者・岩崎健一郎氏にまず感謝を申し上げます。また時間がない中で紙面をきれいにまとめてくださったフルハウスの皆様、素敵な装丁に仕上げてくださった中川未子氏にも感謝をお伝えさせていただきます。

もし本書を読んで地形が気になり出したら、冒険気分で散歩に出かけられることをお勧めします。きっと今まで見過ごしてきた小さな凸凹が気になるはずです。それはもしかしたら何かの痕跡かもしれません。書を捨て、凸凹を歩きましょう。何かがきっと始まります。

タモリさんから学ぶ「地形散歩」の楽しみ方

NHKの「ブラタモリ」は、タモリさんが全国各地をブラブラ歩きながら、地形や地質、町に残された歴史の痕跡などから、その町の歴史や文化のなりたちをひも解いていく番組である。「ブラタモリ」をよく観ておられる方は、番組内でタモリさんが岩や地形を見つけて興奮しながら喜んでいるシーンを何度も見たことがあるのではないだろうか。

たとえば、埼玉県の「長瀞(ながとろ)」の回では、番組で取り上げる予定がなかった紅簾石片岩(こうれんせきへんがん)を見つけて「あれ見なきゃダメだよ!」と急遽コースを変更し、「一度はこれ見てみたいと思っていましたよ」とたいへん興奮していた。長瀞の川を舟下りする時も「片岩だらけ♪」と、目を輝かせてまわりの風景を眺めていたのが印象的だった。


「長瀞とつながる淡路島沼島の三波川結晶片岩」
薄くはがれやすい結晶片岩の地質が遠く離れた四国や和歌山県などでもみられる。


「中央構造線と三波川変成帯」
結晶片岩で構成される三波川変成帯は、中央構造線の外帯側に関東から九州まで同じ地質帯が続いている。

群馬県の「沼田」を訪れた回では、「河岸段丘」に大興奮していた。オープニングでタモリさん自身が沼田の河岸段丘について熱く語り出したのだが、高校の地学の教科書に河岸段丘の代表的な場所として沼田が紹介されており、その凄さを見たいがために東京に学生で出てきて最初に沼田を訪れたのだそうだ。エンディングでは、河岸段丘が見渡せる場所で「地形好きの
原点はこれなんです」と懐かしそうに語り、「この沼田の河岸段丘から地形好きがはじまったんですよ。ここは思い出の土地です。はじめて地形に興味を持って、駅に降り立ってあの坂を見たのは50年前、忘れもしません。あの坂。あの坂は昔のままです」としんみり語っていた。


「沼田の河岸段丘」
一帯は、15万年前は湖だった土地である。堆積した土砂は平らな土地を形成し川の流れが地面を削り、土地が隆起すると下刻作用で川は下に下がっていき数万年かけて何段もの段丘が生まれたのだ。

「長瀞」と「沼田」の回は、タモリさんの地形好きや地質好きが垣間見えて印象的だったが、ふと「なぜあそこまで楽しそうに熱く語れるのだろうか」という疑問が湧いてきた。もちろんタモリさんにしかその理由はわからないのだが、タモリさんの頭の中では、長瀞の結晶片岩や沼田の河岸段丘が長い年月をかけて、自然がつくりあげていく過程を想像してそのスケールの大きさに感動していたのかもしれないと推察する。その域に到達するには豊富な知識と想像力、あるいは妄想力が必要なのかもしれないが、岩や地形を見て心底楽しんでおられるタモリさんが羨ましく思えた。

「ブラタモリ」で共感するのは、案内人の方々が投げかける疑問に対してタモリさんがご自身でその答えを考え導き出すところにもある。地形散歩を楽しむヒントがそこにあるわけで、「なぜ、そうなったのか」「かつてはどのような場所だったのか」などを自分で考え、自分なりの答えが導き出せるようになればもっと楽しくなるはずである。

地形散歩の醍醐味は、気づきや発見、疑問などの答えを調べて自分の知識としていくところにあると思う。それをタモリさんや「ブラタモリ」で教えてもらったように思うのだ。いつか私もタモリさんのように、岩や地形を見ただけで心底喜べるような「タモリ脳」になりたいものである。

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メディア掲載情報
2022年1月29日

『地形散歩のすすめ』著者・新之介さんへの取材記事が神戸新聞(2022年1月27日)に掲載されました

2021年12月14日

『地形散歩のすすめ』著者・新之介さんによるYoutubeチャンネル「新之介の地形散歩」がスタート!

2021年12月7日

『地形散歩のすすめ 凸凹からまちを読みとく方法』(新之介 著)が朝日新聞(2021年12月4日付)で紹介されました

2021年12月2日

『地形散歩のすすめ 凸凹からまちを読みとく方法』(新之介 著)が観光経済新聞で紹介されています

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